プレパックカラムBiotage® Reningと
Sfärの併用で精製コストを削減

-Sfärカラムと遜色ない分離!高コスパカラムReningが低分子創薬の研究に貢献-

湧永製薬株式会社
湧永製薬株式会社のラボでの集合写真"

湧永製薬株式会社の創薬研究所では、創薬の精製過程でバイオタージのReningとSfärカラムを使用されています。その中で特にReningカラムの運用方法、使用感、導入後のメリットについて、同研究所の室長の加藤信樹さん、研究員の加藤大輝さん、上田祥平さんにお話をうかがいました。

― 御社の取り組みについて教えていただけますでしょうか。

加藤室長:湧永製薬株式会社は、1955年の創業以来、「国民の健康に奉仕する」という企業理念のもと「予防」「品質」「カウンセリング」を基本方針に、専門家のカウンセリングのもと製品をお届けすることで皆様の健康づくりをサポートし続けております。また、「医薬品に国境はない」という考えのもと海外展開を積極的に行い、1972年には米国にワクナガ・オブ・アメリカを設立、さらに2017年にはヨーロッパ事業拡大のためドイツにワクナガ・オブ・ヨーロッパを設立いたしました。主力ブランドである「レオピン」シリーズは日本のみならず、海外では「Kyolic」(キョーリック)ブランドとして世界50か国以上での販売実績となっており、2022年にはドイツにおいて熟成ニンニク抽出液が「動脈硬化予防」を効能とし医薬品承認を取得いたしました。

インタビューの様子 加藤室長

加藤室長

― 今回はReningカラムのインタビューで訪問させていただいたのですが、弊社の自動フラッシュ精製装置IsoleraとSelektを使用されていると伺いました。これらの装置を使っている研究内容について、お聞かせいただけますか?

加藤室長:創薬研究所では、独自の新薬候補化合物を創製し、前臨床試験以降の本格的な開発業務を技術供与先に委ねる、リサーチベンチャースタイルの研究開発を進めています。 2018年、当社が創薬し、Melinta Therapeutics社(米国)へ導出したニューキノロン系抗菌剤「Baxdela」が米国で製造販売承認を受け販売が始まりました。そのほか、膀胱炎や尿路感染症に効果を示す配合抗生物質製剤「ZERBAXA」の主成分である新規セフェム系抗菌剤「Ceftolozane」等も創製しています。
創薬探索研究における医薬候補物質やその合成中間体の精製にSfärカラムやReningカラムを使用しています。数mgから100gスケールの化合物精製に御社の装置を利用しており、高純度の医薬候補化合物供給に役立てています。基本的には順相カラムを用いた低分子の精製をメインに行っていますが、高極性な化合物の精製には逆相カラムを用いることもあります。

左:Isoleraとカラム(上段:Sfär、下段:Rening),右:Reningカラムのストック。サイズごとに分類されている。

◆ReningカラムでSfärカラム同様の分離能を確認

― 精製装置の導入前はどのような精製方法を行っていましたか?

加藤室長:再結晶や蒸留、それらで上手くいかない時は、ガラスのカラム管を使った昔ながらのシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行っていました。割合としては、カラム精製が9割程度です。

― 弊社の精製装置とカラムを導入された経緯や決め手をお聞かせいただけますか?

加藤室長:Isoleraはデモで何度か使用させていただき、過去使用していた製品や現行のマニュアル法と比べ性能がよくなってきたと感じたので、導入を決めました。具体的には、ポンプ性能の向上、4溶媒系での自動グラジエント機能、検出器のタイムラグが改善されたことが決め手となりました。カラムがスモールスケールだけでなくラージスケールまで販売されていることも大事なポイントでした。後継機のSelektもIsoleraと同様にデモを実施し、良かったので増設時に導入しました。Sfärカラムについては、旧製品SNAP Ultraからの移行です。Reningカラムについては、Sfärカラムに比べて低コストとのことでサンプル品を提供頂き、実際に使用してSfärカラム同様の分離能が得られたことから導入を決めています。

◆Reningカラムをファーストチョイス。約30%のコスト削減に

― 精製製品をフルでご活用いただき嬉しく思います。Reningカラムを導入された感想はいかがでしょうか?Reningは破砕状シリカゲル、Sfärは球状シリカゲルを充填していますが、カラムの使い分けについてもお聞かせください。

加藤室長:当初はコストを抑えているので分離能に不安を感じていましたが、使用してみると高い分離能をもっており、我々の取り扱うほとんどのサンプルは分離できると感じました。シリンジでのチャージ法も慣れると不便さはなく自然落下よりもはやくチャージできるので気に入っています。一方で、カラム上部の蓋にあたる部分が取れないので、チャージ中に試料が固体化してしまうとその後の処理が大変になってしまう点は注意して使用しています。

上田さん:Reningカラムは蓋が開かないのでチャージ方法に限りがあり、シリンジでチャージすることに最初は正直戸惑いました。ですが、慣れてしまえば問題ないです。分離も問題ないので、特に不満なくReningカラムをファーストチョイスで使っています。結晶化しやすいものは蓋が開くSfärカラム、それ以外はほとんどReningカラムで精製しています。

加藤さん:私もReningカラムをファーストチョイスで使っています。チャージ方法以外はそれほどSfärカラムとの違いを感じていないです。シリンジチャージは慣れるまでそれほど時間がかかりませんでした。

― 分離については同様の御意見がたまにあるのですが、もしかしたら破砕カラムの粒度のばらつきがいい方向に作用したのかもしれないですね。コストメリットについてはいかがでしょうか?

上田さん:コスト試算したところ、Sfärカラムで精製していたのを60%程度Reningカラムに切り替えたところ、20~30%コストが削減できました。

― カラムコスト以外のコスト、例えば溶媒の使用量などが逆に増えたということはないですか?

上田さん:溶媒の使用量は特に変わっていないですね。Reningに切り替えて、1回で分離できなくなったとか、分離させるためにラン1回あたりの溶媒使用量が増えるということはありませんでした。

インタビューの様子 加藤さん

加藤さん

インタビューの様子 上田さん

上田さん

◆経験に左右されない精製レベルの底上げを実感

― コスト削減効果がしっかり表れていて嬉しく思います。もし、バイオタージの精製製品を知人の方にオススメするとしたら、どのようなポイントですか?

加藤室長:精製装置についての良い点ですが、TLCの条件さえわかれば、誰でも分離条件を設定できるところがいいですね。個人の経験や研究背景に左右されにくく、誰でも短時間で再現性よく化合物を精製できるのが強みだと思います。理論を理解して使うともちろん精製装置の性能を引き出せると思うのですが、経験の少ない方が精製しても、十分なレベルの精製が保証されていると思います。

また、自動で分取精製してくれるので、分離中に他の業務ができ、業務効率が向上する点も優れています。タイムパフォーマンスが上がるので、限られた時間でより高い成果を求められる環境で働いている方にマッチしていると思います。さらに、マニュアルで行うカラムクロマトグラフィーと比べて、圧力による溶媒の吹き出しやカラム管の破裂などのリスクが少なく、安全性の面でもメリットがあります。加えて、保守サービスが充実している点も安心して勧められるポイントです。

フラッシュ精製システムIsoleraを操作している様子

― ありがとうございます。おかげさまで保守サービスは多くのユーザーの方から高く評価いただいています。バイオタージへ要望などがありましたらお聞かせください。

加藤室長:特に大きな不満はなく満足しています。強いて言えば、Reningカラムには専用のホルダーがないので、あると嬉しいです。Sfärカラムのホルダーにゴムを引っ掛けて使う方法を営業の方から教えていただき、運用しています。あとは、ReningカラムはSfärカラムと比べて大きなカラムが販売されていないので、同程度までサイズを増やしていただけると助かります。

― ホルダーの件は他のReningユーザーの方からもリクエストいただいています。改めて本社に伝えておきます。Reningのサイズ展開の件は、現在80gが最大ですが、より大きなサイズのカラムの販売を検討中です。販売が決まりましたら営業からご連絡いたします。本日はお忙しい中ありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。

(左)フラッシュ精製装置Isoleraの横にあるReningカラム置き場からカラムを選んでいる様子。(右)次世代フラッシュ精製装置Selekt。

インタビュー実施:2024年7月31日
PDFファイルダウンロード(1.0MB)

導入製品

フラッシュ精製カラムカートリッジ
Biotage® Rening

URL: https://rening.biotage.co.jp/

Biotage® Rening Cartridge

導入機関

湧永製薬株式会社

1955年、湧永製薬は前身である湧永薬品株式会社として大阪市福島区に設立されました。その後、1968年に広島県安芸高田市甲田町に新工場を設立、1981年に世界で初めてバイオ技術によるセクレチン・ヒトEFGの創出に成功するなど着実に業績を挙げ、1982年に現在の湧永製薬へと社名を変更しました。現在の社員数は300人、東京本社、大阪と広島に事業所、アメリカとドイツに海外子会社を抱えます。世界中の人びとの健康と幸福に大きく貢献すること-これこそを至上の命題と考え、人々からより信頼される企業を目指して日々歩み続けています。

湧永製薬株式会社外観写真