崇城大学工学部ナノサイエンス学科 草壁研究室

マイクロウェーブ合成装置Initiator+Eightで
風力発電ブレードの分解研究が加速

崇城大学工学部ナノサイエンス学科 草壁研究室
崇城大学工学部ナノサイエンス学科 草壁研究室

崇城大学工学部ナノサイエンス学科草壁研究室において、資源の再利用を目的とした廃プラスチックのリサイクル研究を行っている池永名誉教授。以前、バイオタージのマイクロウェーブ合成装置「Initiator+Eight」を活用して、再利用困難のガラス繊維強化プラスチック(GFRP)のマイクロ波分解研究に取り組んでいることをインタビューさせていただきました。今回のインタビューでは、その後の変化や今後の展望についてうかがいました。

前回のインタビューでは再利用が極めて難しいガラス繊維強化プラスチック(GFRP)の分解にInitiator + Eightを活用いただいているとうかがいました。近年、特に力を入れている研究テーマがありましたら教えていただけますでしょうか。

池永先生:現在は風力発電のブレードの分解に注力しています。実は、風力発電に使用されるブレードはGFRPを使用しています。風力発電設備は20年ごとに建て替えられることが定められており、風力発電ブレードは、ほとんどが埋め立て処分となります。2023年6月に秋田県の風力発電の担当者からの取材をきっかけに、発電事業者の株式会社ユーラスエナジーホールディングスより解体後の風力発電ブレードサンプルと資金を供与していただき、分解の共同研究が始まりました。昨年半年間の資金援助をいただき、今年からは草壁先生を交えた契約の形で研究が本格化しています。

左:反応後のGFRP分解樹脂, 中:GFRPから回収したガラス繊維, 右:風力発電ブレードサンプル

◆酸化物の微粒子合成からCFRP分解まで広がる応用範囲 

― 長年のGFRPのマイクロ波分解研究が風力発電ブレードの分解・リサイクルへの技術発展につながっているのですね。インタビュー当時と比べて、Initiator+Eightの運用状況について変化はありますか?

池永先生:GFRPの分解の研究だけでなく、草壁先生の研究テーマでも活躍しています。酸化セリウムの微粒子の合成でInitiator+Eightが役立っています。

草壁先生:水系の反応なので、これまでは通常加熱を用いた100℃の長時間加熱条件を実施していました。Initiator+Eightを使うと加圧できるため、それ以上の温度で短時間合成が可能となりました。

池永先生:その合成反応には、ロボット部分も時間の有効活用で活躍しています。夕方、8本分の合成実験をInitiator+Eightにセットすると、翌朝にはすべての合成が終わっているので、時間の有効活用のルーティンを確立できています。

― 酸化物の微粒子合成の研究にもマイクロ波合成装置が活用できるのですね。

池永先生:そうですね。酸化セリウムの研究成果は今年、論文にできたらと草壁先生と相談しています。マイクロ波合成装置を使った興味深いテーマがもう一つあります。炭素繊維強化プラスチック(CFRP)にマイクロ波を照射すると、炭素繊維がマイクロ波を強く吸収し、放電現象やスパーク発生を引き起こす問題がありました。塩化コリンを添加することで、このスパーク発生の抑制が偶然にも発見されました。マイクロ波が塩化コリンへ優先的に吸収されるため、スパーク発生の抑制が達成されたと予想しています [1]。
[1] Microwave degradation of carbon fiber reinforced plastics in choline chloride (Materials Research Proceedings, 29 (2023) 43-50)

左:草壁先生, 右:池永先生

(左から)草壁先生、池永先生

◆キャビティ異常も約30分で復旧、条件検討に安心感

― 今後のCFRPのリサイクル技術の発展にも期待できますね。様々な研究用途に活用されている中で、改めてInitiator+Eightのメリットについてお聞かせください。

池永先生:バイオタージの自動マイクロウェーブ合成装置Initiator+のキャビティが外側にあることから、分解反応の条件設定を最大限にして、もしもバイアルが破裂した場合でも、研究者レベルで清掃・洗浄を含む復旧作業が、約30分で完了できます。これだけ早い復旧作業は、他社の加圧マイクロ波装置にはない特徴です。これからマイクロ波合成装置の導入を検討されている研究者は、ある程度情報収集をした後は、営業の方へデモ機使用を相談して、使い勝手や自分の研究に役立つかどうかを実際に試すことが一番良いと思います。実は、私もデモ機使用から始まり、現在は、2台保有・使用しています。

学生がInitiator+8を操作している様子

学生の小田さん

― Initiator + Eightもしくはバイオタージに対してご要望はございますか?

池永先生:アームの接続が時々切れることがあるのが少し不満ですね。困ったことがあれば、サービスの方にサポートをいただきながら引き続き活用していきたいと思います。

― 貴重なご意見ありがとうございます。それでは最後に、今後の展望をお聞かせください。

池永先生:今後鋭意に研究を進めて、風力発電ブレードの分解技術の完成、さらには、実用化の技術へ発展させたいと願っています。

― 本日は興味深いお話をありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。

インタビュー実施:2024年7月10日
PDFファイルダウンロード(2MB)

導入製品

マイクロウェーブ合成装置
Biotage® Initiator+ Eight
Biotage Initiator+8

導入機関

学校法人 君が淵学園 崇城大学
崇城大学の外観写真

崇城大学は、専門分野のプロを養成する」という理念に基づき2000年に熊本工業大学から現大学名に改称して、薬学部·生物生命学部·工学部·情報学部·芸術学部の 5学部 11学科を要する総合大学へ生まれ変わりました。工学部は機械工学科・ナノサイエンス学科・建築学科・宇宙航空システム工学科から構成されて、人間の暮らしを多面的に支えるものづくりの技術者や研究者を、これまで数多く輩出しています。「ナノ素材」がライフスタイルを大きく変えようとしている 21 世紀に、ナノサイエンス学科では、バイオ・環境・先端材料分野で役立つナノテクノロジーを教育・研究して、ものづくりで社会に貢献するグローバルな人材を育成することを目指しています。