高薬理活性原薬の製造にスケールアップ用精製装置
Biotage® Flash 150を有効活用。良好な分離再現性により、
高品質原薬の安定生産に大きく貢献!
~ プロセスバリデーションや治験薬GMP製造等、豊富な成功体験 ~
協和ファーマケミカル株式会社
本日は協和ファーマケミカル株式会社 製造部製造推進担当 朝長様、舘様にスケールアップ用精製装置Biotage® Flash 150を用いた製造ステージでの使用例やその将来性についてお話を伺いました。
― この度はユーザーインタビューを御承諾いただきありがとうございます。改めまして御社の事業内容、研究内容に関しましてお話を伺えますでしょうか。
朝長様:弊社では医薬品原薬事業と機能性香粧品を含むヘルスサイエンス事業を中心にグローバルに事業を展開しています。医薬品原薬では、トラネキサム酸が世界トップシェアであり、もう一つの柱はプロスタグランジン(PG)です。PGは弊社の得意とする有機合成技術を基盤に、様々なPG誘導体の製法を開発し、GMP管理下で安全・環境にも配慮した製造が可能です。
現在はこれらの事業に加え、 CDMOとして製薬系企業と連携し、開発段階の化合物もラボからプロセススケールに至るまでの幅広い対応に注力しています。当社の有機合成技術を基盤にしたプロセス開発や分析法開発、スケールアップの対応も可能であり、2025 年に向け、開発品の製造設備導入を検討中です。また、GMP の対応力も強みとし、過去に FDA 査察を 7 回クリアしています。
その他の研究内容では、菌株探索から反応まで酵素プロセスを利用する化合物合成を実生産へ応用するといったバイオコンバージョンも得意領域としています。世の中にない技術として、植物由来の糖鎖が化学触媒として機能することを発見し、その触媒機能の発現機構、生理活性作用などの応用研究も進めています。また、抗老化、抗炎症作用等、多様な効能が期待されている超硫黄分子にも注目しています。弊社は、複数の超硫黄分子に関して研究、特許出願しており、工業的製法を確立しています。
香粧品事業では、ドラッグデリバリーシステム(DDS)のキャリアとして、リポソーム化を中心とした製剤化研究や、分析・評価力を応用した化粧品開発にも取り組んでいます。良い成分なのに溶けない、不安定、肌に浸透しないといったお客様の悩みに応える製品を提供すべく、研究を進めています。
― 幅広く事業展開をされている中に数々の新規技術が含まれているのですね。
プロセス開発でも様々な技術を使用されていると思いますが、御社のカラム精製に関するスケールアップの取り組みについてお伺いできますか?
朝長様:ご存知の通り、医薬品原薬を製造する際には、合成反応で生成した原薬または中間体の精製が必須となります。生産性などのコスト面を考慮し、精製は晶析により行うことが望ましいですが、化合物の物性によってはカラム精製を避けられない場合があります。その場合、研究室でカラム精製条件を検討する際には、主にBiotageのラボ機であるIsoleraを使用し、最適化した精製条件をプロセス現場のフラッシュ装置にスケールアップしていく流れです。基本的には、線速度を一定にしてスケールアップまたはスケールダウンすることで、ラボと現場間の分離を良好に再現できており、高活性原薬の取り扱い時には、封じ込めに適したBiotage® Flash 150を選択し、プロセスバリデーションや治験薬GMP製造での成功体験も豊富にあります。
◆高薬理活性物質を取り扱うための封じ込め環境構築には最適解!
― Flashシリーズは封じ込め対策に最適な装置ですので、まさにピッタリな選択だなと思います。ではFlash 150を導入するきっかけは何でしたか?
朝長様:弊社ラボでは、Isoleraを用い、初期検討の効率化を進めておりました。スケールアップする際の設備選定時には、Biotageのホームページを確認し、Isoleraのスケールアップ機を選択肢とした上で、取り扱い品目が高薬理活性であったことが、封じ込めを達成する上での決め手となりました。
― ホームページも参照していただいたことはマーケティングチームも喜びます(笑)。ではFlash 150導入前はどのような方法で精製を行っていましたか?
朝長様:ラボレベルではオーソドックスなオープンカラムや可動栓カラム、他社の自動精製装置も使っています。またスケールアップする際にはより大きなオープンカラムや可動栓カラムを使用し、ラインナップとして30 Lから500 Lまでの6種からサイズ選択できます。カラム精製の技術は弊社の強みですので、さらに目的に合った装置の拡充を目指していました。
― なるほど、カラム精製のご経験は豊富なのですね。その当時お持ちになっていた装置に対して不満点などはございましたか?
朝長様:高薬理活性物質や毒性不明な化合物の封じ込めが難しいことですね。最近は高薬理活性物質の取り扱いが増えてきており、カラム後のシリカゲル抜き出し時に、高薬理活性物質が付着した状態でシリカゲルが飛散すると、オペレーターへ曝露するリスクがありました。
御社のプレパックのカートリッジカラムは封じ込めに適しており、シリカゲルの抜き出しをせず、そのまま廃棄が可能ですよね。実際、 カテゴリー6(OEL : 0.1 μg/m3以下)の高薬理活性物質の精製実績も豊富となり、安全操業が可能となりました。
また、シリカゲルの充填にノウハウが必要であることや、メンテナンス費が高額であることも課題となっていました。
◆ラボ機からスケールアップが容易なシステム。豊富な精製ノウハウとカスタム化した設備により、分離再現性も良好
― 高薬理活性物質の取り扱いに関しては、我々もよくご質問を受けます。まさに封じ込めに対応しているのがFlashシリーズなんです!御社にはFlash150を複数台納入していただいていますが、導入されてのご感想はいかがでしたか?
朝長様:まずはラボ機IsoleraとFlash 150間での分離再現性が高かったことです。プレパックのカートリッジ式カラムのため充填にノウハウが要らないため、安定した分離により、安定生産を実現できました。プロスタグランジン類は高薬理活性のものが多いので、封じ込めができ、煩雑なシリカゲルの充填、抜き出し操作がなく作業負荷も低減できました。また設備がコンパクトでウォークインドラフト内など、狭いスペースに収納可能でした。
― 設置場所に関してはプロセススケールの精製装置としては小型で使い易いとお声をいただいています。御社に納品させていただいている装置のうち1台はエンジニアリング会社様にてカスタム化されているものですね。より使い易い形になっていると思いますが、いかがですか?
朝長様:送液部分と、サンプルインジェクションモジュール、フラクションコレクターの部分などをカスタムしています。エバポレーターまで必要なフラクションを連続移送できるレイアウトになっており、作業動線も配慮した形になっています(図1)。
図1(左、中):Flash 150LをコアとしたHPAPI取り扱いに適合した精製システム。ドラフト内に収まりエンジニアリング会社の設計でサンプル溶液が安全に処理される流路が確保されている。(右)使用しているプレパックされたカートリッジ
― ノーマルのFlash 150Lシステムもお持ちですが、カスタム型と比べてのコメントなどありましたらお願いします。
舘様:取り扱う化合物に依存しますが、サンプル内の微量の不溶物がモジュール内のフィルターに詰まりやすいことが問題として挙げられます。ぜひ改良型のモジュールなどお願いしたいです。あ、営業担当者のサポートはよかったですね。
― 担当営業も喜びます!実際にお使いになってのデータに関してはいかがですか?
朝長様:ラボの検討結果と同等の精製結果を得ることができ、目的物と不純物の分離挙動及び除去率、収率が同等でした(図2)。ラボ機と製造機のメーカーを合わせて導入した効果が出ており、Flash 150のカスタマイズやスケールアップのノウハウも蓄積され、ラボ機とプロセス設備間の再現性、製造時のロット間の再現性も高いです。これは非常に重要なことで、スケールアップ時の検討時間を大幅に短縮でき、治験薬製造やプロセスバリデーションの成功確度や安定生産にも貢献できています。今後、より大型のFlash 400シリーズを増設できれば、さらなる効率化ができるかもしれません。
図2:IsoleraからFlash150Lへのスケールアップ時の線速度とクロマトの結果。線速度を合わせることで容易なスケールアップを実現している。結果も良好、精製品の品質も問題ない。
― 頂いたデータはすごい整合性があって素晴らしいです。少し興奮しています。これから検討してみたいことなどはございますか?
舘様:カラムの繰り返し使用によるコスト削減や逆相条件での使用も検討したいです。今は順相条件がメインですが、将来的には逆相も必要になってくると感じています。またより大型のFlash 400にも興味があります。
― 逆相だとプレパックカートリッジの簡便さが体感していただけるのではと思います。Flash 400に関してはこれからまたご相談させていただければと思います。もしFlashシリーズのシステムでのスケールアップについてお考えの方に薦めるならポイントは何でしょうか?
朝長様:分離再現性、安全性(封じ込め)の2点ですね。分離再現性は、スケールアップ期間の短縮やプロセスバリデーションの成功率、商業生産時の原薬品質の安定化に直結します。今後、高薬理活性物質や開発段階の毒性不明化合物の取り扱いも増えてくると思いますので、封じ込めできることは重要ですね。
― ありがとうございます。頂いたデータも啓発活動に使用させていただきます。最後にご要望などがありますでしょうか。
朝長様:プロセス開発時にカラム精製を選択する際の宿命でもあるのですが、原材料費に占めるカラム費の割合が大きく、カラムのコストが下がればいいですね。原薬のコストダウンに直結すると思いますので、ぜひご検討いただければありがたいです。あと先ほどコメントいたしましたサンプルインジェクションモジュールの種類があればいいですね。濾過面積がより大きなものを希望します。最後に難しいとは思いますがFlash 400のコンパクトなものができればいいですね。設置面積や天井までの高さに制限のあるプラントも多いと思いますので、もう少し小型であれば、以前にも導入できる機会がありました(笑)。
― 貴重なご意見ありがとうございました。今後の参考とさせていただきます。今後ともバイオタージをよろしくお願いいたします。本日はお忙しい中、お時間をいただきましてありがとうございました。
インタビュー実施:2023年9月1日
PDFファイルダウンロード(1MB)
導入製品
Biotage® Flash 150
URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/flash-purification/flash150_top/
導入機関
協和ファーマケミカル株式会社
設立:1951年(創業:1946年)
所在地:富山県高岡市
協和ファ―マケミカルは、薬都の富山県で発祥し、現在ではキリングル―プの一翼として医薬品原薬、中間体などの受託製造とリポソ―ム化技術を応用した香粧品事業を手がける。グロ―バルトップのトラネキサム酸と、有機合成のロ―ルモデルとも称されるプロスタグランジンでは、競合追随を許さない強固な事業プレゼンスを持つ。2大事業と原薬受託で蓄積した同社バックボーンは、困難な合成反応をともなう化合物の生産性向上やラボから量産まで開発期間短縮の提案など今後のCDMO(医薬品開発製造受託)ニーズにフルマッチする技術資産があり「持てるノウハウを全面的に展開」し、唯一無二の企業を目指している。FDA(米国食品医薬品局)査察を過去7回クリアするなど、グロ―バルGMP対応力にも強みがある。