九州大学大学院薬学研究院・創薬ケミカルバイオロジー分野 王子田先生 / グローバルファーマシー分野 川西先生

精製効率化でアカデミア創薬開発と薬剤師を目指す学生の
「なりたい!」を後押し

1日がかりだった精製が1日3本以上可能に!溶媒使用量半減効果で、
フラクション濃縮も時短になりワークフロー全体の効率化に貢献

九州大学大学院薬学研究院・創薬ケミカルバイオロジー分野 王子田先生
九州大学大学院薬学研究院・グローバルファーマシー分野 川西先生
九州大学大学院薬学研究院・創薬ケミカルバイオロジー分野 王子田先生 / グローバルファーマシー分野 川西先生

九州⼤学⼤学院薬学研究院王子田研究室では、薬剤師を目指す学生が創薬研究を効率的に推進しています。新型コロナウイルス感染症の変異株にも対応した経口治療薬の候補化合物を開発したことが発表され、その中で Biotage® Sfär カラムとフラッシュ精製装置 Isolera™ Prime が活躍したということで、王子田彰夫先生、川西英治先生、臨床薬学科5年生の3名(礒貝さん、濱田さん、平本さん)にお話を伺いました。
Discovery of Chlorofluoroacetamide-Based Covalent Inhibitors for Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus
2 3CL Protease (J. Med. Chem. 2022, 65, 13852-13865)

― あらためて取り組まれている研究テーマについて教えていただけますか。

九州大学大学院薬学研究院・創薬ケミカルバイオロジー分野 王子田先生 / グローバルファーマシー分野 川西先生
王子田先生 :
私たちは大学発の創薬を目指し、タンパク質と共有結合を形成して機能を阻害するコバレントドラッグの研究に取り組んでいます。コバレントドラッグは従来の低分子化合物に比べて高い選択性と効果が期待できます。加えて、これまで当研究室で培った一定期間経つと結合したタンパク質から離れる機能を付加することで副作用の低減との両立が期待できます。その研究開発の中で、川西先生には田辺三菱製薬からクロスアポイントメント制度の下、常勤教員として実用化に向けた研究支援を行っていただいております。

川西先生 :
王子田研究室の学生9名を担当させていただいており、新型コロナ治療薬やその他の研究を進めております。担当している学生は薬剤師を目指している学生がほとんどで、薬剤師国家試験の勉強と研究の両立が求められるため、研究の効率化は必須となります。バイオタージさんには精製の効率化で大変お世話になっております。

◆薬剤師国家試験の勉強と
研究の推進の板挟み状態を改善したかった

― 導入された経緯をお聞かせいただけますか。

王子田先生 :
薬剤師国家試験のための勉強時間を学生のために確保したいという思いもありますが、研究も推進してほしいという期待もあります。そのためには、研究の効率化を実現する環境構築が課題でした。カラム精製は1本行うだけで1日が終わってしまうので、とても効率が悪いと思っていました。そんな時に信頼できる先生からバイオタージさんをご紹介いただき、精製装置とカラムを導入しました。

川西先生 :
オープンカラムをしたことがない学生がいるぐらいフル活用しています。ちなみに、インタビューに回答した学生たちはオープンカラムをしたことがありません。

― 運用はどのようにされていますか? 使っていく中で実感しているメリットや効果もお聞かせください。
九州大学大学院薬学研究院・創薬ケミカルバイオロジー分野 王子田先生 / グローバルファーマシー分野 川西先生
平本さん :
精製はすべて2台の Isolera で行っています。ヘキサン/酢酸エチル専用機とクロロホルム/メタノール専用機として2台を使い分けています。不純物を自動できれいに分けてくれるので、とても助かっています。

磯貝さん :
Isolera と Sfär カラムに任せておけば、きれいに早く精製が終わるので助かっています。直感的に操作できるので、使うハードルが低いところも気に入っています。

 

九州大学大学院薬学研究院・創薬ケミカルバイオロジー分野 王子田先生 / グローバルファーマシー分野 川西先生濱田さん :
全体的な使いやすさと、グラジエントメソッド入力するところが1%単位で入力できるので、細かな調整ができて嬉しいです。

川西先生 :
クロロホルム/メタノール専用機の強溶媒には、クロロホルム/メタノール(9:1)のプレミックスを使っています。メタノールをそのまま使ってグラジエントメソッドにするよりも、100%に設定した時に実質濃度を10%に到達させる方がより細かな調整ができます。

◆チャージから分離までカラム1本で完結!
余分なアダプターからの漏れトラブル回避

― 川西先生はメドケム時代に他社の製品を使っていたとお伺いしています。他社製品と比べて気に入っている点や利点を教えていただけますか。
九州大学大学院薬学研究院・創薬ケミカルバイオロジー分野 王子田先生 / グローバルファーマシー分野 川西先生

川西先生 :
Sfär カラムについては蓋が開いて、直接サンプルをロードできる点がとても気に入っています。他社のカラムではサンプルロード用のカラムを別で用意する必要があります。また、アダプターが必要で、サンプル漏れの原因となるリスクがあります。Sfär カラム1本で分離も問題ないので、1本で完結するシンプルさが良いところだと思います。

また、バイオタージの精製装置と組み合わせて使うことで、精製時間だけではなく溶媒使用量も半分ぐらいに削減され、環境負荷の低減にもつながっています。さらに、精製後のフラクション濃縮時間も短縮され、ワークフロー全体が大きく効率化できています。

 

九州大学大学院薬学研究院・創薬ケミカルバイオロジー分野 王子田先生 / グローバルファーマシー分野 川西先生王子田先生 :
ワークフロー全体が効率化されることで、学生の勉強時間の確保ができるようになりました。オープンカラム時代はつきっきりで精製しないといけない上に、精製だけで1日が終わります。それが1日3~4本精製できるようになり、しかも手離れできるので、メリットはとても大きいと感じています。

川西先生 : 時短効果だけではなく、学生の実験経験がなくても簡単に使える点も重宝しています。使いやすいので、上級生が下級生に教えることができます。

◆キラル化合物もフラッシュ精製システムで分離に成功

九州大学大学院薬学研究院・創薬ケミカルバイオロジー分野 王子田先生 / グローバルファーマシー分野 川西先生
Isolera + キラルカラム

― 新型コロナ治療薬の開発の発表論文の中でIsoleraを使ってキラル化合物を分離している記述がありました。そのときの様子をもう少し詳しく教えていただけますでしょうか。

川西先生 :
Isolera にダイセルのキラル中圧カラムを接続して精製していました。メソッドは、ダイセルに分取したい化合物のサンプルを送ると分離メソッドが提供され、その通りに Isolera に条件を入力します。

分取量は 800 mgのサンプルを 80 mgずつに分けて精製しました。つまり 10回同じ精製をカラム洗浄なしで繰り返し、目的物が 400 mg得られる計算です。1日で終えることが可能です。

こちらのクロマトグラム(右図参照)はキラル化合物を精製した時のものですが、分離の結果も申し分なく、純度は十分に担保できていました。分離ができなかった時は、混ざったところだけ多めに回収して、再精製をすれば問題ありません。

 

九州大学大学院薬学研究院・創薬ケミカルバイオロジー分野 王子田先生 / グローバルファーマシー分野 川西先生― 気になる点やご要望がありましたらお願いします。

川西先生 :
カラムホルダーが Sfär カラムにしか対応していないので、バイオタージの他のカラムさえも使えないところが少し残念です。廉価カラムの Rening カラムや以前販売されていた SNAP カラムがホルダーの溝にはまらず、輪ゴムを使って挟んで運用しています。

― 貴重なご意見ありがとうございます。今後の目標やプランをお聞かせいただけますか。

川西先生 :
1日でも早く新型コロナ治療薬の開発を前に進めたいです。また、王子田先生をはじめ他の先生方や機関と連携して、新型コロナ治療薬だけではなく様々なアカデミア創薬を九州大学から推進していきたいと考えています。そして、研究を加速させるためにも、薬剤師を目指す学生が研究を推進できる環境づくりを引き続き行っていきたいです。

― 今後もバイオタージ製品をよろしくお願いいたします。本日はお忙しい中ありがとうございました。

インタビュー実施:2023年2月
PDFファイルダウンロード(320KB)

導入製品

高速精製対応球状シリカゲルカラム
Biotage® Sfär

URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/flash-purification/sfar/

フラッシュ自動精製装置
Isolera™ Prime

URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/flash-purification/isolera_prime/

利用機関

九州大学大学院薬学研究院(病院キャンパス)
九州大学大学院薬学研究院・創薬ケミカルバイオロジー分野 王子田先生 / グローバルファーマシー分野 川西先生

医療系学部が同一キャンパス内に位置する病院キャンパスでは、チーム医療や創薬の連携研究が実践できる最適な環境が整備されています。さらに九大薬独自の人と地球に優しい「グリーンファルマ研究」を推進するための創薬拠点の形成が加速化しています。