法医学における薬物分析の現場で窒素吹付高速パラレル濃縮装置「TurboVap® LV」を活用
コンタミリスクの回避、
メンテナンス時間の削減をかなえる
福岡大学医学部 法医学教室
福岡大学医学部法医学教室では司法解剖の一環として薬物分析を行っており、ターゲットとなる薬物分析前処理の濃縮、乾固工程に窒素吹付高速パラレル濃縮装置「TurboVap® LV」を導入いただきました。今回は、「TurboVap® LV」をご採用いただき使用されているブライアン・ウォーターズ助教にお話しを伺いました。
― 早速ですがブライアン先生の自己紹介と法医学教室でのお仕事の内容を聞かせてください。
ブライアン先生 :
久保真一教授の下、福岡大学医学部法医学教室では薬物分析を行っています。私はノースカロライナ州立大学で繊維科学を学び科学捜査に関心を持ち、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校で、科学捜査学の修士を取得しました。ロサンゼルス検視局で仕事もしましたが、日本で仕事をしたいという希望を強くもっていたところ、縁あって2011年4月から福岡大学で仕事をしています。法医学教室は警察と協力し、司法解剖によって採取された体液や体組織の分析を行うのが主な仕事です。血液、尿、胆汁などの体液や腎臓、肝臓などの体組織にどのような薬物が存在するかを調べます。また、必要に応じて薬物の定量も行い、執刀医に提供し、死因の特定につなげます。
◆PTFEコートが酸から装置を守る
― ありがとうございます。では、お仕事の中でどのようにTurboVap LVをご活用いただいていますか。
ブライアン先生 :
分析はGC/MSやLC/MSなどを使いますが、その前工程に当たる薬物の濃縮、乾固工程で使っています。分析の前処理として血液や尿から薬物だけを抽出するのですが、感度を上げるために抽出液を濃縮、乾固しています。
― こちらではPTFEコートタイプのTurboVap LVをお使いいただいていますね。
ブライアン先生 :
抽出溶媒にギ酸や酢酸が含まれていることが多いので酸耐性のあるPTFEコートタイプを選びました。これまで使っていたアルミヒートブロック式の装置だと酸に侵され、錆びたり、汚れやすかったりしたので、ノズルを外して、交換したり洗浄したりする手間があったのですが、それがなくなり、メンテナンスにかけていた時間と手間を省くことができるようになりました。
― TurboVap LVの使い勝手はいかがですか?
ブライアン先生 :
以前の装置はアルミヒートブロック式でしたが、TurboVap LVではガラス張りのウォーターバスが使われています。ウォーターバスの温度を設定し、試験管を入れて窒素を吹き付けますが、ガラスは透明なので試験管に残っている液体の状態が見えるのがいいです。これまで使っていたヒートブロック式の装
置では、どの程度濃縮されているか、試験管を引き上げて確認していたので、その手間のかかっていた作業が省けました。それからTurboVap LVではガスの流量設定、ウォーターバスの温度設定、濃縮の時間設定などタッチパネルでコントロールできます。これまでの装置ではなかった機能です。また簡単なプログラミングができるようになっていて吹き付け濃縮のメソッドを作れます。濃縮工程の最初の段階は液体がたっぷり入っているので、緩やかに吹き付けるようにし、液面が下がってきたところで、ガスの吹き付け流量を増やしてスピードアップする、というようなことができます。そうした作業メソッドを作れるところが便利です。
― TurboVap LVではウォーターバスを採用しているため均一に熱を伝えることができるのでタイマーやプログラミング機能が使えます。
◆ノズルの汚染が無くなりメンテナンス時間削減
ブライアン先生 :
これまで使っていた装置はノズルがサンプルの液面に向かって垂直に窒素ガスを吹付けていましたが、TurboVap LVは試験管壁に、らせん状に吹き付けるガスがサンプル液面に届き、サンプル液をボルテックスしてくれます。濃縮効率が上がりますし濃縮した残渣が非常にピュアな形で試験管の底に残ります。ノズルが垂直にガスを吹き付けるタイプの装置では、試験管の壁に残渣がくっついたり、ガスの流量をうまくコントロールできないとサンプル液が飛んで、ノズル自体がコンタミしてしまったりして、ノズルを洗浄する必要がありました。
TurboVap LVはノズルが試験管の奥まで入らないのでコンタミしにくくノズルの清浄さを維持できます。ノズルの構造の違いは手入れの面でも効いてきます。これまでは試験管の下の方まで届くようにノズルが長かったこともあり液面とノズルを近づけすぎてコンタミすることがありました。濃縮が進んで液面が低くなったらノズルをさらに自分で下げなければならず、ノズルが液に入ってしまうということもありました。この問題をボルテックス法が解決してくれました。また濃縮、乾固の時間が短くなったことももちろん利点ですね。特に水溶液は濃縮、乾固に時間がかかります。アルミブロック方式では60-80℃の設定で時間をかけて飛ばしていましたが、TurboVap LVは42℃前後のウォーターバス温度設定で十分に飛んでくれます。
― TurboVap LVのボルテックスシアリング技術がスピーディーな濃縮だけでなく、コンタミリスク回避にもお役に立っているのですね。
◆際立つ特徴、作業効率が大幅に改善
ブライアン先生 :
これも気に入っている点です。TurboVap LVはデジタル式になっており、タッチパネルで温度設定が可能です。
1℃単位で欲しい温度が得られます。これまではアナログ式で温度設定が不安定でした。設定と実際の温度に5℃くらいの差がある場合もありました。それからTurboVap LVはフレキシブルラックを採用している点もいいです。これまでは試験管の径に合わせたラックを使う必要があり、濃縮装置を複数の研究員が使う場合に不便な点でした。例えば、私は16mmを、同僚は13mmを使う時、同時に濃縮を行うことができませんでした。しかしTurboVap LVのフレキシブルラックは違う径の試験管を同時に使うことができます。またラックの高さ調整をすれば、違う長さの試験管を同時にーザーレポート「福岡大学医学部 法医学教室」 使うこともできます。これも仕事の効率アップにつながっています。
― 今後、TurboVap LVがさらに使いやすくなるために、こうした機能が欲しいというご意見はありますか?
ブライアン先生 :
液体が目標値まで濃縮された時に、窒素ガスの吹き付けが自動で止まるようにして欲しいです。薬物分析では定量分析が必要な場合があります。分析する試料が全て同じ量になれば、さらに使い勝手が上がります。
― いわゆる液面センサー機能ですね。TurboVap Ⅱにその機能があります。50 mLもしくは200 mLの専用濃縮管を使い、最大検体数は6検体までとなっています。より多検体を対象にしたTurboVap LVには付いていません。
ブライアン先生 :
薬物分析ではターゲット化合物をそのまま分析できない、もしくは感度が低い場合、反応試薬を使った誘導体化を行います。誘導体化反応は75℃で30分とか温めるのですが、ウォーターバスを使ってこの作業ができると、1つの装置で分析前工程が完了します。
― ウォーターバスの機能をさらに活用できる可能性を模索する新しい着眼点ですね。TurboVap LVは装置の仕様上90℃まで温度を上げられますので可能だと思います。ただ禁水条件の誘導体化反応では60℃を超えると湯煙による水分の混入が気になりますので装置の蓋を開けたままでご使用いただくか、試験管に蓋をしていただく必要があると思います。確かにTurboVap LV用フレキシブルラックにセットして多検体同時にウォーターバスで反応できるのは便利かもしれませんね。
本日は貴重なご意見をいただきありがとうございました。
インタビュー実施:2019年10月
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導入製品
窒素吹付高速パラレル濃縮装置
TurboVap® LV
URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/evaporation/tvlv/
独自のガスボルテックスシアリング技術により、複数のサンプルのエバポレーションを同時に且つ高速に行う窒素吹付式の濃縮装置です。1.5mLバイアルからφ30x165mmまでの試験管用にデザインされており、試験管の大きさに応じて48サンプルまたは24サンプルまで、同時に濃縮することができます。
利用機関
学校法人 福岡大学
URL: https://www.fukuoka-u.ac.jp/
福岡大学は、9学部31学科、大学院10研究科34専攻を擁する西日本屈指の私立総合大学です。「建学の精神」と「教育研究の理念」の基づく全人教育を行い、国や地域を支える有為な人材を輩出していくことを目標にしています。特に、薬学部、医学部を設置し、地域の中核的な先進医療施設として高度で人に優しい医療を提供し、それを担う優れた医療人を育成しています。
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