回収率・通液性の向上により、
チウラム、シマジン、チオベンカルブ
分析の効率が大幅アップ!
環境中の残留農薬分析に固相抽出カラム「ISOLUTE® 101」を活用
株式会社総合環境分析
株式会社総合環境分析は、環境水や土壌中の有害物質測定事業において、残留農薬分析のための前処理として、バイオタージの固相抽出カラム「ISOLUTE 101」を採用しました。以前のカラムに比べ、回収率が格段に高く、前処理工程の大幅な時間短縮を達成したとご評価いただいています。今回は、技術部次長の大塚克弘さんと、技術部技術2課の及川瑛里加さんにお話をうかがいました。
― まず、御社の概要についてご紹介ください。
大塚さん :
当社は、環境分析、いわゆる環境計量証明事業を目的に1983年に設立されました。さらに、ビル管理法に基づく飲料水の検査、工場排水、河川の調査、産業廃棄物関係などの分析を主に手がけています。2008年には水道法第20条の登録検査機関となっています。とくに、工場排水や土壌関係などで大量検査を短納期で行えることが当社の強みです。精度管理も重要視しており、他社さんももちろんそうだと思いますが、厳しい社内基準をつくり、正確なデータを提供するように心がけていまして、その点もお客様よりご評価いただいていると思っています。
― では、分析業務について詳しくお話しいただけますか。
大塚さん :
わたしの配属は本社技術部の技術2課というところです。主に高速液体クロマトグラフィー関係、ガスクロマトグラフィー関係をメインに分析しています。事業所としては、ここ横浜の本社のほか、東京技術センター(町田市)と北関東支社(群馬県)の3カ所がありますが、固相抽出や液液抽出など前処理からの分析に対応しているのはほぼ本社だけです。ですので、本社は前処理時間のかかる仕事が多いです(笑い)。東京技術センターは、ガスクロマトグラフでは飲料水のヘッドスペースやパージ&トラップ、イオンクロマトグラフ関係など、前処理なしで直接分析機器にかけられるような仕事が中心です。北関東支社は、一般的なBOD(生物化学的酸素要求量)/COD(化学的酸素要求量)ですとか、ガスクロマトグラフでのヘッドスペース、イオンクロマトグラフ関係もやっています。近く、水道法の51項目(水質基準項目と基準値)の分析すべてを北関東支社単独でもできるようにしたいと考えています。
◆3種の農薬を測定、前処理に固相抽出を利用
― では、今回ご採用いただいた「ISOLUTE 101」はどのようにご使用でしょうか。
大塚さん :
水質汚濁防止法(水濁法)関係で、河川や地下水などの環境水、工場排水、土壌溶出液などからの有害物質の測定が目的です。とくに、健康に関する有害物質の項目に農薬がありまして、そのうちシマジン、チオベンカルブ、チウラムの分析のために、バイオタージさんの固相抽出カラム「ISOLUTE 101」をテストしたところ、かなり効率が良く、回収率が高いことがわかりました。
― その3つの農薬がとくに問題なのですか。
大塚さん :
そうですね。工場排水関係だと、そこでどんな化学物質が使われていたかで検査項目は変わってきますが、環境水に関しては環境に関する有害項目が法令で定められていますのでそれを全部検査することになります。地下水も同じです。また、土壌汚染対策法に基づいて、この3つの農薬を測定することもありますが、残土の埋め立て処分では必ずといってもいいほどこれらの農薬を分析します。チウラムは、環境中で分解されやすいといわれますが、残留する可能性もあり、シマジンやチオベンカルブと同様に考えて分析する必要性があります。
― 今回はとくにそれらの分析にご利用いただいているということですね。
大塚さん:
その通りです。とくに、チウラムは分解したり変動したりしやすいので分析しにくい物質です。固相中の金属成分によって分解・吸着されることもあり、回収が難しいという特殊性があります。そのため、当社ではEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を加えて金属をマスキングするという方法をとって回収率を上げています。
◆回収率はコンスタントに90%以上、大幅な時間短縮を実現
及川さん:
「ISOLUTE 101」でも、EDTAを使わないと、回収率が80 %いくものもあるし、70 %程度の時もあるということで安定しないので、やはりEDTAは必要です。ただ、他社さんのカラムでは、EDTA不使用ですと50 %から良くても77 %という結果でしたので性能がいいのは確かです。
大塚さん:
同じようにEDTAを加えるとしても、「ISOLUTE 101」は通液性で大きく優れています。前に使っていたカ ラムも通液性は良いといわれているものだったのですが、それでも15分30秒かかっていたものが、「ISOLUTE 101」では2分15秒。通液速度が毎分13 mLだったのに対し、同100 mLに上がったことになります。コンディショニング時間も20分30秒が7分30秒に短縮しました。溶媒による溶出時間も9分だったのが3分になりました。かなりの時間短縮になっています。われわれのように、多くの検体数をこなす仕事には、非常に助かっているといえます。
― なるほど。それは非常にうれしいお話です。これだけの時間短縮に貢献できたのは光栄です。
大塚さん:
それに加え、脱水するのに遠心分離をかけて大部分の水を除いてから窒素パージで乾燥していたのですが、それに15分かかっていました。「ISOLUTE 101」を使用するようになって、この遠心分離による操作が不要になりました。通液性と同時に通気性も高いからだと思いますが、窒素ガスを通すだけで充分に水を取り除けるために、トータルの乾燥時間が短縮できました。土壌分析などで大量に検体が来ますと、ガスクロマトグラフや液体クロマトグラフでは前処理を含めるとなかなか数をこなすのは大変です。今回、時間短縮が図られて前処理のスループットが上がったことにより、試料を昼夜運転でクロマトグラフにかけて測定することが可能になりましたので、かなりの効率アップになりました。
及川さん:
先ほど述べたように、回収率もすごく良くなりました。以前は80 %がギリギリでしたが、いまは90 %以上コンスタントに取れていまして、100 %のときもあります。
― シマジンやチオベンカルブについても同様ですか。
大塚さん :
そうですね。同様に「ISOLUTE 101」の固相抽出で前処理を行いますが、最終的な測定はシマジンとチオベンカルブはGC-MSで、チウラムは HPLC-UV で行います。
◆ボトルネックだった前処理の効率化は重要、自動化が課題
― 大量分析のお仕事が多いというお話しでしたが、具体的には?
及川さん :
平均して月に100検体くらい処理します。実は、1物件だけで約260検体という仕事が入ったのですが、「ISOLUTE 101」の採用を決めた後で助かったということもありました(笑い)。
大塚さん:
ちょうどテストして確認を取ったタイミングでその依頼が降って来たんですね。時には土壌溶出液で400検体とかいう仕事もありますから、大きな力になると思います。クロマトグラフ分析も機械の進歩で時間短縮していますが、どうしても前処理がボトルネックになりますので、「ISOLUTE 101」採用による効率化はありがたいです。
及川さん :
先ほどお話しした260検体の仕事はシマジンのみの分析なのですが、「ISOLUTE 101」を使わせてもらっ ています。
― ご使用いただき感謝します。では、最後に問題点やご要望などあれば、おうかがいできますか。
大塚さん:
そうですね。「ISOLUTE 101」については、思った以上に効率が良いカラムだったので不満はありません。それ以外では、今後の予定にもなりますが、前処理の自動化が課題だと思っています。固相抽出はやはり人によるところがありますので、機械で統一できれば精度的にも安定すると期待しています。この前、お借りしてバイオタージの自動固相抽出装置「Biotage® Horizon SmartPrep」を評価させていただいたのですが、開放系で処理する構造ですのでコンタミに不安がありました。陰イオン界面活性剤なら空気汚染がないので有効でしたが、フェノール類などは汚染の心配があります。また、環境分析の場合は試料の量が200 mLとか500 mLとか多いので、温度管理の必要がある検体の場合には、自動化するとオートサンプラーが冷蔵庫のように大きくなってしまうという心配があります。それに「Biotage Horizon SmartPrep」は試料を1本ずつ処理する形ですが、12本同時とかパラレルに処理できる機械があるとうれしいですね。大量分析のための効率化はさらに追及したいと考えています。
― SmartPrepには回収バイアルにつけられるセプタムがオプションでありますので、そちらを使うと空気汚染の防止には効果があるかもしれませんね。また、弊社にはパラレル型の自動サンプル前処理装置「Biotage® Extrahera™」がありますが、現状こちらでは大容量の検体に対応していません。またいろいろとご相談させてください。今日は長時間ありがとうございました。
インタビュー実施:2019年1月
PDFファイルダウンロード(2.0MB)
導入製品
固相抽出カラム ISOLUTE® 101
URL:
https://www.biotage.co.jp/products_top/sample-preparation-products/non_polar_spe/#101
ISOLUTE 101 は、非修飾型のポリスチレンジビニルベンゼン共重合体を担体とした固相抽出カラムです。疎水性相互作用が ODS よりも強いため、水試料中に含まれる幅広い疎水性をもった有機化合物を効率よく捕集することが可能です。
導入機関
株式会社総合環境分析
株式会社総合環境分析は、環境調査・分析の仕事を通じて自然環境保全の一翼を担っています。飲料水検査、環境水、排水等の分析を中心に事業を展開し、土壌調査・土壌分析など事業領域を広げ、水道法20条に基づく飲料水検査などの業務分野に進出しています。良い環境、より快適な環境をテーマに環境問題にかかわることができることを誇りとし、これからの時代のニーズに応えられるよう、スタッフ一丸となって技術力の向上を目指し努力しています。
創立:1983年9月14日
資本金:2,000万円
社員数:78(2018年9月現在)
本社:神奈川県横浜市