Flash 自動精製装置 Isolera、
全自動ペプチド合成装置 Initiator+Alstra で
研究を効率化
自動化で時間を有効活用。ワークフローの効率化!
東北大学大学院理学研究科 有機化学第一研究室
東北大学大学院理学研究科、有機化学第一研究室の上田実教授は天然有機化合物のケミカルバイオロジーの研究をされています。伝統的な天然物有機化学を化学の新分野であるケミカルバイオロジーと融合した研究で、植物を対象に化学による生物制御・生物現象の化学的解明を目指しておられます。研究の性質上幅広い分野にかかわり多様な手法を駆使するため特に効率が求められますが、上田先生の研究室では Flash 自動精製装置 Isolera を3台と全自動ペプチド合成装置 Initiator+Alstra を導入し研究に活用されています。今回は上田先生と研究室の学生の方々に装置について感想をお聞きしました。
◆天然有機化合物のケミカルバイオロジー研究に導入
― まずご研究の内容についてお聞かせ下さい。
上田先生 :
天然有機化合物を使ったケミカルバイオロジーという分野です。天然物有機化学で複雑な化合物を合成したり構造決定したりする研究は日本では非常に盛んですが、そうした化合物を使って特に植物を対象に植物の生理機能を制御するような分子を開発していきたい。そのような研究をしています。
― Isoleraの導入の経緯ですが、生物と化学の両方にまたがる分野ゆえの苦労もあったのではないでしょうか。
上田先生:
研究の内容からして化合物の合成は大事ですが、私たちの研究では合成するだけでなくそれを生物評価する、例えばその物質は タンパク質や遺伝子をどう動かし植物自体にはどのように効くかなど生物評価をしなければなりません。つまり化学と生物学の両方の知識が 必要になります。そうなると化学と生物学の要素技術を習得するための時間をいかに短縮するかが重要となり、それができないと肝心の研究 をする時間が短くなってしまいます。
― そこでIsoleraを導入されたわけですね。どのような経緯で弊社の製品を選ばれたのでしょうか。
上田先生 :
お話したようなことが求められる研究ですので、かねてから研究の効率化について考えていました。そうしたなかで他社のカラムシステムを使う機会もありましたが、使いにくいということで学生の評判が良くなかった。それで自動装置は駄目かと思っていましたが、この研究室のOBでBiotage社のFlash自動精製装置を勧める人がいて試しに1台購入したところ非常に使いやすかった。何がいいかと言いますときちんと分離できること、特にTLCのRF値からグラジエント作成するプログラムがありますが、その通り精製することでしっかりと結果が出るのが画期的でした。
◆カラムワークに要する時間をFlash自動精製装置で省略
― その後台数も3台に増やし、カラムワークを自動精製装置に代えられましたがその狙いは。
上田先生 :
最初はパックドカラムを使うので費用がかかるかなと使うのをちょっと躊躇したりしていましたが、使い方を工夫すれば少し高いかあまり変わらないことが分かりました。それなら問題ないということで台数も3台に増やしてオープンカラムはやめることにしました。というのは企業に就職してもオープンカラムで化合物を分離している人は殆どいない。ですからそもそも大学でこれを教育する意味は既にあまりないと思っていたからです。
カラムの原理やTLCで分析することは大事ですが、極端に言えばカラムワーク自体は時間の無駄という考え方も成り立ちます。そこをカットすれば労働時間も短縮でき習熟に大変時間のかかるカラムワークを身につける必要がなくなる。これは圧倒的なメリットです。生物学的なことが少しでもできるように自動化で浮いた時間をそちらに振り向けたい。そうした観点からしてカラムワークを自動化するのが研究運営上の戦略です。
― イメージとしては、カラムワークは作業であって研究ではない。労働時間を極力減らしてその分を研究テーマに振り向けるということですね。
上田先生 :
その考え方に是非はあるかと思うのですけれど、私たちのように境界領域的な研究をやっていますと、カラムワークのような個々の要素技術というものを名人級のレベルで100%フルに使いこなせる必要はない、名人の70~80%使いこなせればいいと思っているのです。しかしそのくらいのスキルレベルにもっていくのすら大変なので、そこを自動精製装置でクリアできるというところが一番大きいと思うのです。
― 先生のおっしゃるように、カラムワークに習熟する必要なしというのは異論も多そうですね。
上田先生 :
確かに企業の人の話では自動精製装置を使っても数年に一度くらいは分離できない化合物が出てきて、そのときはカラムワークと聞いています。しかしそれはそういうことが得意な人がやればいい、別の方法を考えればいいと割り切っています。普通の実験技術をもった有機化学者が苦労して身につけた実験技術をFlash自動精製装置は完全に自動化できる。やはりこれは非常に画期的なことでそこが一番大きなメリットです。そのために初期投資をして導入するのも決して高くないという考え方です。
それと大学に残る学生もいますが殆どの学生は企業に入ります。そこでの即戦力として意識した場合、オープンカラムはできるが機械はさわれませんというより、入社した瞬間から機械を操作できて戦力としてやっていけるのもメリットではないかと思います。
◆意外なメリット、実験室の省スペースも実現
― 効率化と研究の成果が求められる時代になっていますが、そこでIsoleraは貢献できていますでしょうか?
上田先生 :
そういう意味で、Isoleraは精製を自動化できるだけでなく使用する溶媒量を減らすことも出来るので濃縮も楽になりますし、この二点でメリットが大きいというのが使っての実感です。そういう設計思想で作られているのでしょうけれどよくできています。カラムクロマトグラフィーの自動化ということは以前から考えていましたが、Flash自動精製装置で殆ど手間もかからずきちんと分離できる装置を作って頂いたと思っています。
― Flash自動精製装置を導入してコストなど他にメリットはございましたでしょうか。
上田先生 :
圧倒的に大きいのは時間と労力の削減です。 あと意外だったメリットに省スペースがあります。オープンカラムで試験管を並べて何人もやっているとスペースがなくなるが、Flash自動精製装置はそんなにスペースをとらない。 試験管を洗う手間と場所も節約できます。安全上の配慮は必要ですが実験室の省スペース化に貢献しています。東北大学には他にも使っている人がいると思いますが、いろいろな方に勧めています。
― どんどん勧めていただけると助かります(笑)
◆全自動ペプチド合成装置 Initiator+Alstraも導入し活用
― 弊社の全自動ペプチド合成装置Initiator+Alstraも導入して頂きましたがこちらの方はいかがでしょうか。導入されたきっかけですが、学生さんから何か要望があったのでしょうか。
上田先生 :
研究室では最近ペプチドをよく使っています。26残基くらいのペプチドに蛍光色素をつけたものをプローブとして使って活性試験をやっていますが、これは大変な作業です。
それをマニュアルで作っていましたが、ちょっとしんどくて外部受託合成会社に依頼したりしていました。ただ構造をすこし変化させたりしたい時などは、かなり手間がかかります。それで自動合成装置が必要という話になって、ここでもいろんな人から情報収集した結果、Initiator+Alstraということになりました。
実は他からもらった他社製の装置を10数年使っていましたが何分古いので機械が大きい。それが震災で壊れたので処分しましたが、最近はInitiator+Alstraが増えていると聞きます。
― ありがとうございます。使用頻度などはどうでしょうか?
上田先生 :
毎日というほどではないがよく使っています。ただプローブがなくなったらまとめて作るというようなやり方をしていますので、かなりハードに使うときとそうでないときと使う頻度はまちまちです。導入してからまだ数か月ですのでスキル的にはまだ慣れていないかもしれませんが、Initiator+Alstraが使えるようになってからペプチドを使ったテーマを4年生の学生に出しやすくなりました。
― ご研究の中で、Initiator+Alstraのブランチ機能を使用して環状ペプチド合成などは試されましたか?
上田先生 :
今のところは環状ペプチドはやっていませんが、スクリーニングするときに環状ペプチドを色々作らせて取り入れるのが今盛んになっていますので、今後テーマによってはあるかもしれません。
◆現場で使用されている学生さんの声
― 現場で実際装置を使っておられる学生の方々の意見もお聞かせください。
学生さん :
Isoleraは、自動で精製を行っている間、他のことができるため実験効率が上がりました。視覚的にUVで分取グラフを見ることができその強度も分かるので便利です。あとはリサイクル分取ができればいいですね。(笑)
学生さん :
10g以下のカラムもほしいです。
― 今後検討させていただきます。
学生さん :
サンプルのロード方法などでたまに質問があります。
― バイオタージが配布している冊子にその対処法が載せてありますので冊子のご希望がありましたらご遠慮なくお知らせ下さい。
― ペプチド合成装置Initiator+Alstraはいかがですか?
学生さん :
マニュアル合成より収率と純度が上がってHPLCが楽になりました。自動で合成を行っている間、他のことができ反応時間も短くて済むのがいいです。
学生さん :
導入前の手合成では速くて4日、他の実験とかやっていると5日かかり大体1週間単位だったのが、合成装置が入ってからは1日半くらいで済むのはすごいです!
― 弊社にはペプチド合成技術者もいますので、ご要望等はどんどんお伝えください。
― これからもいろいろとサポートさせていただきたいと思っております。本日はまことにありがとうございました。
インタビュー実施:2017年9月13日
PDFファイルダウンロード(1.8MB)
導入製品
全自動マイクロウェーブ ペプチド合成装置
Initiator+Alstra
URL:
https://www.biotage.co.jp/products_top/peptide-synthesis-purification/initiator_alstra/
フラッシュ自動精製装置
Isolera
URL:
https://www.biotage.co.jp/products_top/flash-purification/isolera_top/
導入機関
東北大学
1907年(明治40年)に東北帝国大学として創設。理学部の歴史は1911年(明治44年)に開設された「理科大学」に始まり、 1919年(大正8年)に学部制に改められ理学部となりました。 さらに1947年(昭和22年)に東北大学に改称され現在に至 っています。現在の理学部は数学科、物理学科、宇宙地球物理学科、化学科、地圏環境科学科、地球惑星物質科学科、生物学科の7つの学科を擁し、国内でも屈指の規 模の理学部として知られています。理学部・理学部研究科は青葉山キャンパス に他の理科系学部とともに立地しています。