液体クロマトグラフィーによる水質検査で
窒素吹き付け濃縮装置「TurboVap® LV」を活用
「TurboVap LV」新旧入れ替え導入
大分県薬剤師会検査センター 水質検査課
大分県薬剤師会検査センター 水質検査課では水道水の水質検査におけるサンプル濃縮のため、20年ほど前から「TurboVap LV」を活用しています。この度「TurboVap LV」の後継機が発売となり、新旧入れ替えで新型機を導入いただきました。今回は新旧「TurboVap LV」の比較について技師の安達加奈子さんにお話しを伺いました。
― 最初に、検査センターでのお仕事の内容についてお聞かせください。
安達さん :
私たち大分県薬剤師会検査センターでは、県内の水道水や食品、簡易専用水道、濃度計量証明などの検査を行っています。たとえば、水道水では、水道法により定められた水質基準を満たしているか定期的に検査をすることが必要ですし、学校の飲料水や水泳プールも「学校保健安全法」で同じように基準が定められ検査が必要となります。そうした検査を当検査センターが受託して行っており、そのほかにも河川水などの環境水や、事業所等の作業環境の検査、「おんせん県おおいた」ならではの温泉の成分分析といった、検査も受託しています。
検査センターのスタッフは40名ほどで、私自身の仕事は、水道水質検査で有機物の検査を行っています。
◆水道水の検査で TurboVap LV が活躍
― TurboVap LV を使われているのはどういった物質の検査ですか?
安達さん:
ABS(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)などの陰イオン界面活性剤と、農薬の検査です。
ABSは洗浄力が強いため工業用洗剤などに使われている場合があり、発泡性が強く、以前に環境汚染の原因となったため、検査の対象になっています。今はABSに代わって、自然界で分解されやすい界面活性剤が使われるようになっていて、水道水からABSが検出されることはほぼなくなりました。ただ、環境水の中には泡立っているものがたまにあって、そうしたサンプルを検査するとABSが検出されることがあります。
もう1つ TurboVap LV を使うのが農薬の測定で、水道水源や水道水中の農薬類の検査をしています。夏には田植えなどもあって、農薬の使用量が増える傾向があるので、農薬測定の依頼は夏場に集中します。
検査の手順としては、まずサンプルを固相抽出カラムで処理して検査対象の成分物質を溶出させます。それからTurboVap LVで溶出液を濃縮し、成分の分析機にはLC(液体クロマトグラフ)を使っています。
― 今回、TurboVap LVをご購入いただいた、きっかけは何でしょうか。
安達さん :
検査センターでは以前から、農薬検査の溶媒濃縮を行うために TurboVap LV の旧型機を使っていました。この旧型機は、水道水や、食品中の農薬検査の溶媒濃縮などに24年間使用してきましたが、さすがに、ガスの噴き出し口の詰まりによる濃縮ムラが出始め、メンテナンスしても改善されなかったので、ちょうど新型機が発売されたこともあり購入しました。
◆圧倒的に使いやすくなった新型TurboVap LV
― それまで使っていた旧製品と比較して、いかがでしたか。
安達さん :
全然違います。すごく良くなりました。違いが一番大きいのは、流量のグラジエント(調節)が自動でできるようになったことですね。溶媒の濃縮では、濃縮が進んで液面が下がってきたら、吹き出し口との距離が開いた分、ガスの圧力を上げるというグラジエントの操作をします。旧製品ではそれを手動で変更しなければなりませんでした。といいますか、旧製品を使っていたときは液面が下がってもガスの圧力を上げるということをしていなくて、「なかなか終わらないなあ」と思っていました(笑)。
濃縮は、試験管内液量5mlから2mlに減るまで行っています。旧製品では吹き付け時間を40分にセットしていましたが、40分経って蓋を開けて見てみると終わっていなくて、そこから10分追加して、それでもまだ終わっていなくて、また10分追加して、という感じで、液量を確かめながら1時間以上かけて濃縮していました。新製品だと自動でグラジエントをかけてくれるので、30分できれいに溶媒が飛ぶようになりました。「あともうちょっと」というサンプルがあったときだけ追加で濃縮しますが、それもタイマーを使って5分で終わりますから、以前と比べるとずっと簡単です。
グラジエント設定した濃縮の手順をメソッドとして保存できるので、作業をスタートするのも簡単ですし、私が自分用に作ったメソッドで他の人も同じことができるので、誰にでも作業を任せられるようになって、すごく楽になりました。
新機種では側面が透明になって、蓋を開けなくても中が見えるのも便利ですね。旧製品では中が見えなかったので、蓋を開けて1本1本取り出して確認しなければなりませんでした。それと比べると効率が全然違います。
濃縮作業が終わると、ウォーターバスのライトの色が緑色に変わり、遠目からも終了したことがわかるのも助かります。旧機種では「ピー、ピー」というブザー音で終わったことを知らせる方式でしたが、その音が検査室から廊下の一番向こうまで聞こえるくらい大きくて(笑)。蓋を開けるまで鳴り止まないので、昼休みの間ずっと鳴っていたこともありました。新機種にも終了を知らせるブザーはありますが、タッチパネルで音量を調節できますし、音を消すこともできます。今は、濃縮が終わったことはライトの色だけでわかるので音を消して使っています。
◆作業効率が大幅アップしました
安達さん :
他にもいろいろよくなった点があります。まず流量の設定などの操作がタッチパネルでできるようになったこと。タッチパネルは電子部品なので故障しないか少し気にはなりますが、使いやすいです。窒素吹き出し口の位置調整ができるのもいいですね。おかげで濃縮のムラも少なくなりました。
以前は窒素ボンベの元栓を開け忘れて、セットしたつもりなのに蓋を開けてみたら全然濃縮されていなかった、ということがありましたが、今は元栓を開け忘れると「ピー」と鳴って知らせてくれるので、助かっています。栓の開け忘れで作業が遅れることはなくなりました。
旧製品では濃縮作業中に蓋を開けて進み具合を確認しないといけませんでしたが、今は溶媒の減り方が外からも見えるし、自動でグラジエントがかかってきっちり30分で終わるので、その間に他の作業ができて、時間の節約になります。
サンプル数がそれほど多くないときは、週に1回、まとめて検査をしています。以前のTurboVap LVでは濃縮だけで1時間以上かかったので、だいたい当日は残業していました。新しいTurboVap LVでは30分で濃縮が終わるので定時に帰れるようになり、残業がなくなりました。
新製品ではウォーターバスの下部に水抜き用のドレインポートがついているのも便利です。旧製品にはドレインポートがなかったので、バケツで汲み出して水抜きをしていました。今はドレインポートがあるので、毎回使用後に水を抜いて、次に使うときには新たに入れ直しています。水抜きしやすいし、掃除もしやすいので、きれいに使おうという気になります。
― 実際にお使いになられて感じた、TurboVap LVへのご意見、ご要望をお聞かせください。
安達さん :
ウォーターバスの上の縁のところに、水抜き用のドレインがあるとうれしいですね。一度、水道から水を入れているときに他の作業をしていて目を離してしまい、水がウォーターバスから滝のように溢れて、周りを水浸しにしてしまいました。溢れそうになったときに水が排水されるドレインがあると助かります。
― 貴重なご意見いただき有難うございます。本日は長時間にわたり、ありがとうございました。
インタビュー実施:2017年11月
PDFファイルダウンロード(1.8MB)
導入製品
窒素吹付高速パラレル濃縮装置 TurboVap® LV
URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/evaporation/tvlv/
独自のガスボルテックスシアリング技術により、複数のサンプルのエバポレーションを同時に且つ高速に行う窒素吹付式の濃縮装置です。1.5mLバイアルからφ30×165mmまでの試験管用にデザインされており、試験管の大きさに応じて48サンプルまたは24サンプルまで、同時に濃縮することができます。
導入機関
大分県薬剤師会検査センター
URL: http://www.oitakensa.jp/index.html
大分県薬剤師会検査センターは、大分県の公衆衛生の向上と生活環境の改善に寄与することを目的に昭和56年2月に設立されました。以来、各種法令等に基づく指定・登録検査機関として、水道水質検査・簡易専用水道検査、医薬品・食品検査、濃度計量証明(環境測定分析)、温泉分析、作業環境測定、放射線検査など幅広い分野に携わっており、高度化・多様化する試験検査に的確にお応えできるよう最新鋭の分析機器を備えるとともに、ISO-9001や水道GLPの認証取得・精度管理等を通して常に技術の向上と信頼性確保に努めています。