精製作業の自動化によって
有用な時間をつくり出す

~創薬研究にフラッシュ自動精製装置「Isolera」を活用~

高崎健康福祉大学 薬学部
高崎健康福祉大学 薬学部

高崎健康福祉大学の薬学部は、実践的な薬学研究を身につけるため、専門的な教育施設・設備を整備。創薬研究を実施するためにバイオタージのフラッシュ自動精製装置「Isolera」を導入しています。教育と研究活動の両立でお忙しい中、自動化によって時間の有効活用が図られているとご評価いただいています。今回は実際に装置を使用されている、薬学部薬学科創薬化学系の岩﨑源司教授(有機合成化学研究室)と有機合成化学研究室の須藤豊講師、分子設計化学研究室の山際教之教授、生命有機化学担当の渡辺和樹講師の方々にお話をうかがいました。

― まず、高崎健康福祉大学の薬学部についてご紹介ください。

高崎健康福祉大学 薬学部岩﨑先生 :
薬学部の開設は平成18年です。薬学6年制教育として、創薬研究を目指す基礎薬学と、生命尊重の使命感、倫理感を持った医療人としての薬剤師を育てる医療薬学との連携、統合を目指した教育システムとしてスタートしました。創薬や医療の現場で自らが問題を発見し、解決する能力を持った人材養成を目指しています。大学としてまだ若く、規模もそれほど大きくないですから、一人ひとりに目が行き届くのがうちの教育の特徴だと思いますね。

― では、「Isolera」をご利用いただいている有機合成分野と天然物化学分野でのご研究内容について簡単にご説明いただけますか。

高崎健康福祉大学 薬学部須藤先生 :
有機合成化学研究室で現在取り組んでいる研究テーマの一つが感染症治療薬開発に向けた創薬支援プロジェクトです。三大感染症(結核・エイズ・マラリア)をはじめ、アフリカや南アメリカ等の寄生虫に起因するジャーガス病などに対する新薬のもとになるような化合物を探索しています。

山際先生 :
わたしの所属は分子設計化学研究室で、反応に関する仕事が中心です。医薬品合成に向けたより効率的な合成ルートを提供すべく、新規素反応の開発を目指し研究を行っています。良い触媒、反応条件、試薬などを見つけて、それを何らかの有用化合物の合成に役立てるためのプロセスケミストリーが専門です。とくに、官能基選択性や位置選択性、立体選択性を高度に実現する反応系の探索に力を入れており、その過程でバイオタージのマイクロウェーブ合成装置「Initiator」を利用して、水エタノールと酸触媒を使ったジフェニルメチル基の脱離反応をマイクロウェーブ加熱によって進行させることに成功しています。

渡辺先生 :
わたしは、生命有機化学担当として天然物化学に取り組んでいます。天然物にもいろいろありますが植物を中心に医薬品のタネになる有用な化合物の探索、食品分野では新規の機能性を持つ成分を発見することを行っております。現在は、とくに地元で採れる植物をメインにしていまして、化学成分の分析や分離・精製が仕事の大部分を占めますので、「Isolera」でずいぶん効率化させていただいています。

◆自動化で時間を有効活用、教育的配慮は必要

― わかりました。現在、薬学部の中で「Isolera」を3台ご使用いただいていますが、導入の経緯を教えてください。

山際先生 :
もともと学生に対しては、カラムを使って手作業で分けるのも教育だと思っていたのですが、1台入れてみると、これがすごく便利で、いまは手詰めのカラムはなくなりました(笑い)。

高崎健康福祉大学 薬学部

岩﨑先生 :
僕も学生のころはそのように教わった世代です。ただ、最も時間をとられるのはやはり精製です。競合の激しいグローバル製薬企業に入って、限られた人員と限られた時間と限られた予算の中で良いものを創出していくためには、ラボを機械化し生産性を上げることが重要なテーマになりました。確かに、大学での教育という観点からみると、こういう機械をブラックボックスのように使ってはダメで、学生には何をどのように機械化しているのか、そもそものところをしっかり教えなければいけないと思っています。

― なるほど。本来の研究の頭を使うところで時間を用いて、体を動かすところは弊社のような装置で効率化しようという考え方が広がって、確かに一時期から大学での導入が増えたと感じています。ところで、導入に当たっては他社製品との比較もされましたでしょうか。

高崎健康福祉大学 薬学部山際先生 :
そうですね。その当時(2009年ごろ)の比較ですが、やはり一体型でコンパクトだったことが大きかったです。他社製品はPCが別になっていたのですね。カートリッジもしっかりして取り付けやすかったなど、総合的に優れていました。

岩﨑先生 :
気軽に買える値段でもないのですが、若い先生たちが現場で実際に使って評価しているので、順次増やしていくことになりましたね。

須藤先生 :
そうですね。3年ぐらいの間に3台を入れていったと思います。

◆期待通りの性能、学生が操作しても安全

― 実際に使ってみて、「Isolera」のどういうところが気に入っておられますか。

高崎健康福祉大学 薬学部渡辺先生 :
わたしは逆相系をよく使うのですが、この場合オープンカラムだと、もの凄く時間がかかります。最初カラムのコンディショニングに手間取ったのですが、サポートしていただいてからは、期待通りの性能で分離しますし、精製時間も短く重宝しています。

須藤先生 :
うちの場合は、研究のための時間がそんなに取れません。学生も国家試験の勉強のための時間をつくることが大切なので、研究のための実験を学生にやらせるということも、無闇にはできません。それで、研究は自分でやることが多いですから、何かの作業で時間が拘束されると、他の仕事をする時間が取れなくなり、最終的には研究の時 間をつくることも難しくなってしまいます。その意 味で、「Isolera」を使うことで、空き時間をつくれたことがうれしいですね。
「Isolera」にサンプルをかけて放っておけばいいわけですから、その30分なり1時間なりを他のことに用いることができます。

山際先生 :
ちょっと別の角度からの話ですが、手カラムでやっていた時代はヒートポンプを使っていたので、扱いに危険なところがありました。
それで、学生がカラム操作をしているときに、危ないことをしていないか、うかつに目を離すことはできませんでした。「Isolera」なら間違った操作をしたとしても、危ないことにはなりません。基本的に任せておいても大丈夫だというのは精神的にも楽で、非常に助かっています。

― ありがとうございます。逆に不都合な点、ご要望などはございますか。

須藤先生 :
カラムの種類がもう少しいろいろあるとよいかなという気はします。あと、マスと一体化した機種は少し気になりますね。それ以外では、もっと安くしてくれればありがたいです(笑い)。

山際先生 :
細かいことなのですが、ラックの試験管が尽きてしまった時に,新しいのを補充するように促すメッセージが出て、それがクロマトを覆い隠してしまうので、煩わしいですね。目的のピークがで終わっていれば、新しいラックをセットする必要がないので。あと、うっかり試験管をセットして平衡化したあと、少し小さい試験管に変えたいなという時もあるのですが、もう止まらないんですよね。平衡化した時点でスタートしているんだと思いますが、まだ始まってないんだから何とかならないのと思うこともあります(笑い)。

須藤先生 :
それはうっかりがないように気をつけるしかないですよ(笑い)。また、わたしが経験したことでは、ラックがちょっとずれているのに気づかないで、こぼれてしまうことがありました。まっすぐに置けるようなつくりになっていれば、そういうことは防げると思います。そのほか、試験管は1000本単位とかじゃなく、もうちょっと少量で注文できたらいいのですが。

― その試験管はディスポーザブル式なので、まとめてご提供しています。わざわざ洗って再利用するよりも、効率よく使い捨てていただいてかまいません。今日はいろいろ貴重なご意見・ご感想などをいただき、たいへんありがとうございました。

高崎健康福祉大学 薬学部

インタビュー実施:2017年7月
PDFファイルダウンロード(2.21MB)

導入製品

フラッシュ自動精製装置
Isolera
マイクロウェーブ合成装置
Initiator

URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/

有機合成分野で圧倒的な人気と信頼を得ている Biotage 主力製品。
コンパクトでパワフルな装置は、研究スピードと効率UPに貢献します。

導入機関

高崎健康福祉大学

URL: http://www.takasaki-u.ac.jp/

高崎健康福祉大学は、昭和11年、須藤和洋裁女学院として創設されました。昭和42年に群馬女子短期大学となり、平成13年に現在の高崎健康福祉大学を開学しました。医療・福祉・教育の分野を専門とする4学部7学科を擁しており、それら「人をささえる分野」に特化した総合大学として、各専門分野の学びおよび資格取得と、専門を超えて1人の人間の幸せをトータルに見つめる包括的な視野を重視されています。

創設:昭和11年
改称・設立:平成13年
教職員数:約300名
学生数:約2500名(うち薬学部約600名)