創薬研究でIsolera、Initiator+8、ISOLUTE
―作業効率を考え3種を活用
産学連携による革新的な新薬の創出を目指す
~フラッシュ精製装置 Isolera、マイクロウェーブ合成装置Initiator+8、
サンプル前処理 ISOLUTE~
ラクオリア創薬株式会社 創薬研究部門化学研究部
ラクオリア創薬株式会社の創薬研究部門化学研究部では、バイオタージのフラッシュ精製装置 Isolera、マイクロウェーブ合成装置 Initiator+8、サンプル前処理 ISOLUTE をご活用いただいております。今回は、同部創薬化学グループの大見仁研究員、同部計算化学グループの森田幹雄研究員、そして総務部の安藤幸司部長にお話をうかがいました。
― まず、ラクオリア創薬の事業概要について教えてください。
大見研究員 :
ラクオリア創薬は、アメリカの製薬会社 Pfizer Inc.の日本法人であるファイザー株式会社の中央研究所を前身としています。2007年1月にPfizer Inc.による世界的な研究体制の見直しが行われ、中央研究所の閉鎖が決定されましたが、当時の所長及び一部の従業員が中心となり、研究所の主たる機能を継承して研究開発型の創薬ベンチャー企業として独立しました。2008年2月に弊社を設立し、同年7月に事業を開始しました。2011年7月にJASDAQ市場グロースに上場しています。
― どうして「化学研究部」は名古屋大学内で研究しておられるのですか?
大見研究員 :
弊社は2014年から2015年にかけて、名古屋大学に3つの産学協同研究部門・講座を設置し、研究開発拠点を名古屋大学内に移転しました。アカデミアとのコラボレーションを積極的に活用し、臨床現場ならびに医薬品市場が求めるニーズに応じた「革新的な新薬の種(新薬候補化合物)」を創出することを目指しています。名古屋大学・ラクオリア創薬発の「新薬の種」を国内・海外の製薬会社やバイオベンチャーにライセンスアウトして収益を上げることが目標ですが、将来的には、名古屋大学を中心とした中部圏(地域)を米国のシリコンバレーに見られるような、革新的な新薬を創成するハブとすることを目指しています。
名古屋大学と弊社は現在までに8つのテーマで共同研究を実施しており、また年3回、新たなテーマの学内公募も実施しています。
― なるほど。では、御社の強みと、研究部でのお仕事について、さらに詳しくご説明いただけますか。
大見研究員 :
はい。まず弊社は、国内バイオベンチャートップクラスの創薬インフラを持っています。豊富な化合物ライブラリーを保有し、SCARAロボットシステムを用いたハイスループットスクリーニング(HTS)により、約38万個のライブラリー化合物の中からシード化合物を迅速に選別することが可能です。
また化合物の合成では、「キャップ」と名付けた精製及び分析の自動化システム(Centralized Analysis & Purification : CAP)を確立することで、週150個の新規化合物のDMSO溶液が供給可能となり、効率的なSAR(構造活性相関)研究を少人数で実現しています。
「化合物のデザイン・合成」から「精製・純度確認」へ、そこからさらに「in vitroの薬理・安全性・代謝試験」という工程を2週間サイクルで展開して得られる豊富な薬理データを基にSAR研究を進めています。
私は主に「化合物のデザイン・合成」を担当しており、弊社の強みである「イオンチャネル創薬」に取り組んでいます。
◆現在の業務に合わせて機種変更・効率化―Initiator+Eight
― マイクロウェーブは、以前「Initiator+ Sixty」という、60検体オートサンプラータイプでしたが、現在は「Initiator+Eight」ですね。以前と比べて使い勝手はいかがですか?
大見研究員 :
はい。マイクロウェーブについても、ファイザー時代から使っていたのでそのまま引き継いでいます(笑)。
以前使っていた「Sixty」ですが、耐久年数も過ぎて、アームの動きのトラブルが目立ってきたのです。そういう点から、次は動きが少ない「Eight」に変えました。
そもそも現在、弊社では60本も掛けることはなく、6~8本が最も効率的ですので、「Sixty」は必要ないだろうということで「Eight」に決めました。
弊社の合成戦略として、「たくさん作る」というよりも、SARから最も有望と考えられる化合物を「ねらって作る」という方法に変えていったという表現になるでしょうか。多くのリソースをかけずに、いかに効率的にデータを取得するか、を常に考えていますね。
森田研究員 :
たしかに、やみくもに作ると評価するのも大変ですから。目的とする化合物を絞って良いものを作ろうということは考えますよね。
― まさに御社の今のサイクルに合った形なのですね。以前の機種と比べて良くなった点などはございますか。
大見研究員 :
「Initiator+8」は、タッチパネルに変わって非常に使いやすくなりました。外見で変わった点と言えばそのくらいですけど、使いやすさは大事ですよね。
◆独自の逆相精製処理システム「CAPシステム」の前処理にISOLUTEを活用
― ISOLUTEもファイザー時代からお使い頂いていますが、主にどのような段階で使用されているのでしょうか?
大見研究員 :
最初にお話した弊社のCAPシステム…逆相システムの精製処理の前処理として使っています。
具体的には、反応をかけて抽出した粗生成物を、普通ならシリカゲルカラム精製(順相で精製)するところを、代わりにISOLUTEを利用しています。その後、逆相のHPLCで精製するということです。
― イメージですが、マイクロウェーブで合成したあと、キャッチアンドリリースで使っておられるのかな?と思っていたのですが・・・。
大見研究員 :
もちろんそのような形で使用することもありますが、通常の合成反応の際にも使っています。最後、液液で抽出してきた酸性あるいは塩基性化合物の物性に合わせ、固相抽出のPE-AX、SCX-2で粗精製するという方法です。
森田研究員 :
実際によくあるパターンですよね。
原料が限られている場合など、化合物量を減らしてでも5個を一気に作ってしまいたい時など、スケールが小さくなるので、シリカゲルカラムで精製するのがなかなか難しいんですよね。その場合はこちらの方法だと便利なんです。
大見研究員 :
弊社の場合は、最終5mg~15mgぐらいの精製物があれば薬理評価ができるので、シリカゲルカラムを使わなくても、PE-AXやSCX-2樹脂を使えば容易に粗精製ができるわけです。
むしろそのほうが楽ですし、効率的ですね。
◆インターフェースの使いやすさとデザインで、フラッシュ精製装置「Isolera」を活用
安藤部長 :
当初は、もっと前のバージョンを使っていましたよね。Horizon、SP1…。
大見研究員 :
そうですね。先ほども説明しましたが、前身のファイザー時代から使用していたバイオタージさんの機器を、そのままバージョンアップして使わせていただいています。
Isoleraについては、特にFlashカラムの使いやすさの面からバイオタージさんの製品を優先しています。他の研究員たちも「インターフェースが使いやすい」と言っていますね。
それから、装置のデザインですね。これも他社と大きく差をつけた点だと思います。
ラボの構成にあたって、やはりデザインも重要なので。働きやすい環境を作るという点で、装置の外観も大事ですね。
森田研究員 :
それにIsoleraはコンパクトで、一体型なので使いやすいです。
◆タッチパネルで操作性アップ、処理幅も広がったIsolera
― 以前の装置と比べて良くなったと感じる点はどういうところでしょうか?
森田研究員 :
一番は操作性ですね。タッチパネルですごく使いやすくなったと思います。そこが一番大きいポイントだと思います。
昔は設定操作も一画面で見えない部分がありましたが、今はタブを動かすだけでわかるし、その点は大きな違いですね。
あと、昔は大きなスケールのものは他社の装置を使っていました。ですが、現在はIsoleraの性能が向上したので、この1台で、ある程度スケールアップに対応できるようになりましたね。
◆各機種のネット対応は、時間・作業効率化に必須
― 先その他、弊社および弊社の装置に対するご意見、ご要望などございましたら何でもどうぞ。
大見研究員 :
要望ではありませんが、Isoleraがネットで見られるようになったのは便利だと思いますね。Initiatorもいずれネットに繋ごうと思っています。
特にIsoleraに関しては、いま、安全衛生上、ラボと居室を分けている会社が多いと思うのですが、そういう時にインターネットで状況確認できて、操作もできるのは非常に便利ですね。
森田研究員 :
ラボと居室を行き来している合間にネットで状況を確認したり、デスクで他の作業している時も見られるので、「そろそろ行かなきゃ」という感じで、時間も効率よく使えますよね。
仕事の効率化という面でも非常に役立つと感じます。
安藤部長 :
Isoleraはどこの研究室にも必ず1台はあるような、汎用性の高い装置になってきました。
今後は、システムとしての堅牢性とか、分取のスピード、メンテナンスのしやすさ、安全性などを追及していっていただけると、私たちとしても有難いですね。
これからもバイオタージさんの装置を期待しています。
― 数多くの貴重なご意見は、今後の開発の参考にさせていただきたいと存じます。本日はお忙しいところ長時間ありがとうございました。
インタビュー実施:2017年5月
PDFファイルダウンロード(1.24MB)
導入製品
フラッシュ自動精製装置
Isolera
URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/flash-purification/isolera_top/
精製に対するケミストの要望を最大限取り入れた、コンパクトな最新のフラッシュ精製システムです。可変2波長UV検出で化合物認知を確実に行い、流速 1~200mL/min の パワフルな送液を実現することで、効率的な精製、高純度での化合物回収を行います。
Initiator+8(Eight)
URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/microwave-synthesis-work-up/ini_puls/
精製に対するケミストの要望を最大限取り入れた、コンパクトな最新のフラッシュ精製システムです。可変2波長UV検出で化合物認知を確実に行い、流速 1~200mL/min のパワフルな送液を実現することで、効率的な精製、高純度での化合物回収を行います。
サンプル前処理
ISOLUTE
URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/sample-preparation-products/spe_top/
バイオタージの固相抽出カラ ム(SPE)製品は、ISOLUTERブランドとして世界中の検査機関で採用されています。製品は、96-wellを含む多様なカラムサイズおよび充填量でのご提供が可能です。非極性タイプ、混合タイプ、およびイオン交換タイプなど多様なメディアを取り揃えています。
導入機関
ラクオリア創薬株式会社
ラクオリア創薬は、名古屋市に研究拠点を有し、最先端の生命科学技術を活用し、医療分野においてニーズの高い疾患領域での新たな医薬品を生み出す「グローバル創薬イノベーター」を目指す研究開発型のベンチャー企業です。独自のオープン・イノベーションから革新的な新薬の種となる低分子化合物医薬を創り出し、製薬会社等と共同研究あるいはライセンスアウト(知的財産権の使用許諾契約)により、真に価値ある新たな治療薬を患者さんに届けることをその使命としています。ラクオリア創薬のビジョン「私たちは創薬を通じて健康と幸せに貢献し、人々の心に陽をもたらします」の実現に向けて邁進してまいります。
設 立:2008年2月
資本金:22億3,758万円
従業員数:55名(2017年5月1日現在)