食品の安心・安全のために

~ ドーナツのアクリルアミド分析に「ISOLUTE SLE +」を活用 ~

株式会社ダスキン

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インタビューにご協力いただいた竹本真悠子さん(左)、武内沙郁さん(中)、上田雅博さん(右)

株式会社ダスキンでは、自社製品の安全管理のため商品検査センターを設けています。中でも安全性・分析試験室は商品全般の安全性を理化学的に分析する専門部署で、ミスタードーナツ商品に含まれるアクリルアミドの分析・測定にバイオタージの「ISOLUTE SLE +」を活用しています。今回は、同センター部長の大野智史さんと安全性・分析試験室の上田雅博さんにアクリルアミドの分析について、お話をうかがいました。

― 最初に、御社の業務内容と商品検査センターの業務についてご説明いただけますか。

株式会社ダスキン大野部長 :
では私からお話いたします。当社ダスキンは、マットやモップなどダストコントロール商品のレンタルを基幹的な事業としております。それに加えて、ミスタードーナツを中心に食品分野にも事業展開しております。

その中で我々の「商品検査センター」は、お客様に提供する商品の安全・安心をしっかりと検査する部門として設立されました。当社がお客様に提供する商品に関しては、すべて当センターの「承認・検査済」を取らないと出せないシステムで、社内での第三者機関的な位置づけとなっています。
各事業部の中の商品開発部門とは異なる部署で、担当役員も全部異なっております。

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大野智史さん

当センターには3つのグループ(2室)があります。まず、特に形のある商品のリスク評価をするグループ(信頼性・使用価値試験室)、次に微生物系で衛生的な見地でものを見るグループ、そして上田を中心とした理化学的分析をするグループ(安全性・分析試験室)です。

安全性・分析試験室は、現在特に食品系の業務の比重が高くなっています。
たとえば、ミスタードーナツで取り扱う機材・備品の安全性を法に照らして検査すること、また、実際取り扱われる食材の成分等の検査業務も当グループのメンバーが携わっています。

◆全事業部に厳しく。商品検査センターは第三者的機関として独立

― 多岐にわたる業務をされるのですね。商品検査センターが第三者機関的な部門として確立されたきっかけは何かあるのでしょうか?

大野部長 :
最初は開発研究所内の一部署でした。どちらかといえば事業部寄りで、商品開発のフォローをする部署でした。ところが、十数年前に「肉まん」に国内では無認可の添加物が含まれていたという問題が起こりました。そこから品質保証の確立という意識が高まり、2001年頃、当センターは独立して今の位置づけになりました。

― なるほど、非常に重要な部署なのですね。では次に実際の業務についてうかがいたいと思います。アクリルアミド検査に着手するきっかけをお聞きしたいのですが。

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上田雅博さん

上田さん :
アクリルアミドについては、具体的には2~3年前、「ミスタードーナツ事業本部」の品質保証部門から、ドーナツ主要10品目に対してアクリルアミドを測定してほしいと依頼が来たのが最初です。
その頃、農林水産省から食品関連事業者向けに『食品中のアクリルアミドを低減するための指針』(2013年11月27日)が公表されました。それを受けて品質保証部門から「自社製品は大丈夫か?」ということで確認したことがきっかけです。

― そして、その分析法開発に取り組まれたわけですね。

上田さん :
そうです。前処理については、最初はQuEChERS法から試しました。機器メーカーさんからアクリルアミド用アプリケーションが出ていたのでまずは標準溶液で試しましたが良好な回収率が得られなかったので、これはもう使えないなと思い断念しました。

測定が上手くいかない時は、様々なメーカーさんに相談してアプリケーション資料を持ってきてもらっています。QuEChERS法の次は、別のメーカーさんの紹介でSLE法を試しました。ところが、溶媒抽出後に窒素で濃縮すると、どうしても白濁するんです。

― 白濁の原因は何だったのでしょうか?

上田さん :
何度もメーカーさんに問い合わせ様々な検証実験を行いましたが、白濁の原因は結局わかりませんでした。
他にも、2連結のSPE法も試しましたが、良好な回収率が得られませんでした。それで、アクリルアミド測定はもうあきらめようかと思っていたのです。

◆失敗続き…。試行錯誤の末に見つけたSLE

― そうだったのですか。では弊社のISOLUTE SLE+を使用されたきっかけというのは?

株式会社ダスキン上田さん :
たまたまでした(笑)。インターネットでバイオタージさんを見つけたのです。

― ウェブに載せていてよかったです。試されて、いかがでしたか?

最初は、白濁はしなかったのですが、良好な回収率が得られませんでした。それで何度か技術の方とやりとりをしているうちに、解決しましたね。良好な回収率が得られました。

― 上田様がこれまでに使われた前処理製品と比較して、ISOLUTE SLE+はいかがですか?

上田さん :
ISOLUTE SLE+はコンディショニングしなくていいので楽ですね。
自分で組立てたカラムや通常の固相カートリッジでは、コンディショニングが必要でしたが、それが無いですからね。
かなり手間は少ないので楽ですね。

― ISOLUTE SLE+による分析法開発は順調に進んだのでしょうか?

上田さん :
それが、かなり色々と試しました。バイオタージさんのアプリケーションはポテトチップスでのアクリルアミド分析ですよね。
弊社はドーナツなのでもっと油分が多いのです。だから、ポテトチップスの条件でやると上層に固形の油層ができて、液層が全く取れなくなるのですよ。なので、バイオタージさんにどうしたら良いか聞いて、いくつかアドバイスももらいましたが・・・全くダメでした(笑)。

― お役に立たず申し訳ございませんでした。その後、どうされたのでしょうか?

上田さん :
固形の油層を溶解するにはヘキサンを用いればいいのではないかと思って、ヘキサンを追加し抽出操作を試みました。

― 油だけを取って、水層の方をアプライしていただいたのですね。

上田さん :
そうです。そして、妥当性評価を実施し標準作業手順書を作成しました。弊社のドーナツとコーヒー、それと大手コンビニ3社のドーナツとコーヒーについて試験を行いました。 次は外部技能試験を受けようと考えているところです。

株式会社ダスキン

― ご検討いただきありがとうございました。弊社に対してご要望などはございますか?

上田さん :
バイオタージさんに限りませんが、アプリケーション資料はもっと詳細に書いてほしいと思います。今回の検討でも何度か不明点について問い合わせました。日本語が望ましいですが英語でもいいので、論文くらいに詳細だとありがたいです。

株式会社ダスキン― そうですね。担当部門に伝えます。最後に、今後の分析法開発についてご計画等お聞かせいただけますか?

上田さん :
弊社の「ヘルス&ビューティー」からの依頼で、コラーゲンとローヤルゼリー飲料中のビタミン分析があります。今は時間がなく外部に出している状態なので、これをなんとか内製化できないかと思っています。
内製化する際には、公定法とは異なりますが液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS/MS)で、前処理操作なしに一斉分析できないか、論文などを参考に検討しようと思っています。
しかし、MS検出器に負担をなるべくかけたくないですから、前処理操作は必要になるとは思います。
今は、LC/MS/MSの機器条件を検討しているところです。

― 本日はご多忙のところお時間をいただき、誠にありがとうございました。

インタビュー実施:2016年8月
PDFファイルダウンロード(2MB)

導入製品

生体サンプル前処理用珪藻土
ISOLUTE SLE+

URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/sample-preparation-products/tn_sle/

ISOLUTE SLE+ は従来の液液抽出の代替えとなる前処理製品です。定量分析の前処理を目的として最適化された珪藻土が充填されており、従来の液液抽出の利点を生かし、欠点を改善した”振らない液液抽出”を可能にします。
一般的なシリンジカラムで提供されるため、前処理の自動化にも適しています。

導入機関

株式会社ダスキン

URL: http://www.duskin.co.jp/

株式会社ダスキンは、環境衛生とミスタードーナツをはじめとしたフードサービスまで多岐にわたり、また日本でいち早くフランチャイズシステムをとり入れ、創業期からフランチャイズビジネスを確立したことでも知られています。今ではその独自のノウハウは海外にも展開され、定期訪問レンタルサービスから高度なプロの技術サービス、店舗販売によるフードサービスまで、様々な業態でフランチャイズビジネスを展開しています。
創業年:1963 年
資本金:113 億円
本社所在地:大阪府吹田市
従業員:1960 名(単体)
(2016 年3月現在)

(webサイト「会社概要」より部分引用)