積水メディカル株式会社 創薬支援センター

放射性標識化合物を用いた
薬物動態試験をサポート

-非臨床生体試料調整に窒素吹付濃縮装置「TurboVap LV」を活用-

積水メディカル株式会社 創薬支援センター
積水メディカル株式会社 創薬支援センター

積水メディカル株式会社の創薬支援センターは、民間初のラジオアイソトープ実験室を設置した機関で、現在はCRO(医薬品開発受託機関)として薬物動態試験を実施しています。動物実験に基づく生体試料の分析に、バイオタージの窒素吹付高速パラレル濃縮装置「TurboVap LV」を20年以上ご愛用され、定量分析の前処理には不可欠な装置だとご評価いただいています。今回は、創薬支援センター の研究員である城下友義さんにお話をうかがいました。

積水メディカル株式会社 創薬支援センター─ まず最初に、御社の概要を教えてください。

城下さん :
会社全体としては、検査事業と医薬事業、創薬支援事業の3つに分かれています。メインとなる検査事業部では体外診断薬や真空採血管の開発・製造・販売を行っています。医薬事業部は医薬品の原薬、医薬中間体を製造して製薬メーカーに提供しています。

創薬支援事業部はいわゆるCRO(医薬品開発受託機 関)業務を行っていて、ここ東海村が拠点です。特徴は、放射性同位元素(RI)を使って国内で初めて受託試験を行った機関だということです。

RIで標識した医薬品を動物に投与し、その体内分布、薬物動態・代謝を調べるのが仕事です。その試験を一貫して受託するため、薬物を合成するグループ、動物に投与・試料採取するグループ、それぞれの生体試料を分析するグループから構成されます。

積水メディカル株式会社 創薬支援センター
積水メディカル株式会社
創薬支援センター 城下友義さん

最近は、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS /MS)で分析するケースも増えており、そちらはRI標識する必要なく分析することができます。

この研究所では、RIを使用する管理実験区域と、そうではない実験区域に区分されていまして、それぞれHotエリアとColdエリアという呼び方をしています。

◆RI標識で体内動態を網羅的分析、動物からヒトへの挑戦も

─ RIの関連をHotと呼ぶのですね。LC-MS/MSが登場してRI標識のいらない分析が増えているのでしょうか?

城下さん :
いいえ、そうではありません。両方必要です。LC-MS/MSでは細かいところまでみることが困難です。代謝物をすべて網羅的にみたい場合などは、RIで標識したものの挙動を調べてその化合物がどんな形をしているかを推定していく必要があります。

特に、弊社では昨年あたりからヒトHot試験の受託も始めました。海外では多いのですが、人体に影響がない微量のRI標識物を投与してその動態を確認するものです。がん検査で行われるPET(陽電子放射断層撮影)も、ヒトに対するHot試験の一例ですね。

一方、私たちが行うCold試験では、マイクロドーズ試験に力を入れています。これもごく微量の薬物を投与して動態をみていくもので、測定器の検出限界に近いところでの微量分析に特化しています。毒性が問題にならないほどの微量であり、それだけサンプルの使用量も少ないわけですから、経済的なメリットもありますね。

◆試験管パラレル濃縮ならTurboVap LV

─ では、TurboVap LVをお使いの業務について教えてください。

城下さん :
動物から採取した試料を抽出して濃縮・乾固したものをHPLCやLC-MS/MSにかけることになりますが、臓器から全抽出をかけたりするため抽出後は溶媒を含め10mL、20mLという量のサンプルがでてきてしまいます。そこで、その量の溶媒を留去するためにはエバポレーターを使うか、TurboVap LVを使うかという選択肢になります。

定性試験だと本数が少ないのでどちらでも対応可能ですが、定量試験ではサンプル数が多くなりますので、50サンプルまで一度に溶媒留去できるTurboVap LVが便利です。マイクロプレートよりも試験管の方が取り違えなどの間違いが起きにくくハンドリングしやすいので、試験管に対応したTurboVap LVはとてもありがたいです。

積水メディカル株式会社 創薬支援センター
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─ TurboVap LVは長年お使いいただいていますね。

城下さん :
そうですね。Zymark時代に 導入しましたので、20年以上になります。以前は濃縮遠心器が主流でしたが、時間がかかるのが難点でした。窒素を吹付ける方が溶媒が短時間で飛ばせますし、処理するサンプル量も多いのでTurboVap LVを導入したのだと思います。熱に弱い化合物を扱う場合などのために濃縮遠心器も数台残していますが、基本的にはほとんど全てのサンプルをTurboVap LVで濃縮・乾固して います。そのほかに、ロータリーエバポレーターもありますが、1度に1本しか飛ばせません。ただ、ロータリーエバポレーターは100mL程度の大量でも飛ばせますので、目的に応じてTurboVap LVと使い分けています。

積水メディカル株式会社 創薬支援センター─ 対象がHotかColdかでも使い分けるのでしょうか?

城下さん :
必ずしもそうではありません。Hotは定性分析がメインで基本はエバポレーターですが、定量分析を行う際は処理数が多くなるのでTurboVap LVも使用します。Coldは定量分析がメインですからTurboVap LV主体です。現在、5台のTurboVap LVを使用中で、2台がColdエリア、3台はHotエリアに置いています。

◆パラレル濃縮で作業効率がアップ
『時間通りに処理が終わる』

─ では、TurboVap LVの良さはどのような点でしょうか?

城下さん :
やはり、窒素吹付けにより試験管で多検体を高速に濃縮できることが最大のメリットですね。試験管を1本1本濃縮していくのでは、全体の作業時間が読みにくいですが、TurboVap LVなら時間設定やガス圧調整も簡単で、決まった時間通りに処理が終わるので助かっています。

マイクロプレートでの処理が多くなれば、他の窒素吹付装置を検討することもあるでしょうが、マイクロプレートはウェルが多くてコンタミネーションの心配もありますし、樹脂製なので濃縮の際に何かが溶出する可能性も否定しきれません。そういうことからも、ガラス製の試験管は安心感がありますので、まだまだTurboVap LVを頼りにすることになると思います(笑)。

あとは、とても頑丈であるということですね。20年以上使っていますが、ほとんど故障はありません。ノズルが詰まったことはありますが、外して自分で洗えばいいですし、レギュレーターが不具合を起こした時も、部品交換ですぐに直りました。

積水メディカル株式会社 創薬支援センター

◆ラックのサイズ表記、湯浴の水量メモリを

積水メディカル株式会社 創薬支援センター─ 有効にご活用いただいているようで幸いです。問題点や改善してほしい点などはございますか?

城下さん :
細かいことですが、ラックの判別がわかりにくいという問題があります。現在、試験管のサイズ12ミリ、13ミリ、16ミリ用のラックをそれぞれ使っていますが、ラック自体にサイズ表記がないため、見た目ではどのサイズかがわからなくなることがあります。別の実験室のTurboVap LVからラックを借りてきたりすることもありますので、サイズがパッと判断できないことが多いです。試験管とラックのサイズが合っていないと、ノズル位置がずれて濃縮効率が落ち時間が掛かってしまいますから少し困ります。

あとは、湯浴に張る水の量がわかればありがたいですね。大抵ラックを入れる前に水をいれます。もちろんラックを入れることを予測して水を入れるのですが、思った以上に足りなかったりして、また入れ直すのが少し面倒ですよね。どのあたりまで水量を入れればラックがきちんと浸かるか、水量の目盛りがあればなぁと思います。

ガス圧の調整では、吹付けたガスで液面がさざめく様子を見てこれくらいの圧力かなと判断していますので内部がもっと見やすくなっているといいですね。

─ ご指摘ありがとうございます。今後ご指摘いただいた箇所も改善できるよう装置開発を進めていきたいと思います。今日は長時間、誠にありがとうございました。

インタビュー実施:2015年12月
PDFファイルダウンロード(2.0MB)

導入製品

窒素吹付け濃縮装置
TurboVap® LV

URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/evaporation/tvlv/

TurboVap LV は最大50サンプルまでを同時に処理できる自動濃縮装置です。サンプルラックを交換することで、1.5mL~30mLまでのサンプル前処理をフレキシブルに行えます。ガスがらせん状に吹付けられる(ガスボルテックスシアリング技術)ことで、ガスとサンプル(溶媒)の接触面積が大きくなり、従来法(ヒートブロック、遠心タイプ等)と比較して、濃縮効率を3~10 倍も高めます。ウォーターバスの温度をモニターし、均一に加熱しながら、セットした時間経過後にガスフローを自動停止します。ガスラインは10サンプル毎にスイッチでon/offでき、濃縮終了時にはアラームで知らせることもできます。

導入機関

積水メディカル株式会社

URL: http://www.sekisuimedical.jp/

同社は、1947 年の創業以来、「人々の健康と豊かな生活の実現に貢献する」ことを社是として、医療にかかわるさまざまな製品やサービスを提供。2008 年に積水化学工業のメディカル事業部門と合併し、現在の積水メディカルが発足しました。検査・医薬・薬物動態の3つのメディカル領域を国内外でビジネス展開しており、コア事業である検査事業は、米国、欧州、中国に新拠点を設立し、世界に向けてビジネスを急速に拡大させています。世界に際立つ技術力でその多様なニーズに的確に応え、お客様の満足度向上を常に意識した高品質製品やオンリーワン製品を創出することにより、グローバル社会に貢献する企業「世界に際立つメディカルカンパニー」を目指し挑戦し続けています。
設 立:2008年4月1日
資本金:12億7500万円
社員数:934名(2015年4月現在)