バイオアナリシス分野の前処理に
PRESSURE+ 96
ISOLUTE SLE+を活用
株式会社JCLバイオアッセイ 大阪ラボ
株式会社JCLバイオアッセイは分析業務を専門的に手掛けている CRO(医薬品開発受託研究機関)で、とくにバイオアナリシス(生体試料中薬物濃度分析)の分野ではナンバーワンの国内シェアを誇っています。
分析を行うサンプルの前処理に、バイオタージの加圧式サンプル処理マニホールド「PRESSURE+96」と液液抽出用珪藻土プレート「ISOLUTE SLE+」をご活用いただいています。今回は、大阪ラボ化学分析部門の試験責任者の北野隆行さん、田中佐知子さん、研究員の新田歩さん、水口真愛さんにお話をうかがいしました。
─ まず御社の事業内容について教えてください。
北野さん :
その前に、ちょうどタイムリーなご報告があります。
弊社は今年3月1日から、1992年に日本で最初にCROのビジネス展開を開始したシミックホールディングス株式会社の完全子会社になりました。これからはシミックホールディングスグループの一員としての「JCLバイオアッセイ」という立場で仕事をしていくことになります。これまでと事業内容が変わることはなく、生体試料中薬物濃度測定、製剤安定性試験などの業務を受託して新薬開発の支援を行ってまいります。
弊社は大阪府吹田市と兵庫県西脇市にラボを持っております。取り扱う業務としては、大きな事業が2つ、バイオアナリシス事業とCMC事業があります。薬物動態に関わる生体試料中の薬物濃度測定を行っており、製薬メーカー様やアカデミア様が、医薬品申請等に必要となるデータを提供しています。
バイオアナリシス事業はさらに、低分子化合物、高分子化合物を扱う2つの分野に分かれています。ここ最近になって、顧客からの高分子化合物に関する案件が増えてきたため力を入れています。わかりやすいところではバイオ医薬品(抗体医薬、核酸医薬)などの開発支援を行っています。
─ 大阪と西脇のラボでは、業務の内容に違いがあるのですか?
北野さん :
仕事の領域としての違いはないのですが、大阪では、バイオ医薬品に特化した分野や、低分子でいうとリピドミクスに特化した分野に対応しています。最近大阪ラボでホットな話題としては腸内フローラ研究に着目しています。
人間の腸の中には100兆個の菌が生息していますが、これらの菌が人間の体調をはじめ、もしかしたらヒトの性格にまで関連しているのではないかと言われています。
腸内フローラは、人間の体内における生態活性によって短鎖脂肪酸という物質を形成しますが、短鎖脂肪酸をバイオマーカーとして計測するサービスも始めております。西脇ラボは研究者が大阪ラボの約4倍ほど在籍しており、最新の設備を導入していることが特徴です。製薬メーカー様からの微量成分の分析などで分析が難しい場合などにも西脇ラボの機器では測定することができ、最先端の分析環境での対応が可能になっています。
─ そのような事業をされている中で、サンプル前処理はどのような位置づけなのでしょうか?
田中さん :
よりよい検出ができるためのクリーンアップですね。MS(質量分析計)自体が選択性の高い検出器になりますので、MS検出可能で一番シンプルな手法を私たちは模索しなければなりません。除タンパクで出来るのであればそれが一番早いのですが、除タンパクでクリーンアップができていないと次の段階として固相抽出を検討します。
─ サンプルごとにどのように前処理をするか決めているのでしょうか?
田中さん :
弊社はCROですからケースバイケースでして、お客様からこういうものをやってほしいという提示がある場合や、弊社で処理方法から検討する場合もあります。クリーンアップと感度を上げるという点において、やはり固相抽出が多いでしょうか。
─ 分析の前処理法が決定するまでどのくらいの時間がかかるのでしょうか?
田中さん :
前処理のメソッドがない場合は、文献や論文等の情報を集めてトライアンドエラーをしながらメソッド開発を行います。約1ヶ月以内を目処に行うことが多いです。
◆加圧式でウェル間のばらつき、コンタミを回避!
─ PRESSURE+ 96をまず導入していただいていますが、そのきっかけを教えてください。
北野さん :
従来のバキューム(吸引)処理のデメリットは3つあります。1つ目は、均一に吸引されないためウェル間のばらつきが多い 点です。2点目は、ウェルが詰まった際手作業で加圧するなどで個々に処理する必要があり、それがとても非効率でした。3つ目が、吸引時にまわりに飛散してコンタミネーションが生じてしまうという点でした。
PRESSURE+ 96を導入する以前は、ずっと吸引式で処理を行っていたのですが、私の担当していた試験でどうしてもコンタミが出てしまい・・・吸引時の飛散によるものだということがデータからわかりました。どうしても何とかしないと、と思っている際に加圧式のPRESSURE+ 96を紹介されました。
─ 加圧式があるという情報はどのようにお知りになりましたか?
北野さん :
バイオタージさんだけではなく、一般的にあるということは知っていました。ウェルの処理が多く、ウェルの処理体制の充実を図っていかないといけないな・・・という時に、バイオタージさんからPRESSURE+ 96をご紹介頂いたと思います。
田中さん :
私も以前から他社さんも含めて加圧式を販売されていることを知っていました。製薬会社さんが加圧式は『吸引によるばらつきが回避できる』と仰ってました。そんなに違うものなのかなという興味はありましたね。
─ PRESSURE+ 96を導入されて加圧式の良さを実感されておりますでしょうか?
北野さん :
メリットとしては、先ほどの吸引式のデメリットと比較してお答えしますとまず、均一に加圧し抽出することが可能になりました。2点目が、均一に加圧できるのでウェル間のばらつきが少なくなりました。3点目が、加圧する圧力をゼロから調整できるためコンタミを防止でき、さらに4点目として精度の良いデータが取得されることが期待でき、データの品質向上が見込まれます。私自身、コンタミに困っていましたので、その点が解決でき本当に助かりました。
水口さん :
吸引式の場合は水道を使って吸引しているため、引きの強さは個人差が出てきます。PRESSURE+ 96ではメモリで調節できるので、誰がやっても一律になります。再現性は私たちにとってとても重要ですので、視覚的にコントロールできるのはとても良いですね。
─ 加圧式の良さが実感していただけて本当に嬉しいです。
◆ISOLUTE SLE+のコツは少し長めに静置すること
北野さん :
PRESSURE+ 96を導入後、製薬会社さんから依頼された分析にISOLUTE SLE+を使う試験がありました。ISOLUTE SLE+での指定ではなかったのですが、頂いた参考文献にISOLUTE SLE+で処理すると記載がありました。ちょうどPRESSURE+ 96を使用していたこともあり、ISOLUTE SLE+も使ってみようと使用し始めました。
─ ISOLUTE SLE+を導入する際に、液液抽出を珪藻土で行うことへの抵抗はございませんでしたか?
新田さん :
私はそんなにありませんでしたね。
北野さん :
ISOLUTE SLE+の話を聞いた時はなんだそりゃ?と思いました(笑)。しかし珪藻土に悪い印象はありませんでした。固相抽出しか使ったことがないと『ん?』と思われるかも知れませんが、私たちは様々な処理に挑戦していくのが仕事ですので、それほど抵抗がないのかもしれません。結果がついてくればどの処理法でも問題はなく、結果ISOLUTE SLE+が良かったので使用しています。
でもはじめはちょっと慣れるのに苦労しました(笑)。固相抽出の感覚で使うとちょっとコツがいりましたね。その後、バイオタージさんに何度か連絡をして、通液の仕方にコツがいるようで、その点などを丁寧に教えていただきました。
─ どのようなアドバイスでしたか?
新田さん :
サンプルを添加して、ちょっと圧をかけて、その後、一般的には5分と書いていますがそれよりも少し長めに待つようにアドバイスを頂きました。そのように処理してみると安定するようになりました。待つってことが重要だと改めて実感しました(笑)。
─ 固相抽出との違いで実感されることはどういう点ですか?
新田さん :
固相抽出だったら、平衡化というか活性化して洗浄してそれから溶出っていう工程があるので、その辺が無いのがだいぶ早いなというイメージがあります。
北野さん :
実は、液液抽出する試験も他に幾つかあるのですが、そういうものにも使えるんだろうなと思っています。どこかを機に使ってみたいですね。
◆サンプル品を増やしてくれるとなお良い
─ 製品へのご要望はございませんでしょうか?
水口さん :
ISOLUTE SLE+ですが、96ウェルある中でABCや123などウェルがわかるように小さく数字がナンバリングされていますが色がついていないため、わかりづらいです。たまにペンでなぞって使っていますが、色がついていたらわかりやすいですね。
─ PRESSURE+ 96に関しては何かご要望はございますか?
田中さん :
最初に使うとき、結構押さないといけません。どのくらいやればいいのか・・・。プスっと音がするんですが、それを聞き逃したんじゃないかと思うときがあります(笑)。あの音がもっとわかりやすいと良いですね、ちょっとしたことなんですが(笑)。
水口さん :
ドラフト回していると、うるさくて聞き逃してしまうことがありますよね。
─ ご指摘ありがとうございます。今後の装置開発の参考にさせて頂きます。弊社の対応は如何でしょうか、きちんと出来ておりますか?
北野さん :
装置のトラブルがあった際には、すぐに来ていただきました。故障も頻発しているわけではないですしね。PRESSURE+ 96は電源も要りませんし、その分故障も少ないですよね。電源がないことに最初はびっくりしましたが。電源のない装置を初めて見ました(笑)
田中さん :
また、サンプル品をもっとたくさん気軽に試せると良いですね。購入するために上司を説得するのは大変ですので(笑)。しかも5万、10万円のものを購入後検討して、ダメでした、では今後も導入検討しづらくなります。
─ 研究員の方々がより検討しやすくなるよう弊社も対応させて頂きます。本日は貴重なご意見をありがとうございました。
インタビュー実施:2015年4月
PDFファイルダウンロード(1.8MB)
導入製品
加圧式サンプル処理マニホールド
PRESSURE+ 96
URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/sample-preparation-products/pressure_plus/
PRESSURE+ 96は96ウェルプレートに対応する、加圧式サンプル処理マニホールドです。個々に独立した加圧機構を採用しており、サンプルの粘性を問わず均一なフロー、安定した回収率を実現します。パラレル処理で、スループ ットの向上に役立ちます。
液液抽出用珪藻土カラム&プレート ISOLUTE SLE+
URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/sample-preparation-products/tn_sle/
ISOLUTE SLE+は、液液抽出をベースとした手法で、血漿や尿などの生体サンプルからタンパク質やリン脂質を除去し、ターゲット化合物を抽出します。厳密な粒径コントロールをした、生体サンプルの分析前処理用に改良した特殊な珪藻土を充填しており、分析ターゲットを高回収率で再現性良く抽出できます。
導入機関
株式会社JCLバイオアッセイ
2005 年に日本医学臨床検査研究所より分社化して設立。2010 年には米国ラボを設立。2013 年にはシミックホールディングス株式会社と資本業務提携を締結。現在、大阪府吹田市、兵庫県西脇市の2か所に研究所があり従業員は約120 人。2015 年3月、東証一部上場のシミックホールディングス株式会社の完全子会社となりました。バイオアナリシス、医薬品品質安定性試験を受託し、約100 人の研究員が分析CRO のスペシャリストとして、最高品質のデータを迅速に提供しています。(データは2015 年3月31日現在)