加圧式処理でコンタミの恐れを回避!!
~創薬向け化合物ライブラリー合成に
加圧式サンプル処理マニホールド
「PRESSURE+ 48」を活用~
株式会社ナード研究所
株式会社ナード研究所は、製薬会社向けの化合物ライブラリー合成事業において、合成後のサンプルを液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)で分析するための前処理にバイオタージの加圧式サンプル処理マニホールド「PRESSURE+ 48」を活用しています。大量の化合物を評価する創薬研究のスピード感に対応するためには、一度に多くのサンプルを間違いなく処理できる PRESSURE+ 48 が不可欠の装置であるとご評価いただきました。今回は、神戸研究所のライフサイエンス研究部シニアリサーチャーの梶田敬太さん、星野淳一さんにお話をうかがいました。
─ まず御社の概要とライフサイエンス研究部のお仕事についてお聞かせください。
梶田さん:
ナード研究所は1972年の創業です。受託合成、研究支援というビジネスモデルを立ち上げて、40年以上の歴史があります。本社は兵庫県尼崎市にあり、そちらにはマテリアルサイエンス研究部が置かれていて、電子材料関係などをおもに担当しています。
ここ神戸・ポートアイランドにある神戸研究所にはわれわれの所属するライフサイエンス研究部がありまして、医薬・農薬・食品関係の研究支援が主業務です。1グループ、2グループ、4グループに分かれていて、われわれの4グループは医薬のヒット探索やリード最適化に利用する化合物ライブラリーの合成を事業の柱にしています。自社技術の研究開発を行っているコーポレート研究部と合わせて、30人ほどが神戸研究所で働いています。
─ 化合物ライブラリー合成サービスとは、どのようなものなのでしょうか。
梶田さん:
お客様から化合物をご開示いただいて、弊社の方で合成ルートデザインや合成法の検討を含めてハイスループットの合成を実施し、最終的に多数の化合物をお客様にご提供するサービスです。例えば、カルボン酸をアミド化する反応などでは、20ミリグラム以上/純度90%以上の1000化合物を3ヵ月というスピードでご提供します。
同様のサービスを実施する企業は多いのですが、とくに弊社の強みとして示しているのが成功率の高さです。つまり、1000化合物のご依頼に対してどれだけご提案できるかということなのですが、弊社は基本的に成功率90%以上でご提案できております。アミド化などの簡単な反応だけでなく、パラジウムを使った鈴木カップリングなどの難しい反応でも成功率90%以上の実績があります。
また、ライブラリー合成のためのビルディングブロックとしてアミンとカルボン酸を4000種以上保有しています。とくに、オキセタンやスピロ化合物、4級炭素、フッ素含有化合物など、通常販売されていないような試薬を有していることが強みで、それらを用いて「リード化合物の最適化」と「ヒット化合物の探索」という2つのビジネスを今年(2014年)の4月から開始しました。
前者は、お客様のリード化合物に対してわれわれのユニークなビルディングブロックを用いて活性の高い構造に最適化するというものです。後者は、ユニークビルディングブロックを組み合わせてバーチャルライブラリーを作成し、その中からお客様がご興味のある化合物を実際に合成してお渡しするというものです。
将来的には、フラグメントベースのスクリーニングを行い、ヒットしたフラグメントをドラッグライクな化合物に仕上げてお客様にご提供する「スクリーニング+合成」の一貫したサービスを事業化したいと思っています。19F-NMRを使った活性評価を行うことを考えていまして、通常のスクリーニングとは少し違う手法になります。いわゆるフラグメントベースドラッグデザイン(FBDD)ですね。
◆バイオロジーのスピード感に対応 分析のための前処理を効率化
─ なるほどよくわかりました。「PRESSURE+ 48」はプロセスのどのあたりでご使用になるのでしょうか。
梶田さん:
ライブラリーづくりはパラレル合成ですので、ディスポーザブルの試験管に多数の反応を並行して行います。そのあと、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)で分析するプロセスになりますが、そのための前処理にバイオタージさんのSPE(固相抽出)カラムを使用しています。
また、精製は酸を加えて逆相系で分取していますが、アミンのパーツが含まれていたりすると、なにかしらの塩とコンプレックスをつくってしまう場合があります。そのため、顧客によっては最後にアミノシリカを通すという作業が必要になります。そこでもバイオタージのSPEカラムを使います。それらの前処理をどれだけスピーディーにできるかがPRESSURE+ 48を利用するポイントになりますね。
─ 弊社の実績として、血漿などの生体サンプルの前処理などでは固相抽出が使われることが多いのですが、有機合成の分野でご採用いただくのは珍しいため、大変嬉しいです。
梶田さん:
われわれとしても、7~8年前からのいろいろな試行錯誤の結果によるものです。反応によって精製をどのようなツールを使うかがノウハウになりますが、おそらくは医薬分野で多数の化合物を合成するという場合はやはり固相抽出にたどり着くと思いますね。
星野さん:
スピード感の違いもあると思います。合成の速度は100年前と変わらないかもしれませんが、そうした合成物を利用するバイオロジーの世界では1000検体を1時間で分析したりします。合成の方もそうしたスピード感に合わせなければならなくなってきています。ただ、合成は100年前と同じ道具(フラスコ)を使うしかないわけですから、そのギャップを埋めるために御社の装置が必要不可欠だと思います。
合成自体はフラスコをたくさん並べてつくればいいのですが、それを処理するときにPRESSURE+ 48で順番に並べれば間違いなくできますし、多数の検体を同時に処理することが可能になるんです。
─ ここであらためてPRESSURE+ 48導入の経緯を振り返っていただけますか。
梶田さん:
そもそも固相抽出を検討したのは、ライブラリー事業をスタートさせた7~8年前にさかのぼります。最初はシリンジカラムを1本1本手作業で処理していたのですが、時間がかかるので吸引方式に変えたりと処理方法を試行錯誤していました。
この事業はお客様との二人三脚で進めるところがありますので、そうした関わりの中でお客様の口コミでPRESSURE+48の存在を知りました。導入している実機を見学させていただいて、これは良いということで3年くらい前に導入しました。
◆洗浄不要でコンタミの恐れ解消、間違いがなく確実に処理
─ PRESSURE+48 には、どのような利点を感じておられますか。
梶田さん:
そうですね。PRESSURE+ 48の導入以前は吸引方式で処理していましたが、2つ大きな問題がありました。1つは圧がかけられないので遅いこと、もう1つは構造的にコンタミネーションが避けられないことでした。その意味で、加圧式のPRESSURE+ 48を採用して吸引方式の時の欠点が解消されました。圧力が高いので目詰まりしやすいサンプルでもある程度速いスピードで処理できます。
また、吸引方式はジョイント部分のニードルやコックを毎回洗浄しなければなりませんでしたし、そこがコンタミの原因にもなります。PRESSURE+ 48はコンタミの恐れはまったくありませんし、洗浄がいらないということは、効率化の面でもとても優れていると思います。
星野さん:
洗浄する以上、コンタミの可能性はゼロにはできませんよね。もし不純物が混ざってしまったらということを考えると、新しい装置に投資してでも、リスクそのものを排除したいと思ってしまいます。
梶田さん:
SPEカラムをきれいに並べられるので間違えにくいのも利点ですね。細かなことだと思われるかもしませんが、月に400化合物というような単位で合成しますので1個の間違いが命取りになります。そのため、リスクはできるだけ低くしたいです。
星野さん:
PRESSURE+ 48には48本のSPEカラムをセットできますが、実は最前列の12本しか使っていません。後ろ側は隠れて見えないというのがその理由です。前列はしっかり見えますので絶対に間違えません。間違いがないことをそれだけ重視しているということなのです。
梶田さん:
リスク回避を何よりも重要視していることもあり、4、8、16くらいの単位が私たちには適当なんです。ですから、PRESSURE+48についてもコンパクト版があればありがたいですね。PRESSURE+8とか。
星野さん:
あとは、電源がいらないということも驚きました。
梶田さん:操作も簡単ですが、安全性も考慮されていると思います。ボタンを押すだけなのですが、両手で押すようになっていますので手をはさむ心配がありません。加圧式ならではの配慮なのかなと思っています。
◆小型化、ラックの高さを可変式に
─ ありがとうございます。逆に気になった点やご要望などはございますか。
星野さん:
どの研究室も同じだと思いますが、ドラフトボックスの中など換気装置のあるところでの作業が必ず必要になります。貴重なスペースですから装置がもう少しコンパクトであればいいなと思います。先ほども述べましたが、より少ない検体数を扱う小さいバージョンの装置があればいいですね。
─ 日本のお客様はわたしどもの開発陣が考える以上に省スペースを求めておられることがよくわかる、貴重なご意見ですね。ご要望が反映できるように努力させていただきます。
星野さん:
あと、電気を使わないのは確かに利点で、それは水に強いということだと思います。ですが、PRESSURE+48は有機溶媒にすごく強いわけではありませんよね。表面が溶媒に侵されて見た目が悪くなってしまいます。使用するうえで問題になることではないのですが、人によっては多少気になるのではないでしょうか。
梶田さん:
さらに可能であれば、ラックの高さを可変式にしてほ しいです。ちょっとレアな使い方かもしれないのですが、われわれ はSPEカラムにメンブレンフィルターを接続させて使っています。 その分だけ高さが伸びるので、支持具のところがちょっとたわん でしまうのです。そのため、ラックの高さを変えられるようにできる と便利ですね。
星野さん:
そうすればいろんなカラムが使えますし、いろんな規格に対応できるので、可変式であればありがたいかなと思います。
梶田さん:
PRESSURE+48を最初にみせていただいたお客様は、高さを自社に合うようにカスタマイズしておられましたが、個別にカスタマイズをお願いするとかなり費用がかかりますよね。
星野さん:
またはメンブレンフィルターを備えたカラムを用意していただけたらうれしいですね。メンブレンフィルター付きのSPEカラムを探したのですが、どのメーカーでもないので……。バイオタージさんでつくっていただければすごく助かります。ただ、その分カラムの価格が2倍とかいわれると困ってしまいますから、われわれとしてはやはり装置が可変式になる方がうれしいですね。
─ 実用的かつコストパフォーマンスが重要ですね、貴重なご意見誠に感謝いたします。本日は長時間ありがとうございました。
記事掲載日:2015年4月30日
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導入製品
『PRESSURE+ 48』
URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/sample-preparation-products/pressure_plus/
PRESSURE+ 48は1mL、3mL および6mLサイズのカラムに対応する、加圧式サンプル処理マニホールドです。個々に独立した加圧機構を採用しており、サンプルの粘性を問わず均一なフロー、安定した回収率を実現します。パラレル処理で、スループットを向上に役立ちます。
導入機関
株式会社ナード研究所
株式会社ナード研究所は、化学分野の研究を受託するというビジネスのパイオニアです。研究員が自ら顧客の生の声を聞き、顧客と解決すべき課題を共有しながら仕事を進めており、医薬品、電子材料、自動車用材料、バイオ関連材料等の先端分野で多くの実績を重ねています。「ファインケミカルの合成」と「機能性材料の開発」という2 つの事業が有機的に機能し合い、合成研究から応用開発まで幅広く実施できる環境を整えて、ますます高度化する顧客ニーズに応えています。
創立:1972年3月14日
資本金:10,018万円
社員数:119名
本社:兵庫県
※データは2015年3月現在