小野薬品工業株式会社

『マイクロウェーブ合成で
創薬の可能性を広げる』

~創薬研究にマイクロウェーブ合成装置
「Initiator Sixty」を活用~

小野薬品工業株式会社

小野薬品工業株式会社は、脂質やキナーゼなどの化合物合成にバイオタージの自動搬送ロボット(オートサンプラー)付きマイクロウェーブ合成装置「Initiator Sixty」を活用しています。マイクロウェーブ加熱と自動搬送を組み合わせることで、安全で効率的な合成実験が可能になり、反応性が悪く合成が難しかった化合物にも対応できるようになりました。今回は、水無瀬研究所(大阪府三島郡)医薬品化学研究部の第一研究室・第二グループにご所属の久須美健介さんと、第二研究室・第一グループの武田博之さんにお話をうかがいました。

小野薬品工業株式会社─ まず御社について簡単にご紹介ください。

久須美さん:
小野薬品工業は、「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」という企業理念に基づいて、世界に通用する独創的な医薬品の開発を目指しています。これまでの研究で培った技術やノウハウを生かし、当社の強みを発揮できる領域での医薬品創製を進めるとともに、医療現場のアンメットメディカルニーズに即した医薬品創製にも積極的に取り組んでいます。

当社は、これまでの研究過程で豊富に蓄積してきた新規化合物をライブラリー資産として保有しており、そのなかから疾患や治療に結びつく化合物を探し出す、「化合物オリエント」という創薬手法を取っています。

プロスタグランジン研究や酵素阻害剤研究などで培った技術やノウハウを生かすことができる得意領域として、生理活性脂質および酵素阻害剤領域を重点領域に設定しています。さらに、チャレンジ分野では、がん領域および神経科学分野の研究で培ったノウハウやゲノム研究で得た資産を有効に活用しつつ、新たな領域での創製研究に積極的に挑戦しています。

「化合物オリエント」の生命線は、豊富な化合物ライブラリーですから、日々たくさんの化合物をつくることが重要でして、そのためにバイオタージさんの「Initiator Sixty」はとても役立っています。

◆オートサンプラーと高い安全性が決め手

小野薬品工業株式会社
小野薬品工業株式会社
水無瀬研究所化学研究統括部
医薬品化学研究部
第一研究室 第二グループ
久須美健介さん

─ マイクロウェーブ技術を採用されたきっかけや、「Initiator Sixty」の導 入の経緯についてお聞かせください。

久須美さん:
10年ぐらい前だったと思いますが、論文等でマイクロウェーブ効果が注目された時期がありました。そこで、われわれもいくつかの機種を使用していたのですが、それらのほとんどは自動搬送ロボット(オートサンプラー)が付いていませんでしたし、論文通りにしても再現性がなかったり、サンプルを焦がしたりしてしまうなどの問題がありました。

とくに、オートサンプラーがないのが最大のネックでして、反応条件を検討するにしてもずっと装置に付いていて見ていなければなりませんでした。それに対し、Initiatorは効率的な加圧加温が可能であり、さまざまな反応条件を設定することも、同じ条件でいくつかの種類のサンプルを同時にかけることも、設定した後は自動で合成できますからとても便利です。

小野薬品工業株式会社
小野薬品工業株式会社
水無瀬研究所化学研究統括部
医薬品化学研究部
第二研究室 第一グループ
武田博之さん

武田さん:
以前のマイクロウェーブ装置は非常に危険で、内部で反応容器が破裂したり爆発したりすることも珍しくなかったそうです。冗談交じりに、爆発しないと反応がいかないんだなどと先輩から言われて、最初のころは非常に怖かった記憶がありますね(笑)。

バイオタージさんのマイクロウェーブはすごく安全ですし、万が一反応容器が破損した場合でもメンテナンスがしやすい構造になっていて、すぐに復帰することができます。実際に使うとそういった点が大きな違いだと実感しますね。

◆均一な加熱できれいな反応、そして合成できることが重要

小野薬品工業株式会社
マイクロウェーブ合成装置
Initiator Sixty

─ まだまだマイクロウェーブでの合成に抵抗がある方が多いのですが、マイクロウェーブ合成自体のメリットはどんな点だとお考えでしょうか。

久須美さん:
マイクロウェーブ効果については諸説ありますが、原理的に反応系内が均一ですから、外側からだけの加熱に比べて反応がきれいだというのは確かです。

武田さん:
創薬をする立場からすると、合成できないということは可能性をゼロにしてしまうことになります。マイクロウェーブを使って少しでもつくることができれば、0が1にもなりますし、そこから可能性は広がります。そういう選択肢をマイクロウェーブが与えてくれるということです。その可能性を試さずに、使わないのはとてももったいないですよね。

─ 本当に仰る通りだと思います。
 では弊社装置Initiator Sixtyの利点については、どのように感じておられますか。

久須美さん:
本体側に関しては、再現性が良いこと、マイクロウェーブの当て方が均一で事故が少ないこと、条件の設定がフレキシブルにできることなどで優れていると感じます。あと、個人的にはソフトウェアが使いやすいと思っています。

武田さん:
そうですね。確かにタッチパネルで操作できるのですごく助かっています。以前はやたらにボタンが並んでいる装置もあったのですが、その時代はたいへんでした。タッチパネルはパッと見てわかるので直感的に使えますね。設定項目も、温度と圧力と時間だけですのでわかりやすいです。

久須美さん:
最近はマイクロウェーブの使用目的も多様化しています。少量でたくさん種類を 合成したい人から、同じ化合物をたくさんつくりたい人までさまざまです。ですから、多彩なバイ アル(反応容器)サイズが用意されている点もありがたいですね。大量にほしいときは大きな バイアルを使うことで対応できますので。

◆スピード/効率重視の合成にはオートサンプラーが欠かせない!

小野薬品工業株式会社
超高速精製ソフトウェアACI搭載
フラッシュ自動精製装置 Isolera

─ マイクロウェーブを効率的に当てるために、あまり大容量な容器が使用できないことが、マイクロウェーブ合成の欠点だといわれることもありますよね。

久須美さん:
御社でいちばん大きいのは20mL のバイアルですよね。オートサンプラーは60検体(20mLバイアルの場合は24検体)を扱う能力がありますので、とりあえずは十分です。バイアルのサイズは4種類(0.2 – 0.5mL、0.5-2mL、2-5mL、10-20mL)すべてを使用していますが、現在のラインアップで不便は感じていません。

武田さん:
キナーゼは反応性の悪いものが多く、マイクロウェーブを当てないと大量に取れないケースもありました。例えば、オイルバスだと収率が10%しかいかないものが、マイクロウェーブで40%に上がった事例があります。結局収率は低いのですが、それでも4倍ですから、20mLバイアルを10本並べれば大量にサンプルを取得できます。そのおかげで随分助けられた部分もありますね。

─ マイクロウェーブを効率的に当てるために、あまり大容量な容器が使用できないことが、マイクロウェーブ合成の欠点だといわれることもありますよね。

武田さん:
やはり何種類も反応をかけなければならない時に、その場に人がいなくても自動でやってくれるのが魅力です。終夜運転もできますから、そこがロボットならではの利点ですね。

久須美さん:
今はもうオートサンプラーなしでの使用は考えられないですね。多くの研究員が同じ装置を使うわけですから、前の人が終わるのを待っている時間はまったくのムダになりますが、オートサンプラーで予約しておけば時間を有効活用できます。スピード感を重視するわたしたちにとっては不可欠なものだと思いますね。

◆速さがポイント、3溶媒系にも対応

小野薬品工業株式会社─ 御社では、フラッシュ自動精製システム「Isolera」もご利用いただいていますが、こちらはいかがでしょう。

久須美さん:
研究所内では3社の精製装置が稼働中なのですが、最近Isoleraを超高速化するソフトウェア「ACI」を導入しました。分離能がまったく変わらず、とても速くなったので好評を博していますね。われわれにとって、速いというのは非常に重要なポイントです。

武田さん:
複素環化合物はUV(紫外線)吸収のピークがずれることがあるのですが、Isoleraは2 波長を設定できるので取りこぼしの恐れがなく、とても便利です。

とくに、溶媒の割合を途中からでも変更できるのが便利で、簡単にいろいろなパターンでテストができます。それにタッチパネルの操作性がInitiator Sixtyと共通なので使いやすいです。

また、難溶解性化合物を扱う際など、3溶媒系でもやりやすいという利点があります。それほど頻度は多くないのですが、いつでも3溶媒系でやれるという安心感は大きいです。

小野薬品工業株式会社久須美さん:
バイオタージさんの製品で、この精製装置に質量分析計(MS)を組み合わせたのはすごいアイデアですよね。ちょっとほしいです(笑)。

武田さん:
確かに、精製しながら分析できたらいいですね。この前、デモを見ていいなと思ったのですが、お値段が高くて……(笑)。

─ ご利用中のInitiator SixtyやIsoleraで問題点やご要望などはございますか。

久須美さん:
とくに不満は感じていませんが、あえて言えば、大きいバイアルがあるに越したことはないですね。
マイクロウェーブを均一に当てることを考えると、大きさに限度はあると理解していますが……。

武田さん:
逆に小さい方のバイアルについては、さっきも言った難溶解性の試薬を使う場合、粉体ですので注入しにくい時があります。もう少しだけ口が広いとありがたいです。

それから、わがままかもしれませんが、使用時にファイル名で自分の名前を選ぶとき、頭文字が「T」なので何回も画面を切り替えないと名前が出てこないのです。スライドバーを付けるなどして、一気にスクロールできると便利だと思います。

小野薬品工業株式会社─ 実際に使用される立場からのご意見ですので大変参考になります。ありがとうございました。「Initiator」には後継機種の「Initiator+」があり、250℃/20barから300℃/30bar にスペックが上がっているほか、タッチパネルも大きく使いやすくなっています。

武田さん:
30barまで対応できるのはありがたいですね。いまは、20barを超えてしまって止まることがあるんです。圧力の上限に余裕があるといいですね。

久須美さん:
バイアルはいまの機種と共通ですよね。この温度・圧力まで耐えられたということですね。

武田さん:
確かに、使い捨てのわりにけっこう頑丈なつくりだと思っていました。

─ 新機種の「Initiator+」にもご関心をお持ちいただきありがとうございます。
 これからもご期待に沿えるように努力します。本日は長時間ありがとうございました。

記事掲載日:2015年4月24日
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導入製品

『マイクロウェーブ合成装置
Initiator+ Sixty』

URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/microwave-synthesis-work-up/initiator60_top/

小野薬品工業株式会社400Wのシングルモード照射で、パワフルかつ精密に温度を制御します。操作性・安定性に優れたマイクロウェーブ合成装置として多くの研究機関で活躍しています。60本の連続反応が可能なオートサンプラー付きのため、大小さまざまなバイアルを手動で中断することなく、組み合わせに限らずフレキシブルに操作することができます。

導入機関

小野薬品工業株式会社

URL: http://www.ono.co.jp/

小野薬品工業株式会社

小野薬品工業株式会社の歴史は、初代・伏見屋市兵衛が大阪に薬種商の看板を掲げた享保2年(1717年)にさかのぼります。以後、ほぼ3 世紀にわたる歴史のなかで継承されてきた独創的新薬の創製にかける情熱と、これまでに培われた技術やノウハウを生かし、人々の健康な生活に役立つ医薬品の開発に努め、社会に貢献しています。

設立:1947年
資本金:173億5800万円
社員数:2858名(連結ベース、2014年3月現在)
本社:大阪市