『特殊ペプチド創薬に Syro I、V-10 を活用』
ペプチドリーム株式会社
ペプチドリーム株式会社は、特殊アミノ酸などを含んだ特殊ペプチド医薬に特化した事業を展開し、新しい医薬品候補物質の研究開発を行っています。創薬開発を支えるさまざまな種類のペプチド合成にバイオタージのペプチド合成装置「Syro I」と高沸点溶媒濃縮装置「V-10」をご活用いただいています。今回は最高執行責任者(COO) の舛屋圭一さん、研究開発部グループリーダーの西丸貴弘さん、研究員の福田桂大さん、田中正洋さんにお話をうかがいました。
─ まず、御社の事業内容について教えてください。
舛屋さん:
東京大学先端科学技術研究センター教授だった菅裕明先生(2010年4月から理学系研究科化学専攻教授、現在、同社社外取締役)の研究からスピンオフした形で会社が立ち上がりました。
菅先生がフレキシザイムをもとに開発したPDPS(Peptide Discovery Platform System)という特殊ペプチドをつくる技術を用いて、創薬に貢献しようというのが事業基盤です。
ですがペプチドリームという社名通り、ペプチドだけを扱うのかといえばそうではありません。それをスタートにしていますが、さまざまな分野に応用させています。
ペプチドによる創薬はもちろんですが、ペプチドをツールとして低分子化されたものも開発しており、農薬など創薬以外の分野にも活用されています。このすばらしい技術基盤を、さまざまな形でつなげていこうというのが我々の仕事です。
当社の技術基盤であるディスカバリーと呼ばれるバイオロジー系の部署ではタンパク質とうまく結合するであろうペプチドを探索し、決定します。その探索されたペプチドを研究開発部のケミストたちが実際に合成することでこの技術を支えています。
◆『さらに効率的に合成することが求められています』
多種類のペプチド合成にパラレル合成が貢献!
─ そのような中、弊社のSyro I をご使用いただいておりますが、使用されたきっかけを教えていただけますか?
西丸さん:
設立当時、まだ菅研究室が同じ敷地にあったので、ペプチドリームは菅研究室にあるSyro l をお借りして合成をしていました。その後菅研究室が本郷へ移転する際に装置も本郷へ移設したため、ペプチドリームとしても装置が必要になりました。そこでSyro I を導入しようということになりました。
─ 他の装置は検討されなかったのでしょうか?
西丸さん:
他にも候補はあったはずですが、使い慣れていましたからやはりSyro I を導入したい、ということになりました。効率を考えると、使いやすさも重要でしたので。
─ 実際、Syro I を使ってみていかがですか?
西丸さん:
菅研究室のSyro lをお借りしていた当時のSyro I が私が初めて使用したペプチド自動合成装置だったのですが、初めてでも直感的というのでしょうか、とても使いやすかったのがすごく印象的でした。設定部分の組み合わせがシンプルですね。それから今に至るまでずっとSyro I を使用しています。
一番いいのは、自動かつパラレル合成が出来るところですね。私たちの部署では様々な配列のペプチドを合成する必要があります。同じ配列でも、反応条件を少しずつ変えて合成する必要もあります。たくさんの種類のペプチドを合成するには、Syro I はとても便利ですね。作る種類が多いのでマニュアル合成や、1 検体ずつの合成ではとても間に合わないのです。
◆『DMSOが留去できるなんて、とても驚きですよね。』
─ ペプチド合成装置の他にも、高速濃縮装置V-10やフラッシュ自動精製装置Isoleraもお使いいただいておりますが、こちらの導入経緯なども教えていただけますか?
西丸さん:
ペプチド合成の際にDMSO(Dimethyl sulfoxide)を使うのですが、みなさんご存知の通り留去させるのがとても難しい溶媒です。DMSOを用いない反応系も検討したのですが、やはりDMSOでないと反応がいかないものが多いのです。そんな中、DMSOが留去できる装置があると聞いて、導入しました。
田中さん:
DMSOが留去できるなんていう概念が全くなかったので、とても驚きですよね。
西丸さん:
Isoleraはペプチドのビルディングブロックの精製に使用しています。こちらもソフトウェアが使いやすくて便利ですね。
◆終夜運転を想定した機能があれば便利
─ 最後に、何か問題点や要望などはございますか?
西丸さん:
Syro I はシリンジポンプの数やリアクターのサイズを増やしていただけると有り難いですね。シリンジポンプが例えばあと2 本あったりすると送液がより速くなり、もっと速く反応が終わるのではないかと思います。
─ 実際に使用されている方ならではのご意見ですね。大変参考になります。
田中さん:
エラーが起きた時、Eメールで知らせて、さらに遠方から操作出来る機能があれば、かなり助かります。終夜で運転させることが多いので、離れた場所からも確認や反応の変更ができればいいですね。
─ 終夜運転でこそ全自動合成装置の良さがでますので、終夜運転を想定した機能を更に追加する必要はありそうですね。貴重なご意見ありがとうございました。今後のご予定について教えてください。
舛屋さん:
これまでにも増して活動分野を拡げていく予定です。最初にご説明したとおり、このペプチドリームのすばらしい技術をさまざまな分野につなげていくことを本格的に行なっていきます。実際に製薬会社だけでなく、農薬、食品、化粧品会社へも活躍の場を拡げています。それに伴い、合成装置もまだまだ必要になるかもしれません。そうしたら世界で一番、バイオタージのペプチド製品を使っている会社になるかもしれませんね(笑)
─ 弊社としてもうれしい限りです。今後とも全力でサポートしていきます。
本日は、お忙しいところ、誠にありがとうございました。
インタビュー実施:2014年11月
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導入製品
『全自動パラレルペプチド合成装置
Syro I 』
URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/peptide-synthesis-purification/syro1/
1検体から96検体(Tip)までの複数検体のペプチド合成が、同時に行なえるペプチド合成装置です。全自動のため、目的のペプチドを効率良く合成します。
『高沸点溶媒濃縮装置
V-10』
URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/evaporation/v10_top/
迅速な溶媒エバポレーションを実現した高沸点溶媒濃縮装置です。水溶液だけでなく、高沸点有機溶媒も濃縮可能です。従来のロータリーもしくは遠心タイプと違い、DMSO(8mL)を15 分で留去することができます。
導入機関
ペプチドリーム株式会社
URL: http://www.peptidream.com/
東京大学大学院理学系研究科の菅裕明教授が2006年7月に設立。菅裕明氏によって開発されたフレキシザイム(人工リボザイム)を基に開発された独自の創薬開発プラットフォームシステムであるPDPS(Peptide Discovery Platform System)を活用した新しい医薬品候補物質の研究開発を行っています。革新的な医薬品を創出し、多様な医療ニーズに応える医薬品を開発することで、世界中にいる疾病で苦しむ方々に貢献することを目的としたペプチド医薬のリーディングカンパニーです。2013年6月には東証マザーズに上場し、その後もさらに活躍の分野を拡げておられます。
設立:2006 年
資本金:2,743百万円
本社:東京