和光堂株式会社

『食の安全・安心』を守る
パツリンの分析に固相抽出カラム
「ISOLUTE® Myco」を活用

和光堂株式会社

和光堂株式会社では、「食の安全・安心」を守るため、カビ毒として規制されているパツリンの分析にバイオタージのカビ毒一斉分析前処理用SPEカラム「ISOLUTE Myco」を活用しています。
パツリンは、リンゴ果汁に含まれる可能性があるカビ毒で、とくに子供の健康保護の観点から重要視されています。
「私たちが提供する実際の商品の安全性を確認することが最終目的。単純な果汁だけではなく、ピューレや粉末などの加工食品に対応できる新しい分析法を確立しようとしていました」と話す研究開発二部(分析チーム)の秋場高司さんに、導入の背景や実際の分析業務についてお話をうかがいました。

和光堂株式会社
秋場 高司さん
和光堂株式会社 研究開発二部

─ まず、御社の概要をお聞かせください。

秋場さん:
「明治39年に東京帝国大学の小児科の初代教授だった弘田長博士が立ち上げた和光堂薬局が始まりです。

2006年に創業100周年を迎えまして、ちょうどその年にアサヒビール(現アサヒグループホールディングス)の傘下に入りました。

ベビーパウダーの代名詞になった「シッカロール」をはじめ、国産初の粉ミルク、国産初のベビーフードを世に出したのも当社です。

現在の商品としては、粉ミルクを始め国内で唯一の大豆の粉ミルク、粉末およびレトルトタイプのベビーフード、幼児向けのおやつなどがあります。

また、おもしろいコンセプトの新製品として、同じメニューで大人も子供もおいしく食べられる「おやこdeごはん」、果実をピューレ状にした「くだもの 食べよっ!」、火を使わずにお子さんと一緒に手作りする「おやつ、つくろう。」などがあります。

そのほか、赤ちゃん用の衛生用品、粉ミルクの技術を生かしたコーヒー、ココア、スープなどの一般用食品、妊娠期に必要な栄養成分を強化した妊産婦向け食品、業務用の食品原料なども手がけています。さらに、少子高齢化の時代ですから、最近は介護向けの食品にも力を入れています。」

◆安全・安心を守るためには科学的な検証が重要

和光堂株式会社─ 分析チームのお仕事についても教えてください。

秋場さん:
「当社の企業理念は『私たちは乳幼児の健やかな成長と人々の健康を応援します』というもので、ブランドステートメントは『ずっと、赤ちゃん品質』です。
つまり、安全・安心、優れた品質を、最も大切な価値観としているということです。

その意味で、私たちの分析チームは非常に重要なミッションを負っていると感じています。商品の安全性・信頼性を確保し、それを保証するための分析技術開発して、実際に安全保証分析を行うことが分析チーム業務内容です。
分析チームは総勢5名と小さいのですが、自分たちが品質を守っているのだという自負を持って仕事をしています。」

和光堂株式会社「おもには社内各部署からの依頼で分析しますので、製品保証センターのようなイメージです。ただ、研究所の中の組織ですので、新しい分析法の開発や既存の分析法の改良などを通し、自分たちの技術を高めることをいつも意識しています。そのためにはバリデーションが重要だと考えていまして、自分たちがつくりあげた分析法の妥当性を確認する目的で、国内外の機関が実施している技能試験にも積極的に参加しています。

食品分析で国際的に有名な、英国のFAPAS(Food Analysis Performance Assessment Scheme =食品化学分析技能評価)にも挑戦しています。

消費者の目も厳しくなっていますので、食の安全・安心を守るためには科学的な検証がますます重要です。既に基準値が設定されている物質はもちろんですが、まだ国内に基準がない発がん性物質なども、やはり製品に含まれていない方が良いわけですから、そうした新しい対象に適した分析法の開発努力も続けています。」

◆加工食品にも対応できるオールマイティーなパツリン分析法を検討

─ ありがとうございます。
では今回、バイオタージの「ISOLUTE Myco」をご導入いただいた経緯ですが、カビ毒のひとつであるパツリンの分析でお悩みだったとお聞きしています。

秋場さん:
「食品分野においては、カビ毒の中でアフラトキシンとデオキシニバレノール、そしてパツリンの3つに基準値が設けられています。パツリンについては、2003年に食品衛生法に基づく清涼飲料水の成分規格として、リンゴジュースおよびリンゴ果汁について、パツリンの基準値:0.050ppmが定められました。ジュースなどについてはすでに分析法が確立されていて、酢酸エチルで液-液抽出し、脱水、濃縮し、再溶解させたものを液体クロマトグラフィー(HPLC)にかけるという手順です。夾雑成分が多いのが問題ではあるのですが、リンゴジュースならばそれほど難しいものではありません。

さらに私たちは2010年くらいに珪藻土カラムを用いた簡易法を確立しました。
これは、珪藻土を介して液-液抽出ができるので、手間が省けるという特徴があります。ただ、これらの分析法はリンゴジュースに関しては良いのですが、それがミックスジュースであったり、ピューレであったり、粉末であったりするなど、リンゴの加工食品にも対応できるかとなると、うまくはいかなかったのです。

国の基準で考えるとリンゴジュースに対応するだけでかまわないのですが、やはり自分たちが提供している商品の安全性を確認したいというのが最終目的ですので、加工食品にも対応できるオールマイティーな方法が必要だと考えました。
それで、新たなメソッド開発に取り組もうとしたのが今回の導入のきっかけでした。」

和光堂株式会社─ その取り組みに当たっては、「ISOLUTE Myco」以外にもいろいろな検討をされたのですか。

秋場さん:
「そうですね。液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS/MS)を使えば、そこで選択性が高くなりますから前処理もざっくりとしたもので済みますが、パツリンについてはMSを使用するまでもなくUV検出器で十分に測定が可能です。
邪魔をしている夾雑成分を除去すれば十分に検出できるはずという考えのもとに、固相で前処理をして精製度を上げようということで、まずは分子認識ポリマー(MIP)を検討しました。ちょうどそのころ、『ISOLUTE Myco』の発売も知りまして、アプリケーションノートを拝見するとパツリンに対応できるとありましたので、一緒に検討に加えることにしました。」

和光堂株式会社─ 結果はどうだったのでしょう。

秋場さん:
「ミックスジュースはMIPでうまくいったのですが、とくに粉末果汁には対応できませんでした。賦形剤のデキストリンが妨害をしていると考えられ、実際にデキストリンを分解する酵素を入れてやるとMIPで分析できるようになることを確認しています。

しかし、『ISOLUTE Myco』はピューレでも粉末でもそのような余計な手間をかけずに対応できましたので、こちらを選ばせていただいたという次第です。」

◆管理しやすく価格が安いことも利点

ISOLUTE Myco─ 実際に「ISOLUTE Myco」を使ってみて、どのような利点を感じておられますか。

秋場さん:
「そうですね、現在、別のカビ毒であるアフラトキシン類の分析では抗体カラムを使っています。これは抗原抗体反応を利用して分離しますので選択性は非常に高いのですが、使用期限が短くて管理がすごく難しいのです。また、価格も高いです。

それに対し、『ISOLUTE Myco』はポリマー固相なので管理しやすいですし、抗体カラムの高価なものに比べると価格は5分の1くらいですので、費用的なメリットは大きいですね。さらに、今回はパツリンの分析に使用していますが、アプリケーションとしてはほかのカビ毒にも使える可能性があります。まだ当社の方で本格的に確認・検証はしていないのですが、とても興味深いと思います。」

─ ご不満な点や改善してほしい点など、ご要望はありますか。

秋場さん:
「パツリンを対象にしている範囲では、きちんと分析ができていますので、これ以上の要望はありません。価格も安いし、デメリットらしき点は見当たりません。アフラトキシン類の分析に使用している抗体カラムも、デオキシニバレノールを含むトリコテセン類に使用している多機能カラムも、基本的には対象物質に合わせた専用カラムです。この点を考えると、1本でさまざまなカビ毒に対応できる『ISOLUTE Myco』は大変メリットが大きいと思います。

あえて要望を挙げるとするならば、充填剤の修飾基など詳細を開示してほしいです。固相の詳細はバイオタージさんの企業秘密のようですが、その固相がカビ毒を保持する原理が私たちにはよくわかりません。

原理や理屈がわかれば、私たちの側で新しい応用に気づく機会もあると思うのです。ひとりの科学者としては、そんなブラックボックスの部分に少しストレスを感じていますね(笑)」

◆さらにアプリケーションを広げたい

和光堂株式会社─ まだ発売したばかりの新しい充填剤ですので、現在は非公開にさせていただいています。時期が来ればお伝えできると思います。
最後に、今後のプランがあればお聞かせいただけますか。

秋場さん:

「次はぜひ『ISOLUTE Myco』でトリコテセン類の分析を試してみたいと思っています。実は、多機能カラムで若干苦労していまして、使い方が面倒で、指定された手順で実際にはうまくいくのですが、メソッドをみてもいまひとつ納得いかない部分があったりするのですね。再現性がもうひとつだとか、ちょっと釈然としないところもあります。ですので、『ISOLUTE Myco』に期待しています。」

― 弊社もまたサポートさせていただきますので、これからもどうぞよろしくお願いします。
今日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

記事掲載日:2014年10月23日
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導入製品

『カビ毒一斉分析前処理SPEカラム
ISOLUTE Myco』

URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/sample-preparation-products/isolute_myco/

カビ毒一斉分析前処理SPEカラム ISOLUTE Myco1種類の固相でさまざまな食品試料から複数のマイコトキシンを同時に抽出する固相抽出カラムです。
従来より使用されているイムノアフィニティカラムと比較すると安価で使いやすく、ポリマーベース固相のため特別な保存環境を必要とせず、さらに複数のマイコトキシンを一度に測定する一斉分析のアプローチが可能になります。

導入機関

和光堂株式会社

URL: http://www.wakodo.co.jp/

和光堂は、日本小児医学の創始者である弘田長博士が栄養不良で亡くなる赤ちゃんを何とか救いたいと奮闘した精神を、企業理念「私たちは乳幼児の健やかな成長と人々の健康を応援します」として引き継いでいます。国産で初めて開発した育児用ミルクやベビーフードなどの商品およびサービスを通じて、100年以上にわたり赤ちゃんの健やかな成長を見守り続けてきました。「安全・安心」をベースに独自の付加価値を付けた商品を提供しており、最近では成人女性・高齢者向け事業や海外事業など、新しい分野にも積極的に挑戦しています。

創業:1906年
資本金:29億1800万円
従業員数:514名
本社:東京