千葉大学 医学部附属病院

『LC-MS/MSによる
ビタミンD分析の前処理に
生体サンプル前処理改良型珪藻土
「ISOLUTE SLE+」を活用』

千葉大学 医学部附属病院

千葉大学大学院医学研究院と同医学部附属病院では、LC-MS/MS によるビタミンD分析法の開発を進めており、そのサンプル前処理工程では ISOLUTE SLE+ などバイオタージ製品が活用されています。疾患プロテオミクスセンターの佐藤守先生と附属病院検査部の石毛崇之さんにお話をうかがいました。

千葉大学 医学部附属病院
佐藤 守 先生
千葉大学医学部附属病院
疾患プロテオミクスセンター

──本日はお忙しいなか、ありがとうございます。最初にご研究の背景について教えてください。

佐藤先生
「研究のメインテーマはビタミンD分析法の開発と臨床応用です。その他、ステロイド系ホルモンの分析法開発にも取り組んでいます。病院での臨床検査に液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS/MS)という新しい分析機器を導入していこうと、立ち上げを頑張っているところです。

現在、臨床検査としては、ビタミンDは抗体を使った方法で活性型ビタミンDが測定されています。この方法は分析スピードも速くコストも下がってきたものの、抗体を使っているため、抗体の特異性が低い場合には色々な物質を測り込んでしまう可能性がありますし、活性が異なる他のビタミンD群を同時に測っている可能性もありました。

諸外国では、活性型ではなくビタミンDの貯蔵量を反映する25(OH)ビタミンDが主に測定されています。アメリカでは、さまざまなメーカーからビタミンD測定試薬が販売されているのですが、異なる試薬あるいは異なる分析機関で得られたそれぞれの測定値が一致しないという問題が生じているため、LC-MS/MSで定量を行うことが推進されています。それを日本でも実践しようというわけです。

ISOLUTE SLE+LC-MS/MSを使えば、個別の物質を正確に測ることができ、患者さんにとってより有用な情報を得ることができます。今まで診断基準のグレーゾーンだった幅が、狭まるという可能性もあるのです。」

石毛さん
「私は臨床検査技師ですが、臨床検査の分野では標準化という方法間・施設間差を是正する動きが盛んになっています。その為、精確な分析方法としてLC-MS/MSはとても重要です。」

佐藤先生
「LC-MS/MSは定量測定法の中で上位の方法となっています。LC-MS/MSで測定した値が絶対的な指標になり、この値が基準になっていくので、測定法を開発する側は責任重大です。」

◆イオンサプレッションまで考慮したポスター発表が魅力的でした

千葉大学 医学部附属病院──そのような中、前処理に弊社の「ISOLUTE SLE+」をお使い頂いています。どのような経緯でISOLUTE SLE+を導入されたのですか?

石毛さん
「2013年2月にアメリカで行われた学会に私が参加した際、ISOLUTE SLE+を用いたポスター発表を見ました。ビタミンDの分析法の発表はよく見かけるのですが、バイオタージのISOLUTE SLE+のポスターにはイオンサプレッション(測定対象物質のイオン化を妨げる現象)も低減するという内容が書かれていたので目に付きました。イオンサプレッションの低減まで取り上げている発表は他社ではあまり見たことありませんでしたが、ゆくゆくは絶対に必要な課題だろうと。そこで興味をもち、使ってみたいと思いました。」

佐藤先生
「帰国した後に彼が発注してくれていて、その後、国内の学会でバイオタージさんと話をしてからは、あっという間でしたね。」

◆水を排除し誘導体化試薬が使えたことがとても重要

──ISOLUTE SLE+に辿りつくまではいろいろ方法を試されたと思いますが、他の方法と比較してISOLUTE SLE+が良かった点を教えてください。

佐藤先生
「ISOLUTE SLE+を使う前は、タンパク質沈殿を試していました。タンパク質沈殿で夾雑物を取り除くというのはなかなか難しいですね。」

石毛さん
「ISOLUTE SLE+ を使うことで誘導体化試薬が使えるようになったことも大きいですね。前提として、なるべく作業工程を増やさずに安定した測定系を構築したいということがあります。これまでの方法に誘導体化を組み込もうとしたのですが、タンパク質沈殿法だと、サンプル中の水と反応して誘導体化試薬の方が駄目になってしまい誘導体化できないので、測定がなかなかできませんでした。タンパク質沈殿後に乾固すれば問題なく誘導体化できるのですが、それだと希釈してすぐ測定できるタンパク質沈殿法のメリットがなくなってしまいますからね。」

ISOLUTE SLE+佐藤先生
「確かに検査応用を考えるなら、求められる感度と作業工程のバランスは重要ですからね。タンパク沈殿で乾固しない場合はサンプルに含まれる水分はゼロにはなりません。数%でも必ず水が入ってしまっていました。それがISOLUTESLE+を使えば、すべて水分を除去して目的化合物を有機溶媒に落とすことができます。その結果、誘導体化の工程を問題なく取り入れて測定できたのは大変有り難いです。」

石毛さん
「低濃度の化合物だとサンプル量を増やすという方法もあるのですが、そうすると阻害物質も一緒に増えてしまいますし、使用する患者さんの検体量は少ないほうが望ましいです。」

佐藤先生
「操作方法もとても簡単で助かっています。

ISOLUTE SLE+は、一方方向だけに液を入れて出てくる液を回収するだけという点が最大の長所だと思いますね。固相抽出だと、コンディショニングして平衡化して、サンプルを入れて、洗い、溶出してと何段階もありますよね。ISOLUTE SLE+の場合、サンプルを入れて、次は溶出ステップなので、すぐに前処理が終わります。」

――PRESSURE+96、SPE Dry 96も合わせてご使用いただいていますが、使ってみていかがですか?

佐藤先生
「装置 がないと仕事にならないです(笑)。前処理でサンプル濃縮やドライアップは必ず窒素ガス下で行うのが標準です。そうしなければ測定物質が酸化してしまうことがあります。これはどうしても必要なので、前処理するなら逆にまずウェルプレート用の濃縮システムが必要と思っていました。ちょうどバイオタージさんがビタミンD分析の前処理に便利なISOLUTE SLE+と、前処理用の装置を両方販売されていた
ので、両方お願いしました。」

◆アプリケーションデータは失敗データも重要

──弊社に対する要望があれば、是非お聞かせいただけますか?

佐藤先生
「アプリケーションノートは既にいろいろなものを出していただいていますが、さらに広げていただけるとうれしいですね。掲載するアプリケーションはうまくいかなかった例も含めて、すべての実施した条件を掲載してくれると有り難いです。ある濃度で試したらこうでしたよ、と。アプリケーションノートって成功例ばかりで(笑)。ビタミンDはアプリケーションノートの記載通りに実施したらうまくいったのでそのまま採用しましたが、今行っているステロイド系の場合はしっくりきていない。うまくいかなかった時の条件検討に時間がかかるので、どちらかというと失敗例も含めてこうでしたよというのを出していただけたらいいですね。そのデータをみながら、こちらも検討できるので。」

千葉大学 医学部附属病院──発表用のポスターなどにはダメだった条件も掲載するのですが、アプリケーションノートにも載せておいたほうがたしかに便利ですね、社内で検討いたします。その他でご不便をおかけしている点などございませんか?

佐藤先生
「バイオタージさんは外資系とはいえ、情報をすぐに提供してくださるので不便は感じていません。先日も研究所(イギリス)に問い合わせをしていただいたようで、ポスターをいただきました。外資系のメーカーの場合、『本国に聞いたけど無理でした』という返答が結構多いんですよね。本国が駄目といえば日本も駄目ということで、外資系のつらいところだろうなと感じていました。でも、バイオタージさんのようにすぐに問い合わせて可能なかぎり情報を提供してくださると、信用できますよね。」

―― これからもお役に立てるよう、迅速対応に努めます。本日はお忙しいところ、誠にありがとうございました。

記事掲載日:2014年10月3日
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導入製品

『生体サンプル前処理用珪藻土
ISOLUTE SLE+』

URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/sample-preparation-products/tn_sle/

ISOLUTE SLE+ISOLUTE SLE+は、生体サンプルの分析前処理用に改良し、厳密な粒径コントロールとQC試験で回収率と再現性を向上させた、特殊な珪藻土を用いたサンプル前処理製品です。液液抽出をベースとした手法で、血漿や尿などの生体サンプルからタンパク質やリン脂質を除去し、ターゲット化合物を抽出します。

導入機関

国立大学法人 千葉大学

URL: http://www.m.chiba-u.ac.jp/

千葉大学 医学部附属病院昭和24年、当時千葉県内にあった千葉医科大学、千葉師範学校、東京工業専門学校など各旧制国立諸学校を包括し、新制の国立総合大学として発足、現在は9学部、大学院に11の研究科が置かれています。教職員は2908名、学部生定員は2320名、大学院研究科入学定員は博士課程259名、修士課程936名、専門職学位課程40名となっています(2013年)。佐藤守・医学部附属病院疾患プロテオミクスセンター助教、センターではプロテオミクス技術を基盤に疾患関連マーカーの探索・臨床応用に取り組んでいます。