株式会社新日本科学 薬物代謝分析センター

株式会社新日本科学 薬物代謝分析センター

薬物動態試験に
生体サンプル前処理用珪藻土
ISOLUTE SLE+ を活用

株式会社新日本科学 薬物代謝分析センター

株式会社新日本科学は、分析業務の拠点である和歌山県海南市の薬物代謝分析センターにおいて、新薬開発に伴う薬物動態試験(PK試験)のための生体サンプル前処理にバイオタージの「ISOLUTE SLE+」を活用しています。今回は、分析2グループ/チーム3のチームリーダー川端光彦さんと、薬物動態グループの戸田亜希子さんにお話をうかがいました。

株式会社新日本科学 薬物代謝分析センター
川端 光彦さん
株式会社新日本科学
薬物代謝分析センター

── 最初に御社の会社概要と薬物代謝分析センターの業務内容について簡単に教えてください。

川端さん
「新日本科学は、安全性試験を中心に、臨床薬理試験も含めて、医薬品開発過程における一貫した総合受託体制を確立している受託研究企業です。ここ和歌山県インテリジェントパークの薬物代謝分析センターは1998年に開設され、主に非臨床試験及び臨床試験における生体試料中の薬物濃度の測定を受託しています。その他,動物を用いた非臨床試験も受託しており、大きく4つのグループに分かれていまして、私は分析グループに所属しています。」

戸田さん
「ラジオアイソトープを使ったいわゆる薬物動態試験のほか、in vitroで薬物代謝試験などを行うグループもあります。」

◆少量の生体サンプルを処理できる点が業務にマッチ

── ISOLUTE SLE+ を使用されるようになったきっかけを教えてください。

川端さん
「まず、サンプル前処理には、主に除タンパク、液-液抽出、固相抽出の3種類の方法があります。ですが、液-液抽出は面倒なうえに液量が多くなるので敬遠されがちで、最近では除タンパクか固相抽出のどちらかでという傾向になってきています。しかし、固相抽出は処理工程が多くて面倒で時間がかかりますし、除タンパクは速いのですがきれいな試料が得られないなど、どちらにも悩ましい点がありました。その意味で、手間がかからずに液-液抽出ができて、よりきれいなサンプルが得られるISOLUTE SLE+ はとても優れた選択肢となっています。」

川端さん
「液-液抽出は、もともと社内では水と有機溶媒を同じ容器に入れて振るという通常の方法で行っていましたが、御社とは別のメーカーで珪藻土を使った液-液抽出カラムがあり、そちらで評価してみたのが始まりでした。ただ、その製品にはいくつかの問題点があり、初歩的な検討には役立ったのですが、実際の業務に使うには不向きでした。その後、巡り巡って、バイオタージのISOLUTE SLE+ の存在を知ったというわけです。」

── ISOLUTE SLE+ を採用した決め手ということになると思いますが、その他社製品の問題点とはなんだったのですか?

川端さん
「そうですね。以前に検討したものはサイズが大きくて、少量の生体サンプルに使うには不向きだったのです。バイオタージ製品は一般的に使用されている固相抽出プレートと同じ形状で、容量も少ないので、私たちの業務内容に合っていたというわけです。」

戸田さん
「他メーカーの製品は、前処理に使用するサンプル量が1mL以上のものだったのですが、ISOLUTE SLE+は最少で200μL程度から使用できるということで検討したのが最初でしたね。あとは、ウェルプレート状になっているので、非常に効率的に作業が進められることも高く評価されました。私たちの調べた限り、そうした要求を満足する製品はバイオタージ以外にはありませんでした。最初に紹介されたのは3年近く前だったと思いますが、2年前から実際の業務で使用しています。」

◆作業工程がシンプル

株式会社新日本科学 薬物代謝分析センター
戸田 亜希子さん
株式会社新日本科学
薬物代謝分析センター

── 受託機関としては、業務で顧客のサンプルを扱うことになりますから、使用する前処理製品の選定には気を使われますね。

川端さん
「そうですね。やはり、実績のないものには手を出しにくいですね。」

戸田さん
「医薬品開発には長い年月がかかりますから、1つのメソッドを立てると5年とか、長ければ10年以上というスパンで同じものを使い続けることになります。それで、長期間にわたり、同じ品質の製品を供給していただけるかということも気になるところでしたね。」

川端さん「今回の採用に当たっては、いろいろ細かいところもしっかり確認させてもらいました。例えば、化学的な製品ではない珪藻土がベースということで、ロット間の差があるのではと少し心配していたのです。しかしそれは杞憂でした。よく考えてみると、珪藻土は液-液分配をより効率的にするための支持体でしかないので、ロット差を生み出すような要素にはならないのですね。」

── 細かな点までご満足頂いているとのことで、ありがとうございます。ISOLUTE SLE+の利点はその他にもありましたでしょうか。

川端さん
「使用するステップがシンプルなのです。サンプルを測定機にかけるための前処理は人の手で行います。そのため、工程数が少ない方が、ミスが発生する可能性が少なくなるので好ましいわけです。普通、固相抽出ですと、溶液のアプライの前のコンディショニングや洗浄工程が入るので4~5段階のステップを踏みますが、ISOLUTE SLE+ はアプライしたあと、少し待って、あとは溶出という2段階だけです。作業でのトラブルが少なく、これが非常に大きな利点です。」

── 作業工程のシンプルさですね。

川端さん
「そうです。作業工程が多い固相抽出ですと、担当者によっても結果が変わってしまう場合があります。その意味でも、できるだけシンプルな方が望ましいですね。」

戸田さん
「ひとりが1日に100本から150本のサンプルを処理しますので、熟練の担当者でも、ばらつきや個人差を完全になくすことは難しいです。」

川端さん
「分析結果のばらつきが少なく、信頼性が高いということは重要な利点です。作業工程が少ないと、結果を乱す要素を減らすことにもなるのです。」

◆これだけきれいになるのは驚き

株式会社新日本科学 薬物代謝分析センター戸田さん
「私たちはサンプルがきれいになると表現するのですが、理想的には血漿の中からターゲットとして測定したい化合物だけを取り出したいわけです。ISOLUTE SLE+を使うと、少ない労力で、ターゲットを効率的に抽出できると感じています。」

川端さん
「経験的には、前処理の作業工程が多いほどサンプルがきれいになると思っていましたので、これだけシンプルな方法でできるというのは、ある意味驚きでした。」

戸田さん
「それに、液-液抽出で前処理を行うと、化合物によっては有機溶媒と水の混合で生成されたエマルジョンにより,得られた結果が大きくバラツクこともありました。しかし、ISOLUTE SLE+ではそうした問題が起きません。これも、測定結果の再現性が高い理由だと思いますね。」

◆ちょっとがまんして待つのがコツ

── ありがとうございます。弊社としましても、そのあたりをセールスポイントにしているので、ご理解いただいていることに感謝します。すでに2年以上お使いですが、使用する際の「コツ」などがあればご教示いただきたいのですが。

川端さん
「そうですね。珪藻土ですのでサンプルがスムーズに浸透します。固相抽出では、なかなか浸透しないサンプルなどがあるため、真空ポンプで吸引する工程が必要です。ところが、ISOLUTE SLE+は原理上、浸み込むのを待つというイメージなので、ほとんど吸引の必要がありません。最後にちょっと圧力をかけて落とすくらいという感覚ですね。」

戸田さん
「あとは、溶媒を分けて入れるということですね。例えば、1mLで溶出する場合、500μLずつ2回に分けるという一手間をかけると回収率が良くなります。それと、珪藻土にサンプルを吸収させる時間ですが、メソッドでは5分とありますが、気持ち長めにおくことで、不純物の溶出が少なくなり、、サンプルがきれいになるという効果を弊社では経験しています。」

川端さん「まあ、サンプルにもよりますが、ちょっとがまんして待つのがポイントと言えますね。」

── 逆に問題点などはありますか。

川端さん
「問題点というか、われわれとしての課題ですが、中間層ができにくくなり、選べる溶媒も増えたので、この製品の性能を十分に引き出すためには、さらにいろいろ検討する余地があると思っています。」

戸田さん
「例えば、以前の液-液抽出では水より比重の重い溶媒の使用は避けていましたが,この製品ならジクロロメタンもそのままダイレクトに使えます。そうしたことを含め、いままでほとんど使ったことのない溶媒が扱えますから、もっとトライアルが必要ですね。」

川端さん
「それから、原理上難しいかも知れませんが、溶出液の量をもう少し調節できれば、より良いものになると思います。最近は、動物愛護の観点から試料はできるだけ少なく採取して高感度で測るという傾向になってきています。できるだけ少量のサンプルを調製したいわけですが、先ほど述べたように回収率を高めるために溶媒を2回に分けるとなると、どうしても体積が増えてしまいます。多少ですが、気になるところではありますね。」

◆小さいサイズがあるとなお良い

戸田さん
「測定機器の感度も良くなっていますので、個人的にはもうワンサイズ小さいのが出ればいいなと感じています。血漿50μLを等倍で希釈して100μLで処理すれば、有機溶媒を1mLも流せば10倍量になります。いまは5倍量で流していますので、回収率でいうと結構な利点になります。」

── シリンジカラム型の大きいサイズはご用意しているのですが、御社としては逆に少量処理用をご希望ということですね。

戸田さん
「そうなんです。いまでは50μL以上の血漿を使うことはほとんどありません。そもそも、ISOLUTE SLE+ を採用したのも、少量のサンプルに対応していることが大きなポイントでした。ですが、化合物によっては溶出量の問題でISOLUTE SLE+が選択できず、従来のように試験管を振とう機で振っているケースもまだ残っています。液-液抽出の対象ならISOLUTE SLE+ を試してみようという動きは社内的に広がってきているので、より小さいものが発売されると良いと思います。」

── わかりました。貴重なご意見ありがとうございました。最後に、今後のご予定についてお聞かせください。

川端さん
「バイオタージ製品では、TurboVap(窒素吹き付け濃縮装置)を複数台導入し、窒素乾固ではもっぱらこれを利用させていただいています。弊社では動物試験をメインとする安全性研究所(鹿児島)にも測定ラボを立ち上げておりまして、そちらもスタッフと設備を充実させていく予定ですので、その中でTurboVapの導入も考えています。」

── お忙しいところ、長時間ありがとうございました。

記事掲載日:2013年8月5日
PDFファイルダウンロード(510KB)

導入製品

『生体サンプル前処理用珪藻土
ISOLUTE SLE+』

URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/sample-preparation-products/tn_sle/

ISOLUTE SLE+ISOLUTE SLE+は、生体サンプルの分析前処理用に改良し、厳密な粒径コントロールとQC試験で回収率と再現性を向上させた、特殊な珪藻土を用いたサンプル前処理製品です。液液抽出をベースとした手法で、血漿や尿などの生体サンプルからタンパク質やリン脂質を除去し、ターゲット化合物を抽出します。

導入機関

株式会社新日本科学式会社

URL: http://www.snbl.co.jp/

新日本科学(SNBL)は、1957年に国内初の医薬品開発の受託研究機関として鹿児島に誕生しました。以来、「前臨床試験受託事業」において確固たる事業基盤を築き、その後、「臨床薬理試験受託事業」、「薬物動態・分析受託事業」、「臨床試験受託事業」、「SMO事業」などを包含して、国内唯一の医薬品開発過程における一貫した総合受託体制を確立しています。近年では、優れた発想や卓越した才能をもち、かつ当社の企業理念を共有できる研究者やバイオベンチャーを支援し、協働関係を構築する新事業領域、「トランスレーショナル リサーチ事業」にも積極的に取り組んでいます。

設  立:1957年
資本金:53億9105万円
従業員数:1103名
本  社:東京、本店:鹿児島市