文献紹介
マイクロウェーブ加熱を利用したペプチド固相合成について
-マイクロウェーブペプチド固相合成に関する包括的検討-
バイオタージのペプチド合成装置(Biotage Initiator, SyroWave)やペプチド合成用PEGレジン(ChemMatrix)を含む多数の装置や試薬について包括的な検討を行い、マイクロウェーブ加熱を利用したペプチド固相合成の利点や注意点、今後の展望を述べています。マイクロウェーブペプチド合成の効果と理論、反応条件についても詳しく述べられているreview paperです。
Microwave heating in solid-phase peptide synthesis.
Chem Soc Rev. 2011 Oct 20.
Pedersen SL, Tofteng AP, Malik L, Jensen KJ.
SourceUniversity of Copenhagen, Faculty of Life Sciences, IGM, Section for Nanobioscience
Received 10th August 2011, DOI: 10.1039/c1cs15214a
Abstract(和訳):
固相合成における有機化学の貢献はペプチドの合成にとどまらず、小さいタンパク質の合成方法の確立にも寄与してきた。固相合成は従来研究室スケールまでであったが、最近では工業的なスケールでも行われつつある。現在ではペプチド合成のカップリングやアミノ基の脱保護にマイクロウェーブ照射を利用することが一般的になってきている。マイクロウェーブの利用は、合成時間を劇的に短縮し、粗ペプチドの純度を向上させた。マイクロウェーブ照射はβ構造のシーケンスや立体的に難しいカップリングに有効であることが証明されている。しかし、マイクロウェーブは万能ではなく、ラセミ化が懸念されるアミノ酸や特殊なアミノ酸には必ずしも有効ではない可能性がある。ここではペプチド合成のためのマイクロウェーブ照射の進歩を、重要なアプリケーションおよび系統的調査と一般的なプロトコルに焦点をあてて包括的に報告する。
内容の紹介:
本文中ではマイクロウェーブ合成装置の発展の経緯が紹介されています。BiotageのInitiator、SyroWaveを含む、各社のマイクロウェーブ合成装置が紹介されており、その違いについても記載されています。また、マイクロウェーブ合成の効果と理論、反応条件についても言及しています。
レジンについては、Polystyrene, TentaGelとChemMatrixの違いが示されています。ChemMatrixは他のレジンよりもペプチドの凝集が起こりにくく 、大きく膨潤し、少ない試薬で合成することができると記載されています。
固相ペプチド合成におけるマイクロウェーブ加熱は非天然型アミノ酸の配列や難しく長い配列の合成を可能としたことで、ペプチドやタンパク質のアプリケーションの新しい時代の始まりを導く可能性がある、とまとめられています。
PubMedリンク
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22012213
使用製品:
SyroWave 全自動マイクロウェーブ&パラレルペプチド合成装置
Initiator マイクロウェーブ合成装置