【vol.34】フラッシュカラムクロマトグラフィーのステップグラジエントを用いたペプチドの精製

Biotage Japan ペプチドブログvol.34

December 8, 2020
Elizabeth Denton

 

フラッシュクロマトグラフィーは、比較的大きな粒子を用いているためHPLCに比べて分解能は低くなりますが、ペプチド精製に応用できる可能性があります。

分解能の低さをデメリットと考える人もいるかもしれませんが、ロード量が大幅に向上するため、私はフラッシュ精製をうまく利用する理由があると思います。では、どうすれば従来の逆相HPLC法でしばしば達成される高い純度レベルを達成できるのでしょうか。

今回は、ペプチドの精製にステップグラジエントを使用して純度の向上を検討することにしました。

ステップグラジエントは順相での低分子化合物精製でよく利用され、一般的に精製効率を向上させながら、全体の精製時間を短縮することができます。

移動相添加剤の変更や混合固定相の使用など、精製全体の質を向上させるための戦略をすでにいくつか紹介しましたが、見落としがちなのがステップグラジェントの使用になります。

私は、リニアグラジェントで精製するのに苦労したペプチドの経験から、この実験的な道を歩み始めました。

いくつかの不純物は分離されたものの、分析用HPLC-MSでは、不純物がまだサンプル中に存在していることを示すフラクションが確認されました(図1)。

リニアグラジエントでのフラッシュ精製のクロマトグラムと精製後のLCチャート

図1:最適化されたリニアグラジエントを用いたアミノ酸33残基のペプチドの精製(左)および分析用HPLC-MSの評価(右)。フラクション9と10は分析前に合わせて、濃縮させた。顕著な生成物ピーク(アスタリスクで表示)のテーリングは、不純物が共存していることを示唆している。

ステップグラジエントをデザインするために、Biotage® Isolera™ Dalton 2000のOptimizeボタンを使用しました。この機能により、リニアグラジェントで集めた目的のピークを選択し、選択した目的の化合物に最適化したステップグラジェントを設計することができます。

この機能をペプチド精製に使用する場合は、ソフトウェアがカラムに化合物の保持がうまくいかないような初期条件を選択する可能性があるため、少し注意が必要です。しかし、目的のペプチドを溶出させるためにどの濃度のアセトニトリルを使用すべきか、参考になることもあります。

最初の試みとして、アセトニトリル濃度30%の初期条件から55%(最適化ソフトウェアが推奨する濃度)までジャンプして、1ステップで精製目標を達成できると単純に考えていました(図2)。しかし、私は間違えていました。アセトニトリル濃度を高くしたことで、早期に溶出する不純物が分離しませんでした。

その結果、不純物を含むすべて化合物が溶出することになりました。しかし、ポジティブな面としては、後から溶出する不純物が除去され、ステップグラジエントをさらに最適化するための出発点を得ることができました。

ステップグラジエント(MeCN 30%->55%)でのフラッシュ精製のクロマトグラムとLCチャート

図2:ステップグラジェントを用いたアミノ酸33残基のペプチドの精製(左)および分析用HPLC-MSによる評価(右)。ペプチドは、アセトニトリル30% (3 CV) を維持して実施した後、アセトニトリル55%(6 CV、自動伸長) にステップして精製しました。リニアグラジェントよりも精製純度は多少向上していますが、以前は分離していた早期溶出の不純物が溶出するようになりました。

様々なグラジエント条件を検討しました。ステップを追加し、さらにステップ中に保持するアセトニトリル濃度を変更し、より2段階目の高いアセトニトリル濃度にステップする前の初期不純物をより完全に分離できるようにしました(図3)。しかし、一つ変えていないのは、それぞれのアセトニトリル濃度でのカラムボリュームについては一定に保つことでした。

私は、カートリッジがこの条件で完全に平衡化され、アセトニトリル濃度を再度大幅に変更する前に化合物が溶出できるように、各ステップを3カラム容量分保持することを選択しました。

ステップグラジエント(上;MeCN 30%->45%->55%)(下;MeCN 30%->45%->53%)でのフラッシュ精製のクロマトグラムとLCチャート

図3:ペプチド精製でのステップグラジエントの最適化。最初の最適化では、追加の中間ステップを追加し、アセトニトリル30% (3CV), 45% (3CV) および 55% (3CV) (上) で実施しました。2回目の最適化では、追加の中間ステップを維持し、アセトニトリル30% (3CV), 45% (3CV) および53% (3CV) (下)を組み入れました。それぞれの精製で、最終的なサンプル純度が向上していることがわかりました。

まだ完璧とは言えませんが、最後のステップグラジエントを試したところ、最初のリニアグラジエントと比較して、ペプチドの最終純度は著しく改善されました(図4)。最も興味深いのは、アセトニトリル濃度を55%ではなく53%で保持することで、濃度を少し下げたことで純度がどれだけ向上したことです。

これは、アセトニトリル濃度のわずかな変化で、ペプチドの純度を大幅に向上させることができることを示唆しています。

ステップグラジエント(MeCN 30%->45%->53%->60%)でのフラッシュ精製のクロマトグラムとLCチャート

図4:3つのアイソクラティックステップによるペプチド精製。精製には、アセトニトリル30% (3CV), 45% (3CV), 53% (3CV), 60% (3CV) で実施しています。この精製により、これまで評価した条件の中で最も純度の高いペプチドが得られました。

これらの結果は、ペプチド精製にステップグラジエントを使用することの有用性を明確に示しました。低分子化合物精製で実現される時間短縮は今回も達成されませんでしたが、最終的なペプチド純度の向上は精製時間の大幅な削減につながるでしょう。

ペプチドの精製にステップグラジエントを使用して、どのくらい純度が改善されましたか?

フラッシュクロマトグラフィーで精製時間を短縮し、高い純度を達成する方法についてもっと知りたいですか?

ペプチドのフラッシュ精製について詳しくご覧になりたい方は、リンクからダウンロードしてください。

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