December 21, 2020
Elizabeth Denton
ペプチドは医薬あるいは医学界や製薬会社から注目されるようになり、製造コストへの関心も高まっています。製造コストには、合成に使用する試薬やDMF、NMPなどの溶媒の費用だけでなく、反応終了後の廃棄も含まれます。廃棄物の削減、有害な溶媒の使用削減など、化学の「グリーン」な特性を向上させようという意欲が高まっており、今回は固相ペプチド合成に使用する代替溶媒を評価した最近の研究成果について紹介します。
グリーンケミストリーの原則は、1990年代後半にJohn WarnerとPaul Anastasが提唱したものになります。この原則は、一般的に環境への負荷を低減し、実施される化学反応などの全体的な安全性を高める戦略として定義されます。ペプチド合成で使用されるDMFとNMPはどちらも危険な化学物質とみなされ、その使用と廃棄には特別な注意を払うことが推奨されています。
最近のペプチド会議で、固相ペプチド合成の代替溶媒として、特に2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)とシクロペンチルメチルエーテル(CPME)が発表されていました(図1)。2-MeTHFとCPMEは、いずれもメルク社が毒性評価を行い、DMFやNMPよりも毒性が大幅に低いことが判明しています。
図1: 2-メチルテトラヒドロフラン(左)とシクロペンチルメチルエーテル(右)の構造。
しかし、毒性学的効果に基づいて溶媒を変更する前に、アミノ酸やカップリング試薬の一般的な溶解度、樹脂の膨潤能力、そして脱保護反応やカップリング反応における反応効率の代替溶媒の影響を検討する必要があります。
スペイン・バルセロナでペプチド合成を研究しているAlbericioグループは、これらの懸念事項を評価するいくつかの論文を発表しており、その内容について紹介します。
最初の報告では、DMFの代替となりうるいくつかの溶媒の溶解度について評価しています。最終的には、2-MeTHFがAib-enkephalinの合成において最も高い純度と、ジペプチドZ-Phg-Pro-NH2において最もラセミ化が抑えられる可能性について報告しています。これは幸先の良い結果でした。
2つ目の報告は、2-MeTHFを単独で、あるいは洗浄工程においていくつかのGreen Solventを併用したメソッド開発に、より焦点を当てたものです。興味深いことに、PEG樹脂で合成されたペプチドは、2-MeTHFを主溶媒として使用した方が高い純度で合成できることがわかりました。この条件は、ポリスチレン樹脂で合成されたペプチドでは改善した様子はありませんでした。この論文中で、著者らは、これらの溶媒を使用したFmoc脱保護反応で高い効率を得るためには最適化が必要であることを指摘していました。
これについては、さらに第3報で評価を行っています。この論文では,2-MeTHFとCPMEだけでなく,Green Solventの基準を以前満たした他の溶媒についても使用しました。
カップリング反応とは異なり、20%ピペリジン溶液を使用したFmoc脱保護条件は溶媒の選択に大きく影響されることが判明しました。実際、2-MeTHFもCPMEも、Fmoc脱保護で優れた性能を示す溶媒ではありませんでした。この論文では、新しい溶媒が標準的な固相ペプチド合成法に広く取り入れられるようになるまでに必要な最適化のレベルを明確に示しています。
これらのデータから、私自身のペプチド合成、特にマイクロウェーブ加熱で合成されたペプチドについて、これらの溶媒をさらに評価する意欲が湧いてきました。
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