【vol.4】フラッシュクロマトグラフィーによるペプチド精製-初心者の体験

Biotage Japan ペプチドブログ vol.4

May 3, 2016
Elizabeth Denton

 

ちょうど私の前に何人も同じようなペプチドケミストがいたように、私はペプチドケミストとして逆相HPLCで私自身が合成したペプチドの精製方法を学びました。HPLCの前で何百時間もサンプルを注入し、フラクションピークを収集しているときには、合成したペプチドをレジンから切り出した租生成物を精製するために他の方法を使うことは考えられませんでした。実際、HPLCで精製しているあなたに何か他のことをやってみるように説得するのは難しいでしょう。しかし、私はここで何か新しいことにとトライしています。幸運を祈っています!

 

ここでは、フラッシュクロマトグラフィーを用いて新しいペプチドサンプルを精製した経験について述べていきます。

 

フラッシュクロマトグラフィーとは何か? ペプチド精製のために現在行っている方法よりも、なぜこれが優れているのだろうか。私はあなたが合成した“すべて”のペプチドをカラムへインジェクションできまるといったが、あなたはこの意味を理解しているだろうか? その方法でペプチドは精製できますか? 本当に? 私が合成に苦労して手に入れたペプチド(はい、マニュアルでの固相ペプチド合成の楽しさを味わってきました。)のうち、どのくらいがこのシリカのカラムに詰まるのでしょうか?私が確実に実行できてきたクロマトグラフィーのグラジエントは、フラッシュシステムにどのようにしてマッチするのだろうか。HPLCカラムのようにカートリッジを再利用きますか? 私も別のソフトウェアのセットを覚えなければならないということですか?初回のチャージ量を上げつつボーナスのような大量精製で実施することはできますか?

 

ありがたいことに、私の研究室には、アシストTMソフトウェアを備えたバイオテージのIsoleraTMが設置されていました。フラッシュクロマトグラフィーの経験が非常に少ないユーザーのためのソフトウェアであり、アシスト機能により簡単に道筋立てて進めることができます。

 

オレンジのボタンは、メソッド設定の各ウインドウを通して指示し、ユーザーがあまり労力を使わずに基本的なクロマトグラフィーのメソッドを生成します。どんなカートリッジを使うべきかさえ教えてくれます!

 

私はしばらく間いくつかのジェネリックペプチドを取り扱うこととし、それを精製して全く異なる視点でアプローチすることにしました。この特異的ペプチドに関するこれまでのクロマトグラフィーの知見はほとんどないので、私はこの系に移動相のグラジエントを明らかにさせました。初期設定のグラジエントは10%アセトニトリルで1カラムボリューム(CV)保持し、10CVまでにアセトニトリルの濃度を10%から100%に上昇させ、最後に100%アセトニトリルでカラムをさらに2CV洗浄します。すべての工程に要する時間は25分未満で、移動相の消費はわずか400 mLでした!私は、ソフトウェアによって提示されたカラムの選択肢から、最小のBiotage® SNAP-KP-C18 12 g C18(275mgの容量)のカートリッジを単純に選択し、カートリッジへ移動相を充填させ、私のペプチド約20mgをDMSOに溶解してカラムへ注入し、プレイボタンを押して精製を実施しました。図1にその結果を示します。

01_MSK24mer_10to100_10CV

図 1:通常の逆相のグラジエントは、10カラムボリューム(12分間)にわたってアセトニトリル濃度を10%から100%に上昇させ、これは毎分約7.5%のグラジエントに相関します。

うーん、いまいちかな? 今回の精製ではあまり良好な分離にはなりませんでした。正直なところ、私はこの精製に先立って数週間、一回のフラッシュクロマトグラフィーでペプチドが完全にクリーンになるとは思っていませんでした。幸いなことにSNAP-KP-C18カラムは再利用可能なため、精製条件の最適化に同じカラムを使用できます。私は目的のペプチドを溶出するためにはどのようなグラジエントにするかを検討しました。このフラッシュクロマトグラフィーを改善するため、全体作業時間を維持したまま、あるカラムボリュームでのアセトニトリル濃度を変更し、グラジエントを再調整しました。

 

新しいグラジエントは標準的なHPLCグラジエントによく似ており、以前のHPLCでの方法を修正する( modifying my previous HPLC methods )よりはるかに容易でした!最初の検討でペプチドの分離は改善され、私が存在を予想した複数のペプチドが存在することが明らかになりました。しかし、それぞれのフラクションピークでの分離能は、まだ改善の余地がありました(図2)。

02_MSK24mer_10to50_10CV.emf

図 2: アセトニトリル濃度が10カラムボリュームで10%から50%に上昇し、その後短時間にカラム洗浄と再平衡化を行う移動相グラジエントを改善した結果。

しかし、標準的な逆相HPLCにおけるグラジエントの最適化について考えました。そこで次にグラジエントをさらに5つのCVに拡張しました。これは思った通り改善し、分離能を示しました(図3)。これは、いいですね!私の標準的なHPLC分離能最適化の戦略はまだ有効であると考えられ、後で別の議論のためにグラジエント最適化について省略します。

03_MSK24mer_10to50_15CV.emf

図 3: アセトニトリル濃度が15カラムボリュームにわたって10%から50%に上昇する移動相グラジエントを改善した結果。

とにかく本当に問題のないペプチドを実験している限り、有機合成用のフラッシュ精製戦略書のページをとり、ステップグラジエント を試してみましょう。低分子精製の際によく用いられるこの方法は、従来の直線的なグラジエントに必要なカラムボリュームよりも少ないカラムボリュームで分離を改善するためにアイソクラティックホールドを利用していますが、ペプチド精製ではあまり利用されていません。私はソフトウェアの最適化ボタンを使って、アイソクラティックホールドを挿入するアセトニトリル濃度を決定します。ペプチドサンプルを少し多く注入し、プレイボタンを押します! 私は第二ステップグラジエントで小さなピークを完全に解消できましたが、この特定サンプルでは分離は改善しないようでした(図4)。これは、将来、私が研究しているペプチド混合物からより純粋なペプチドサンプルを抽出するためには興味深い戦略かもしれません。

04_MSK24mer_step_14CV.emf

図4:ステップグラジエント精製の結果。

総じて、これらはペプチド精製のための楽しい学びになりました! このソフトウェアは非常に簡単に学ぶことができ、その後、私が望む方法で変更して拡張されていきました。精製は良くなったかもしれませんが、私がペプチドをきちんと扱うことで精製も改善すると予想しています。たとえクロマトグラフィーが改善されなかったとしても、1つのカートリッジにほぼ合成したすべてのペプチド粗生成物をロードし、非常に速やかに適度な純度を達成することができます。完全な純度を達成するためにはHPLCで数回のロードを実施します。最も重要なことは、上記で説明したフラッシュクロマトグラフィー精製は、約90分のリアルタイムで完了することができ、それは完全に未知のペプチドに対するHPLCグラジエントを最適化するため3時間半の一部でできることです。もし精製プロセスのスピードアップ以外に何もない場合であれば、今後も、フラッシュクロマトグラフィーによるペプチド精製の有用性を探索していきます! 非常に高い純度を要求するサンプルについては、確かに最終精製段階にHPLCを利用します(このロード回数は比較的少なくなります)。

 

あなたのペプチドサンプルを精製するためにフラッシュクロマトグラフィーシステムを使用した最初の経験はどのようなものでしたか?

 

高純度のペプチドサンプルを得るための逆相フラッシュクロマトグラフィーの使用について詳しく知るには、下のリンクをクリックしてください。

日本語化:2020年9月
ウェブのみ一部修正:2024年8月
PDFファイルダウンロード(2020年9月, 250KB)

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