【vol.40】フラッシュクロマトグラフィーのメソッドを短くすることはできますか?

Bob Bickler

 

「時は金なり」という格言は誰もが知っています。 これは特に製薬業界に当てはまります。医薬品を市場に出すまでのスケジュールは10年以上かかり、数十億ドルの費用がかかることがあります。このような背景から、創薬から上市までのプロセスを迅速化できることはすべてコスト削減につながります。

過去の投稿で、この目標を段階的に達成するために活用できるいくつかのテクニックについて触れました。その中には、ステップグラジエントも含まれています。今回お話ししたいのは、より簡単で同様に効果的なもう一つのアプローチ、つまり、短いリニアグラジエントです。

ほとんどのフラッシュクロマトグラフィーメソッドは、10カラムボリューム (CV) 以上のリニアグラジエントです。 このグラジエントの長さは精製に必要な長さを上回る場合が多く、時間と溶媒が無駄になります。

実行時間と溶媒を削減する優れたテクニックは、前述のステップグラジエントです。私はステップグラジエントのファンですが、逆相フラッシュ精製では展開が難しい場合があります。逆相フラッシュ精製は、ますます人気の高まっている精製テクニックです。

薄層クロマトグラフィー (TLC) は、順相 (シリカカラム) クロマトグラフィーのリニアグラジエントおよびステップグラジエントの両方において優れたメソッド開発ツールです。 しかし、逆相メソッド開発での有用性は限られています。高い水溶性の移動相では疎水性表面の濡れ性の問題があるからです。

多くのケミストにとって、逆相フラッシュクロマトグラフィーメソッドは、HPLCシステムから転用するか、試行錯誤によって作成することになります。これらの精製メソッドは、特にHPLCシステムから転用したリニアまたはイソクラティックメソッドの場合、CVベースではなく時間ベースであるため、必要以上に長くなる可能性があります。

精製目標(純度/スループット)や、目的の化合物と最も近い溶出副生成物との分離能によっては、リニアグラジエントを短縮することでニーズを満たせる場合があります。ただし、メソッドのグラジエントの長さを短くするだけでは、最善のアプローチとはいえません。グラジエントの開始と終了の%B溶媒を維持し、グラジエントの長さを短くすると、グラジエントの傾きが変化し、溶出化合物間の分離能(分離量)が低下して結果に悪影響を及ぼす可能性があります(図1) 。

図1.60%-100%のグラジエント10CVと5CVの比較

図1. スロープを考慮せずにリニアグラジエントを短縮した場合の影響は、分離の低下です。上-4%B/CV。下 -8% B/CV。

分離能の低下を最小限に抑えるには、精製メソッドを短縮する際に開始 %B、終了 %B、またはその両方を調整して、グラジエントスロープ(%B/CV)を一定に保つ方がはるかに望ましいです。 グラジエントの長さは、目的に合わせて調整できます(図2)。

図2.4%/CVのスロープでグラジエント、10CV,7.5CV, 5CVの時間で精製した時のクロマトグラム。7.5CVはProductと直前の不純物ピークが完全に分離しているが、5CVの方はProductの直前の不純物ピークがわずかに含まれ分離しきれていない

図2. 一定の傾きにおけるグラジエントの長さの影響。

化合物の分離は、カラムメディア上での化合物の滞留時間と移動相におけるその化合物の溶解性のバランスであることを忘れないでください。グラジエントを短くすると、グラジエントの傾きを一定に保った場合でも分離が低下することがあります。

図2のデータから、元のメソッドの4%/CVのグラジエントを維持することで、7.5 CVのグラジエントでも完全な分離が達成されました。プロダクトの純度目標によっては、5 CVのグラジエントでも十分な長さのランになる可能性があります。

これらの短いグラジエントの利点には、精製時間と溶媒使用量の両方の削減が含まれます(表1)。

表1. 一定のスロープにおける短いリニアグラジエントで時間と溶媒を節約できます。

図3.メソッドの比較テーブル。グラジエント10CVで溶媒量117mL/メソッド総時間5.85min, 7.5CV-94.5mL/4.73min, 5CV-72mL/3.60min

したがって、精製時間や溶媒を減らす必要があり、最初の分離で十分な分離能が得られる場合は、スロープを維持したままグラジエントの長さを短くすることを検討してください。

上記の例はすべて、Biotage® Selekt Enkelシステムで、Biotage® Sfär C18カラム6グラム、20 mL/minで操作したものです。

フラッシュクロマトグラフィーの詳細については、下記ボタンからホワイトペーパーをご覧ください。

元の記事;How short can I make my flash chromatography method? (biotage.com)

日本語化:2024年9月
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