biotage-japan 有機化学ブログ vol.5

Bob Bickler

 

粗反応混合物をドライローディングすることで精製結果を劇的に改善できることがあります。この話題は何度かブログで書きましたが、再度取り上げるほど重要です。

なぜか?液体ローディングがどんなに便利でも、この手法には以下のような問題があるからです。

  • カラム上部での液こぼれによるサンプルロスの可能性
  • 反応混合液の溶媒強度に対する注入溶媒の強度による保持の低下
  • 注入溶媒の極性によるバンド幅の拡大

現在ドライローディングを使用しているのであれば、それは素晴らしいことです!そのまま続けてください。しかし、最適なドライロード吸着剤を使用していない可能性があるので、このまま読み進めてください。

ドライローディングの典型的なロジックは、シリカカラムクロマトグラフィーにはシリカまたは珪藻土を使用し、逆相フラッシュ精製にはC18吸着剤を使用することです。これらの選択肢は有効ですが、イオン交換メディアの使用など、精製結果をさらに改善できる他の選択肢も存在します。

例えば、無水イサト酸+ベンズアルデヒド+α-メチルベンジルアミン(2 mmol scale)から生成した反応混合物の精製について考えてみます。この反応では、生成物といくつかの副生成物が生じ、過剰の未反応ベンズアルデヒドがあります。

反応混合物を乾燥させ、メタノール(840 mg RxN mix/10 mL MeOH)に再溶解した後、12グラムのC18フラッシュカラムに1 mL注入(84 mg)すると、図1のクロマトグラムが得られました。

図1.液体で84 mgを1 mLで注入した時の逆相精製のクロマトグラム

図1. 12グラムのBiotage® Sfär C18カラムに反応混合液をロード(1 mL)。

1 mLの注入はこのカラムサイズでは量が多いですが(カラム内容積17 mLの6%程度)、サンプル注入量の増加というドライローディングの利点を証明するのに役立ちます。特に大量の液体サンプルを注入する場合、クロマトグラフィーの結果に影響が出ます。この例では、最初のピーク(過剰なベンズアルデヒド)の形が崩れており、生成物のピークがベンズアルデヒドからの分離を著しく低下させるほど前に出ているため、回収された生成物の純度が低下しました。

慣例では、逆相フラッシュクロマトグラフィーの結果を得るには、C18メディアによるドライローディングが最良の選択であるとされています。実際、図2に示すように、この方法はうまく機能します。

図2.C18ドライロードメディアに84 mgを1 mLで注入した時の逆相精製のクロマトグラム。

図2. C18ドライロードメディアを用いた反応混合物の精製。

逆相ドライローディングは、シンメトリーな溶出バンドと化合物の保持率の向上により、液体注入法によって生じる問題を解消しました。また、生成物と過剰なベンズアルデヒド、および後続副生成物との分離能も向上しました。逆相ドライローディングメディアを使用するもう一つの利点は、移動相に不溶な不純物を結合し、メインの精製カラムを保護することです。

C18ドライローディングによりクロマトグラフィーが劇的に改善されたことは明らかですが、バルクシリカしか入手できない場合はどうすればよいのでしょうか?もちろん使用できます。実際、シリカドライローディングメディアを使用することで、さらに良い結果が得られるかもしれません。なぜならば、シリカは非常に極性の高い吸着剤であるため、極性の高い逆相溶媒を使用した場合、C18よりも容易に吸着した粗反応混合物を放出するからです(図3)。

図3.順相ドライロードメディアに84 mgを1 mLで注入した時の逆相精製のクロマトグラム。

図3. ドライロード吸着剤としてシリカを使用した粗反応混合物の精製。

この結果は、多段階合成において重要な要素である生成物の収率を高めることを意味します。この例では、生成物のピークはC18ドライロードの場合よりも10%以上高くなっています。そのため、シリカは逆相フラッシュに非常に適したドライロードメディアです。逆に、同様の結果の改善を目的とした順相シリカカラム精製には、C18メディアをドライロードしてみてください。

イオン交換体を含む、その他のドライロードメディアのオプションもあります。イオン交換体は、過剰な酸や塩基を捕捉し、この反応におけるベンズアルデヒドのような未反応の原料を減少または除去するために使用できます。アルデヒドは第一級アミンと反応するため、理論的にはアミンドライロード吸着剤は乾燥粗生成物中の過剰なベンズアルデヒドの量を減少させるはずです(図4)。

図4.一級アミンを担持したドライロードメディアに84 mgを1 mLで注入した時の逆相精製のクロマトグラム。

図4. 一級アミンドライロード吸着剤(ISOLUTE® NH2)を用いた粗反応の逆相精製。

実際、ベンズアルデヒドの濃度(ピークの高さ)は、C18ドライロード精製と比較して半分程度に抑えられています。また、アミンドライロードでは、生成物ピークの後ろにショルダーが見られることから、生成物ピークに潜在的な汚染物質が含まれていることが明らかになりました。

多くの情報をお伝えしましたが、異なるドライロードメディアが精製にどのような影響を与えるかを理解することは、反応の精製を最適化するために役立ちます。

この記事で使用した製品:

  • Biotage® Selekt Enkel
  • Biotage® Sfär C18 column, 12-gram
  • Biotage® DLV, 10-gram
  • Biotage® KP-Sil
  • Biotage® KP-C18-HS
  • ISOLUTE® NH2

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元の記事;How to choose dry load media (biotage.com)

 

参考情報

  • When should I use dry loading instead of liquid loading with flash column chromatography? (biotage.com)

日本語化:2024年7月
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