【vol.24】フラッシュカラムクロマトグラフィーでTLC分離を再現できないのはなぜですか?

有機化学ブログ vol.24

November 21, 2019
Bob Bickler

 

合成を実行し、反応混合物を精製することになりました。薄層クロマトグラフィー (TLC) を使用して分離を確認しましたが、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製しようとすると、目的化合物と不純物を分離することができません。では、何が起こっているのか(あるいは起こっていないのか)。

 

今回は、なぜ TLC から移行できない分離があるのかについて、その理由をご紹介します。

 

では、このシナリオでは何が起こっているのでしょうか? クロマトグラフィーの分離に影響を与える主な要因は選択性です。したがって、分離が目標に到達していない場合は、分離の選択性を改善する必要があります。

 

では、どのようにして選択性を高めるのでしょうか? 選択性に影響を与える要因、すなわち溶媒の選択、メディアの選択、グラジエントの傾き に対処することです。以前にもお話したように、溶媒の選択 は分離の最適化、特に順相シリカ精製において非常に重要です。

 

極性のモディファイアとしてメタノールを使用した場合、TLC で化合物を分離できても、フラッシュ精製では プロトン性が高すぎる 可能性があります。この特殊な問題の理由は、TLC では展開溶媒の移動速度が異なり、極性溶媒は非極性溶媒よりも保持されるからです。 フラッシュカラムクロマトグラフィーでもこの現象は起こりますが、フラッシュカラムは通常、グラジエントを実行する前にあらかじめ平衡化されているため(TLC プレートは乾燥状態で使用)、実際のフラッシュクロマトグラジエントは TLC で見られるグラジエントとは異なります。

 

では、メタノール系溶媒を使用する場合、フラッシュ用に 平衡化していないシリカカラム を使用すべきでしょうか? 選択肢の 1 つではありますが、非平衡化カラムでは精製時の発熱量が大きく、さらに大きな問題(溶媒の加熱、保持損失、分離損失)を引き起こすため、この方法はおすすめできません。私がおすすめするのは、メタノールに代わるものを探すことです。

 

以前の記事で、メタノールの代替としてアセトニトリルを使用する ことについて述べました。 どちらも極性物質ですが、アセトニトリルは非プロトン性であるため、これを用いた TLC メソッドはメタノールよりもフラッシュへの移行が成功する確率が高くなります。

 

この点を強調するために、図1 は 3 つのサンプル成分(メチル+ブチルパラベンと 4-メチル-4(5)-ニトロイミダゾールの混合物)をシリカプレート上で 10% MeOH/DCMと20% ACN/DCM で分離した TLC 結果を示しています。どちらの TLC 溶媒系でも3つの化合物は分離されますが、フラッシュクロマトグラフィーでは、ACN/DCM 溶媒ブレンドのみが3つの成分すべてを分離します(図2)。

分離能力を比較するTLC

図 1. DCM-MeOH(左)とDCM-ACN(右)の分離能力を比較する TLC。各 TLC プレートでは、左側にメチルパラベンとブチルパラベンの混合物、右側に 4-メチル-4(5)-ニトロイミダゾールがスポットされています。どちらの溶出溶媒系でも、すべての化合物を分離しています。

DCM-MeOH分離,DCM-MeCN分離の比較

図 2. ブチルパラベン、メチルパラベン、4-メチル-4(5)-ニトロイミダゾールの3成分混合物の DCM-MeOH 分離(上)および DCM-MeCN 分離(下)の比較。このデータから、アセトニトリルを使用すると選択性と分離が向上するが、メタノールを使用すると共溶出することがわかります。

従って、上記の結果を踏まえて、フラッシュ精製でTLCメソッドが再現できない場合は、溶出溶媒を変更して溶出選択性を変更することを検討してください。

 

TLCメソッドが移行できない経験をされたことはありますか? その課題をどのように解決されたかをお聞かせください。

 

フラッシュメソッドの開発および最適化に関する詳細については、ホワイトペーパーをご覧ください。

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