メディシナルケミストリーにおいて、最も一般的なワークアップの1つが分液ロートを用いた液液抽出(LLE)です。このテクニックは、水性反応混合物中の水溶性不純物の除去、溶媒交換、水除去またはワークアップに利用されています。
【フロースルーカラムでの液液抽出(LLE) 】
ケイソウ土支持体を充填したISOLUTE HM-Nカラムは、LLE ワークアップへの簡単かつ迅速な代替技術を提供します。この親水性で不活性な支持体は、従来のLLEプロトコルの代わりに用いることができ、エマルジョンの形成を阻止し、生産性と再現性の向上に貢献します。この技術は保持液抽出(SLE)と呼ばれます。
【従来のLLE溶媒をそのまま利用】
LLEで使用される溶媒は、SLEでも同様に利用できます(DCM、クロロホルム、酢酸エチル、ヘキサン、酢酸ブチルおよびトルエン)。有機溶媒がイソプロピルアルコールまたはアセトンのような親水性極性溶媒を含んでいる場合は、極性濃度を10%未満(体積比)に薄めます。従来のLLE同様、イオン化する化合物を中和する為の酸や塩基の利用は手順の上で重要です。
【ワークフローを改善する重力滴下】
ISOLUTE HM-Nカラムは重力下で使用することから、手を離して放置しておくこともできます。従来のLLE 手順と比較すると、この フロースルー法はIST グラビティラックを利用することで、いつでも一度に20サンプルの同時処理を行うことができ、生産性の向上にも繋がります。また、使い捨てのフォーマットはガラス器具洗浄を不要とし、時間短縮と汚染リスクを軽減します。
【処理オプション】
ISOLUTE HM-Nカラムは、IST グラビティラックと併用出来ます。ハイスループットワークアップについては、ISOLUTE HM-Nタブレスの水容量 0.3 ml および 1 mlのカラムは、メトラー・トレド社の MiniBlock™ や、その他のタブレスSPEやワークアップカラムを処理するリキッドハンドラーと互換性があります。水容量 1 mlのタブレスカラムは、ISOLUTE Array-24システムにも対応します。詳細についてはBiotageにお問い合わせください。
【適切なカラムサイズの選択】
ISOLUTE HM-Nカラムは水の系に対しての容量が定義されています。たとえば、ISOLUTE HM-N 3 ml sample voleme カラムは、3 mlまで水性溶液を吸着します。
【反応混合物からの水溶性不純物除去】
反応後処理における水溶性不純物の除去は、しばしば「Salt Scrubbing」と呼ばれることがありますが、これは一般的に反応混合物から塩を取り除くために利用されるためです(図1)。最初に、水性バッファーをケイソウ土上に固定した後、反応混合物をカラムに注ぎ、水溶性成分を溶媒界面で水性相へ移動させます。
(操作手順)
1.重力下にて水性バッファーを注ぎ、カラムに吸収させます。完全に水溶液が吸収される
まで5~15分待機します。カラムに適用できる最大水溶液量は各カラムで説明がありま
す。例えば、ISOLUTE HM-Nの1mlカラムサイズではバッファー量は最大 1 mLです。
※塩基の洗浄には、5% v/v の 1M HCl あるいは同様の酸を添加します
※酸の洗浄には5% v/v の 1M NaOHまたは同様のアルカリを添加します
2.重力下で、水非混和性反応混合物を注ぎます。
3.濾液を回収します。回収した反応混合物を次のワークアップもしくは精製に進みます。
【水分除去】
水を極微量に含有している反応混合物については、ISOLUTE HM-Nを乾燥剤として用いることも出来ます。ISOLUTE HM-Nは、最大 750μL / g の水を吸収します。使用する溶媒によって、この容量は変化する可能性があります。
(操作手順)
1.水を含んだ反応混合物をカラムに注ぎます。残留水分が支持体に吸収されます。
2.水が抜けた濾液を回収します(ISOLUTE NaSO4ドライカートリッジも、水分除去に利用
できます。詳細についてはBiotageにお問い合わせください)。
【保持液抽出(SLE)】
水溶液サンプルについては、目的化合物を水非混和溶媒へ移動させる目的で ISOLUTE HM-N を使用できます。詳しくはケミカルデータシートTN118をご参照下さい。
(操作手順)
1.重力下において、水溶液の反応混合物を適切なサイズのカラムに注ぎます。(カラムに
注入できる最大の水溶液量はカラムの説明書に記載)。
2.完全に吸着されるまで5~15分待機します。
3.重力下で、適当な水非混和性有機溶媒を注ぎ、目標化合物を含む有機相を回収します。