本ケミカルデータシートは、フラッシュクロマトグラフィーにおいて反応混合物を担体に事前に吸着させてカラム乗せるという塗し技術を、ISOLUTE® HM-Nを用いて実施する場合について解説します。この方法は、極性溶媒にしか溶けない反応混合物を、SiまたはNHのシリカゲルカラムへチャージする際に利用可能です。
【一般的な課題】
反応混合物がイソプロピルアルコールまたはアセトンのような極性溶媒にしか溶けない。この様なケースに於いて、順相クロマトグラフィーでは、極性溶媒に溶かしたサンプルをシリカゲルカラムへチャージした場合、分離精製は溶媒の極性によって悪影響をぼされ、サンプルが完全に浸透する前に目的成分がカラムを抜けてしてしまいます。その結果、カラムのクロマトグラフは効率が低下もしくは完全に失われ、分離精製は失敗に終わります。
【従来の方法】
従来、サンプルを予めシリカゲルに吸着させ、それを本カラムへ乗せることででこの問題は克服されてきました。この前処理は、バルクのシリカゲルを反応混合物へ添加し、その後エバポレーションによって溶媒を留去することで準備できます。しかしながら、この方法に用いるシリカゲルが以下の場合、分離精製に悪影響を及ぼす可能性があります。
※ サンプル吸着に用いるシリカゲルが、フラッシュカラムに充填されているシリカゲルの性質と
異なる場合(異なる表面pH、表面積など)。
※ サンプル吸着に用いるシリカゲルとカラムに充填されているシリカゲルとの間に顕著な活性
差(含水量)がある。
※ 吸着用シリカゲルとチャージする化合物間の相互作用により、シリカ上に保持された化合物の
溶出に強い溶媒が必要とされる場合。
【解決方法-ISOLUTE HM-N 吸着剤として利用】
ISOLUTE HM-Nは、極度に高い表面積を持つ珪藻土を改良したものです。上述のシリカゲルと同様に、反応溶液中の化合物をISOLUTE HM-Nの表面に吸着して用いられます。化合物を水素結合で保持するシリカゲルとは異なり、よりスポンジのように働きかけ化合物を吸着します。すべての化合物が初期の移動相に可溶である場合、珪藻土からシリカゲルカラムに向けて化合物がリリースされ、それら成分は、その後フラッシュカラムの上部で予備的に濃縮されます。
【一般手順】(図1参照)
1.ISOLUTE HM-Nを反応溶液に添加します。サンプルとISOLUTE HM-Nとの比率は 2:3 が最適
となります。これは乾燥した試料の質量比率です。例えば、サンプル量が100mg以下の場合、
操作を容易にするためにISOLUTE HM-Nを少なくとも250 mg使用することを推奨します。
2.その後、放置して溶媒を揮発、またはエバポレーションによって留去します。サンプル溶解に用
いる溶媒は、揮発性の高いものが適しています。経験上、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン
およびメタノールなどが推奨されます。
3.溶媒留去して乾燥したISOLUTE HM-Nを取り出しフラッシュカラムの上部に乗せます。支持体を
均等に行き渡らせるためにカラムを軽く叩きます。
4.その後、フリットインサーターを利用しISOLUTE HM-Nにフリットを被せます。この時、珪藻土を
砕かないようにして軽くフリットを押しつけることが重要です。
5.その後、フラッシュクロマトグラフィーによる化合物精製を通常通り実行します。
※ SNAPカラムへのダイレクト充填についてはこちらをご参照ください。
※ セルフパックサンプレットご利用の場合はこちらをご参照下さい。