NL13_FLASH Optimization_2

 

 








 


テクニカルTips


FLASH精製の最適化 2/3


(溶媒の選択性と強度)


            


  













 


【溶媒選択性の最適化】


 FLASH精製を成功させる第一歩はΔCVの最大化です。そのため、目的化合物と他の不純物の間でΔCVが最大になる2成分混合液の検討をTLCを用いて行うことが重要です。


 全ての溶媒は、ある選択性のグループに分類されます。それぞれのグループは、あるサンプル成分に関し、他の化合物に対しての相対的な保持に及ぼす影響が異なります(選択性)。最もよく用いられるフラッシュ溶媒およびそれらの選択性グループを表1に示します。
 可能な場合は、選択性の最適化には酢酸エチル(VIa)、塩化メチレン(V)、トルエン(VII)、テトラヒドロフラン(III)、およびエーテル(I)とヘキサンを混合して使用します。極性化合物およびアミンが多い場合は、メタノール(II)またはアセトニトリル(VIb)と塩化メチレン(V)の混合溶媒で検討します。これらの溶媒の組み合わせは、広範囲な分離選択性を提供し、あるサンプルの精製に合った溶媒選定に役立ちます(図1)。目的化合物(B)は、ヘキサン/酢酸エチル条件下では主な不純物(AおよびC)から十分に離れません。ジクロロメタンにおいては、不純物AとCの保持は劇的に変化し、Bの精製度が向上しました。


 



 






【溶媒強度の最適化】
  適正な溶媒を決定した後は、Rf値の範囲が0.15 ~ 0.35 (6.7 ~ 2.8 CV)以内で目的化合物が溶出するように溶媒組成(溶媒強度)を調整します。この範囲内で溶出するように溶媒強度を調整することによって、最適な精製の可能性が大きく高まります。
  選択性と同様に、各溶媒にはそれぞれ独自の極性があります(表2)。したがって、各溶媒混合物(移動相)にはそれぞれ独自の溶媒強度があります。混合溶媒の強度計算は、他の混合溶媒と比較する際、例えば、強度が同じで選択性の異なる混合溶媒を用いた検討を行う場合に役立ちます。








 


 


混合溶媒の強度算式:


 (A溶媒の比率x強度)+(B溶媒の比率x強度)


 


 


例:


1.ヘキサン:酢酸エチル = 50:50
  溶媒強度 = (0.5 x 0.01) + (0.5 x 0.58) = 0.30  


 


2.ヘキサン:酢酸エチル = 60:40
  溶媒強度= (0.6 x 0.01) + (0.4 x 0.58) = 0.24


 


3.ヘキサン:ジクロロメタン = 30:70
  溶媒強度= (0.3 x 0.01) + (0.7 x 0.42) = 0.30


 


  目的化合物のRf値が0.35を超えるようであれば、移動相の極性を下げることで分離精製効率は向上します。図2に例を示します。溶媒選択性をテストした結果、移動相をヘキサン:酢酸エチル=50:50 (溶媒強度= 0.30)の移動相を用いた場合に、粗サンプルの選択性が適切になりました(図2、上)。この時、目的化合物(B)のRf値は0.4 (2.5 CV) で、不純物(A)のRf値は0.55(1.8 CV)であるので、ΔCVは0.7となります。このようにΔCVが低い場合、フラッシュクロマトグラフィーでの精製は、過負荷が起こらない程度の少量のサンプルであれば可能ですが、あまりお勧めしません。そこで、溶媒強度を弱めてヘキサン:酢酸エチル=60:40 (溶媒強度= 0.24)(図2、中央)にすると、化合物BのRf値は0.2(5 CV)まで低下し、不純物AのRf値は0.3(3.3 CV)まで低下します。その結果ΔCVは1.7となり、FLASHカートリッジへのサンプルロードを前者と比べ約5倍にすることが可能になります。
  特定の混合溶媒で成分保持が適切であることが確認できたら、強度が同程度で選択性の異なる別の混合溶媒を調製して比較することもできます(図2、下部)。ヘキサン:酢酸エチル = 60:40 と ヘキサン:ジクロロメタン = 30:70 はいずれも溶媒強度が 0.3 ですが、酢酸エチルとジクロロメタンの選択性の違いによりクロマトが異なります。


  



 





   

以上、次号では移動相のグラジエントについて取り上げる予定です。

   















 


 











 


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