固相抽出(SPE)による合成ワークアップ
固相抽出(SPE)は96ウェルプレートもしくはカラムを用いたフロースルー技術です。溶液中に含まれるターゲット化合物の選択的な回収(キャッチ&リリースSPE)や、不純物の除去(スカベンジングSPE)が可能です。図1に一般的なSPEカラムを示します。
化合物の保持メカニズム
化合物は、イオン性、または極性、非極性の結合力で充填剤に保持されます。レジン試薬と異なり、SPEと化合物の相互作用は比較的、非特異的で可逆的であり、充填剤と化合物の特異的な反応は起こりません。SPEカラムやSPE 96wellプレートはキャッチ&リリースSPEとスカベンジングSPEの両方に使用することが出来ます。
キャッチ&リリースSPE
キャッチ&リリースSPEでは、カラム充填剤は不純物の中に含まれる目的の化合物を捕らえます。カラムもしくはウェルを洗浄して不純物を取り除いた後、次の溶出操作で適切な溶媒を用い、目的の化合物を溶出させます。
スカベンジングSPE
スカベンジングSPEでは、カラム充填剤はサンプル溶液中の不純物を捕らえ、ターゲット化合物を素通りさせます。不純物は充填剤との相互作用によりカラムにとどまり、ターゲット化合物の単離が行われます。
カラムのサイズ
SPEのカラムには様々なサイズと形状があります。伝統的なシリンジタイプの形状のものは使いやすく、VacMaster-20を使用すれば一度に20サンプルまで同時に操作が可能です。多くのサンプルを処理するには、タブがないSPEカラム(タブレスカラム)をISOLUTE Array 24サンプル処理マニホールドを使用して処理すると便利です。さらに多くのサンプルを処理する場合には、ウェル固定プレート(96ウェル)やモジュール式のアレイウェルプレートもあります。
SPEカラムの能力
SPEによって単離される物質の量は充填剤の能力に依存します。一般的な例では、非極性SPEカラムは充填剤の重量に対して、およそ5%重量の物質を保持できます(たとえば、1gの充填剤は50mgの目的化合物/不純物を保持できます)。イオン交換SPEカラムの能力は、充填剤1gに対するmilliequivatens(meq)で測定することができます。0.6meq/gの能力を持つ500mgの強陽イオン交換充填剤(スルホン酸系)を詰めたSPEカラムの場合、250g/molの分子量を持つ最大70mgの陰イオン化合物を保持することができます。
SPEカラムの材質
バイオタージのISOLUTE SPEカラムと96ウェルプレートの材質はポリプロピレン、フリットはポリエチレンです。いずれも溶媒に対して強い耐性を持ち、かつ一般的な充填剤、酸や塩基にも対応します。
実験操作
SPEカラムとプレートはマニュアル処理によるバキュームや、自動化システムでの処理が可能です 。
ISOLUTE SPEカラム操作のガイドライン
正しくISOLUTE SPEカラムをお使い頂くためのガイドです。
カラム操作
- 特にイオン交換操作において、あまり速くSPEカラムに溶液を注入しないでください。極端に速い流速で溶媒を注入すると、目的化合物が充填剤から離れてしまいます。適切な流速で通液してください。
- ろ過などで、微粒子の除去を行い、カラムの詰まりを防いでください。処理の前に、ターゲット化合物が微粒子に吸着していないことを確認してください。
SPEカラムの選択ガイド
アプリケーション | 使用製品 |
---|---|
有機溶媒系システム | |
塩基性のターゲット化合物抽出 | シリカ担持スルホン酸 |
塩基性のターゲット化合物抽出 | 高ローディングポリマー担持p-トルエンスルホン酸 (tosic acid/トシル酸) –MP-TsOH |
酸性のターゲット化合物抽出 | シリカ担持第四級アミン |
塩基性の過剰試薬除去 | シリカ担持スルホン酸 |
塩基性の過剰試薬除去 | 高ローディングポリマー担持p-トルエンスルホン酸 (tosic acid/トシル酸) –MP-TsOH |
酸性の過剰試薬除去 | シリカ担持第四級アミン |
酸性および塩基性の不純物除去(中性のターゲット化合物) | シリカ担持スルホン酸とシリカ担持第四級アミン |
極性化合物の除去 | 極性充填剤
–ISOLUTE Si II(シリカ) |
水性溶媒系システムおよび有機/水性混合溶媒 | |
LCフラクション濃縮 | レジンベースの非極性充填剤 |