よくある質問<FAQ>

Q.マイクロウェーブはどのようにして加熱しているのですか?

マイクロウェーブは、 電磁放射線によって極性、イオン性物質を加熱します。
他の電磁放射線と同じように、マイクロウェーブ放射線は電場と磁界の2つに分けることができます。電場が加熱に関与し、双極子分極とイオン伝導の2つの主なメカニズムによって加熱されます。

双極子分子は電場に非常に影響を受け、フィールド内で回転し直列しようとし、回転によってエネルギーを生み出します。光線の『正しい周波数』では、双極子分子が交互の電場に反応し、回転します。

これにより、誘電加熱を引き起こし、分子摩擦とランダムな衝突で、双極子分子からのエネルギーが発生します。

イオン伝導では、熱伝導しやすく、サンプル中のイオンが電場の影響で溶質に溶け込み、エネルギーを発生し、衝突率を高め、運動エネルギーを熱に変換します。

詳しいマイクロウェーブの効果はこちらをご覧ください。

Q.なぜ従来の加熱方法よりもマイクロウェーブの方が早く加熱できるのですか?

Arrheniusの公式によると、k=A*exp(-Ea/R*T),10℃温度が上昇する毎に、反応レートは2倍になります。100℃より高い温度では、従来の1/10000の状態で反応を実行できます。

また、ガラス容器表面から反応化合物に熱が伝導する時間が省かれ、溶媒や試薬が直接加熱されるため、マイクロウェーブ加熱を使うと早く高温度に到達できます。

Q.反応実験はどれくらいの温度で行うべきでしょうか?

マイクロウェーブを利用した有機合成における反応温度は、従来の有機合成と同様の温度で行えます。

反応温度が10℃上昇する毎に反応レートが2倍になるので、70℃では5分で終わる作業が、室温(20℃)においては3時間(180分)かかります。
参照:『従来手法からマイクロウェーブ加熱への転換方法

可能な限り、基質の安定性を考慮する必要があります。
通常、限界圧力を越えていない限り、溶媒の沸点の倍の温度で反応を行うことは安全ですが、使用する試薬によっては注意が必要です。
限界圧力を超えないで得られる温度の限界は、反応化合物全体に依存します。

Q.過加熱を防ぐにはどうしたらよいでしょうか?

吸収レベルを”High”か”Very High”に設定し、必要ならば反応化合物を希釈する、もしくは、イオン濃度を下げます。

Q.どの溶媒が一番使用に適していますか?

マイクロウェーブのエネルギーを吸収するため、溶媒が極性であるか、または、反応化合物がイオンを含有する必要があります。
メタノール、エタノール、 NMP (N-メチルピロリドン) 、DMF (N, N-ジオチルホルムアミド)などの極性溶媒が適しています。

Q.非極性溶媒やマイクロウェーブ透過性の溶媒は使えませんか?

非極性溶媒はマイクロウェーブ透過性ですが、適切な溶媒や試薬(absorber:NMPやDMFなど)を添加することにより、マイクロウェーブによる加熱が可能になります。ただし、これらの反応はできるだけ慎重に進める必要があります。なお、溶媒や試薬を使用する際には、均等に混和できるものを選択してください。

Q.推奨される容器の大きさはどれくらいですか?

推奨される大きさは以下になります。

  • 0.2-0.5mL(extra small)
  • 0.5-2mL(small、円錐形)
  • 2-5mL(medium、丸底)
  • 8-20mL(large)

Q.マイクロウェーブを使ってどの様な反応が得られますか?

常温、常温以上における、ほとんどすべてのタイプの反応がマイクロウェーブ加熱によって可能です。従来の方法で0℃以下で行われていた反応でさえも、マイクロウェーブによる”flash”加熱で得ることができます。
唯一の例外は、爆発性または過剰に放熱する反応です。

Q.機器使用に適さない化学分野はありますか?

有機合成を行う上での一般的なルールはすべて、マイクロウェーブ合成にも適応されます。しかし、爆発の危険性や、過剰に発熱するリスクのあるものは機器で扱うことができません。例えば、過酸化水素水は爆発性があるため、特殊な方法以外では、高温加熱してはいけません。

また、大量のイオンを含む反応化合物、またはガスを発生させる(塩酸や脱カルボキシ基等)反応化合物を扱う際は、より注意が必要です。ガス反応では、加熱速度が速いため、低密度環境の密閉容器において早く高圧に達します。
金属のような高い熱伝導率をもつ物質は、正しく混合しないと、反応容器を損傷する可能性があります。

例えば、少しでも容器のガラス壁面に付着しているだけで、ホットスポットを生み出して、ガラスを溶かしてしまう危険があります。例えば、パラジウムを800℃で扱うとフラッシュオーバーを起こしてしまいます。IRセンサーでの温度が40、60℃を示している初期の段階で起こり得ます。この問題の解決策は、まず、パラジウム(他の固体も)を容器にいれ、続いて溶媒をいれて側面の付着物を洗い溶かすようにします。一般的に、金属や固体は溶媒の液面より下に保ちます。

Q.固体試薬は使えますか?

はい、ご利用いただけます。
多くのレジンは高温短時間で安定します。
多くのポリススチレルレジンは250℃まで加熱できます。

Q.金属は使えますか?

はい、使えます。
金属は、粉末または粒状で使用できます。
しかし、溶媒に含まれる金属には注意が必要です。決して、溶媒なしで加熱してはいけません。

Q.混合物はマイクロウェーブを使って加熱できますか?

はい、できます。
ただし、混合物に金属や吸収性の高い固体が含まれている場合、容器の壁面に付着しないように十分注意してください。

Q.マイクロウェーブを使ってニート反応はできますか?

はい、できます。
しかしながら、化合物に金属、強酸、基材または荷電分子が含まれている場合、ニート反応はお勧めできません。

Q.マイクロウェーブ放射を使って還元できますか?

はい、できます。
通常、水素移動を使って還元できます。
低濃度(<0.2 mmol)、低温(100~140℃)で3分ほど加熱します。
冷却した後、容器に圧力が掛かっている場合、蓋を開ける前に、蓋の曲部から針を刺して、圧力を逃がしましょう。

Q.反応化合物内のCOをマイクロウェーブ放射を使って扱ういい方法はありますか?

はい。
下記文献を参照してください。

Mo(CO)6 liberates CO at 150ºC (1). DMF will decompose in the presence of KOtBu to liberate CO and HN(CH3)2 at 180ºC or higher (2).
1) Kaiser, N-F. K.; Hallberg, A.; Larhed, M., J. Combi. Chem., 2002, 4 (2), 109-111
2) Wan, Y.; Alterman, M.; Larhed, M.; Hallberg, A., J. Org. Chem., 2002, 67, 6232-6235

Q.加熱と冷却を同時に行えますか?

反応中に冷却すると、容器内の温度が記録された温度よりも高くなることにご注意ください。
つまり、本来の温度はソフトウェアに示されている反応温度よりも高くなります。
この温度差は反応や溶媒の種類によって異なりますが、かなり高温になります。
参照:『“冷却しながら加熱” または “強化型マイクロ波反応”—本当は何が起きている?

Q.容器の通常の最大容量はどのくらいですか?

用途によりますが、通常の目安は 0.5 mmol中2.5 ml (0.2 M)です。

Q.不活性ガス環境の下でも反応は可能ですか?

必要ならば、容器内に不活性ガスがあっても反応は簡単に行えます。
しかし、反応時間が短く、反応精度も高く、密閉容器内で反応が行われるため、大部分の反応は不活性ガスを使う必要がありません。