SPEクイックスタートガイド
分析前のサンプル調製はサンプルの分析技術と同様、実験の成功にとって重要です。これは低濃度の検出が必要な場合や、ターゲット化合物が生物抽出溶液や組織、食料品、農産物、環境サンプルなどの複雑なマトリックスに含まれる場合に特に重要なことです。
固相抽出(SPE)は迅速で選択性の高いサンプル調製を行うに当たって効果的な方法です。万能性を持つSPEは以下のような様々な目的に使用されます。
- 精製
- サンプルの微量濃縮
- 溶媒交換(例えば水性溶媒から有機溶媒へのようにターゲット化合物が一つのマトリックスから別のマトリックスへ移されること)
- 脱塩
- 誘導体化(ターゲット化合物は吸着剤に保持され、誘導体となってから溶出されます)
- 分画(サンプルはそれぞれ同じ特性を持つ異なった化合物群として分離されます)
SPEは液相-液相抽出などの他のサンプル調製法と比べて多くの利点を持っています。
- 高いサンプル回収率と再現性
- 高いサンプル回収濃度
- 高いサンプル精製能力
- 自動化システムへの対応が容易
- 自動化システムへの高い互換性
- 生産性向上
- 有機溶媒使用量の低減
SPEは使用が簡単で、サンプル量や吸着剤の種類や実験の形式に合わせたディスポーザブルの抽出カラムやマイクロプレートを利用できます(図.1参照)。
図.1 SPEカラムもしくはウェル(マイクロプレート)の構成
基本的には、SPEは液相-液相抽出(LLE)と類似しています。SPEカラムをサンプル溶液が通過する際、化合物はサンプルから抽出され、カラム中の吸着剤や支持体に吸着されます。不純物は適切な洗浄および不純物除去用溶媒を用いることでカラムから選択的に除去されます。最終的に、溶出用溶媒によって目的のターゲット化合物はカラムから選択的に回収され、高純度抽出がなされます。この抽出法でのターゲット化合物の濃度は最初のサンプル溶液よりも高くなります。
あるいは、サンプル中に存在する干渉成分を保持するが、ターゲット化合物を保持しないで通過させる抽出カラムを選ぶことも可能です。これによりターゲット化合物の微量濃縮は得られませんが、クリーンアップは提供されます。
SPE充填剤は代表的には30~50μmの粒径です。有機溶媒の多くはSPEカラム/プレートを自然落下で通過できますが、水溶性サンプルや粘度のある溶媒についてはカラム出口からの吸引やカラム入り口からの加圧、遠心分離などによってカラムを通す必要があります(図.2参照)。
図.2 ISOLUTE SPEカラムの処理技術