テクニカルノート
Si-Trisamine

(金属触媒、酸クロリド、求電子剤などの除去)

Si-Trisamine

SOLUTE® Si-Trisamine はtris(2-aminoethyl)amine(図1).が結合した多孔質シリカゲルです。官能基はバイオアナリティカルグレードのシリカゲルに担持しており、エンドキャップが施されています。従って、シリカゲルから不純物が抽出されることもなく、反応系や生成物に悪影響を及ぼすことは一切ありません。

Si-Trisamineは、水溶液や有機溶液中からの遷移金属(二価の酸化状態)を取り除くばかりでなく、求電子剤(酸クロリド、塩化スルフォニルまたは無水物)の除去に非常に効果的です。従来の還流実験またはマイクロウェーブ合成反応後のワークアップツールとして、バッチ型やフロー型(カートリッジタイプ)のどちらの形式でも使用できます。

【ケミカルデータ】

化学名 Propyl tris-(2-aminoethyl)amine silica
用途 金属スカベンジ、酸クロリド、スルホニルクロリド、イソシアネート等の除去
タイプ シリカゲル(アナリティカルグレード)
容量 1.2 – 2.1 mmol/g
粒経 65 microns
外観 易流動性の灰白色の粉末
使用溶媒 水、アセトニトリル、メタノール、DMSO、DCM, THF、DMF、Dioxane
保存 低温(4℃)の乾燥した場所

【メディシナルケミストリー】

スルホンアミドとアミドは重要な医薬中間体であり、一般的に、対応する酸の活性化を経由し引き続きアミン基質と反応して合成されます。Si-Trisamineは過剰に存在する活性状態の求電子剤の除去に使用され、カラムクロマトグラフィーの操作を省くことが出来ます。Si-Trisamineは、過剰な2,3,4,5,6-ペンタフロロベンゾイルクロリド、ベンゾイルクロリドもしくはp-トルエンスルホニルクロリドの除去として、様々なアルキル転化物の効果的な単離に活用できます。(図.1

Si-Trisamineを用いた酸塩化物の典型的な反応式

図.1
Si-Trisamineを用いた酸塩化物の典型的な反応式。基質が電子吸引性のペンタフロロベンゾイルクロリドであってもカートリッジモードで完了しています。また、バッチモードに換算した場合、Si-Trisamine過剰量はわずか5当量であっても、除去は60秒の1回の通液で完結しています。

Si-Trisamineは溶液からの酸誘導体の除去に効果的です。酸塩基のキネティクスは非常に早く、それ故、酸誘導体をSi-Trisamineカートリッジ(5当量)へ1分に満たない保持時間での1回の通液でも、酸成分の除去を効果的に完遂するのに十分です。酸性染料を用いて目視的にデモンストレーションされました。(図.2

図.2 エンドキャップされた Si-Trisamineカートリッジ(500mg/3mL)に、酸水溶液に溶解した染料を1回通液した様子。

図.2 エンドキャップされた Si-Trisamineカートリッジ(500mg/3mL)に、酸水溶液に溶解した染料を1回通液した様子。通液に要した時間は約30秒。左の写真は、比較参照としてエンドキャップされたC18カートリッジを(500mg/3mL)を使用。Si-Trisamineの効果は明らかであり、溶出液には赤い染料は全く含まれません。

【金属除去】

パラジウム、銅またはスズの様な重金属は、多様な化合物転換に利用されますが、API スケールアップにおいて次の合成段階のための金属除去は不可欠な工程となってきています。Si-Trisamine を用いることで、水溶液または有機溶媒から、酢酸パラジウム、酢酸ニッケル、硫酸銅を取り除くことが出来ます。

図.3

50mg の Pd(OAc)2 を溶解したTHF/DMA の混合溶媒 50ml を 500mg/3mL の Si-Trisamineカートリッジに通液した様子。

50mg の Pd(OAc)2 を溶解したTHF/DMA の混合溶媒 50ml を 500mg/3mL の Si-Trisamineカートリッジに通液した様子。通液に要した時間は重力滴下で30秒。

250mg /5mL の Ni(OAc)2 水溶液のスカベンジの様子。

250mg /5mL の Ni(OAc)2 水溶液のスカベンジの様子。

CuSO4 を500mg 含む水溶液のスカベンジの様子。

CuSO4 を500mg 含む水溶液のスカベンジの様子。全ての場合において、エンドキャップされた当量のC18シリカゲルで比較参照。

【典型的な実験手順】

(A)
2, 3, 4, 5, 6 – ペンタプルオロベンジルクロリド(70mg、0.3 mmol)の2mL THF 溶液を 2 – メチルシクロヘキシルアミン(17mg、0.15 mmol)の 2mL THF 溶液に加え、2時間攪拌した。その後、混合溶液を 重力下で500mg/3mL の Si-Trisamine カートリッジ(容量 0.75 mmol)へ通液し 4mL の THF で洗浄した。濾液を濃縮して純度100%、収率95%にて精製されたアミド化合物を得た。

(B)
P – トルエンスルホニルクロリド(762 mg、4mmol)の5mL THF 溶液をベンジルアミン(214 mg、2mmol)へ加え、50 ℃にて1時間攪拌した。混合溶液を 重力下で 2g/15mL の Si-Trisamine カートリッジ(容量 3 mmol)へ通液し 4mL の THF で3回洗浄後、濾液を濃縮してp-TsCl を含まない N-ベンジル-p-トルエンスルホニルアミドを87%の収率で得た。