分取HPLCフラクションを自動濃縮!
V-10 Touchで創薬ワークフローを効率化
第一三共株式会社
第一三共株式会社 研究開発本部 研究統括部 モダリティ第三研究所では、低分子・中分子創薬における合成後や精製後の濃縮の過程で、高速エバポレーション装置V-10 Touchを活用しておられます。直近では、逆相分取HPLCの精製フラクション濃縮を目的として、Gilsonリキッドハンドラーオプション付きのV-10 Touch(以下、V-10 Touch + Gilson LH)を導入いただきました。今回は、装置の導入・管理をされている同研究所第一グループの小倉義浩さんと、実際に装置を操作する機会の多い同グループの金田龍太郎さんにお話をうかがいました。
― まず、研究内容と装置の利用状況についてお聞かせください。
小倉さん:現在弊社では様々な疾患領域の新薬の創出に取り組んでいます。今回導入した濃縮装置については低・中分子創薬に利用しており、具体的には、高極性溶媒(DMSO, DMFなど)で反応を実施した後に、精製前のCrudeサンプルの濃縮に、あるいは、逆相HPLCでの精製から得られる水系溶媒のフラクションの濃縮に利用しています。
◆逆相分取HPLCのフラクションをラックの移動だけで濃縮できるのが決め手
― V-10 Touch + Gilson LHを導入された経緯について教えていただけますか?
小倉さん:導入前は、合成反応後の溶液や順相精製のフラクションをロータリーエバポレーターや凍結乾燥機で濃縮していました。以前はほとんど順相精製でしたが、モダリティの多様化により化合物の合成・精製難易度が上昇しており、逆相分取HPLCによる精製が多用されるようになりました。また、多検体合成を実施することが増えてきていたこともあり、精製後のロータリーエバポレーターや凍結乾燥機によるフラクションの濃縮はどうしても時間がかかるため、効率化できる装置を探していました。
V-10 Touch自体は既に複数台導入していたため、これまでどおりのV-10 Touchの使い勝手と、逆相分取HPLCのフラクションを直接セットして濃縮することで精製後のワークフロー全体を効率化できる利点を踏まえ、V-10 Touch + Gilson LHを選定しました。最終的に、Gilsonリキッドハンドラー、大容量対応のソルベントマネージャー、カローセルのオプションをすべて搭載したV-10 Touchを導入することにしました。
金田さん:これまで逆相分取精製のフラクションは、一つのフラスコに集約してロータリーエバポレーターや凍結乾燥機で濃縮していました。Gilsonリキッドハンドラーは、同じ実験室に既設の逆相分取HPLCで使っている試験管ラックをそのままセットして使うことが可能で、サンプルを集約する手間が省けるため、ユーザーとしてもリキッドハンドラーとV-10 Touchがセットで導入されればかなり効率化が進むと思っていました。
金田さん
◆濃縮の効率化と自動化で研究がスピードアップ!
― V-10 Touch + Gilson LHを導入後、どのようなメリットがありましたか?
金田さん:ロータリーエバポレーターで水系溶液200 mLを濃縮するとなった場合は1時間以上かかります。突沸しないように注意が必要なので、エバポレーターの側から離れることができません。V-10 Touchは濃縮の早さというメリットがありますし、リキッドハンドラーを付けることで、溶液の移し替え作業も含めて濃縮の工程を自動で行ってくれます。限られた時間を有効に使えるようになったことが一番のメリットと感じています。導入して最初の頃はユーザーが私一人だけでした。日によってばらつきはありますが、今では1日に数人程度まで使う人が増えたように感じます。
小倉さん:ユーザーとしては、濃縮後のサンプルの取り回しといったワークフロー全体が自動化・簡便化され、研究のスピードアップにつながりました。凍結乾燥機よりも準備が簡単で濃縮も早いので、水系溶液のサンプルが十数個であっても手軽に濃縮できるところが良いと感じています。他方で、管理担当者としては、簡便かつ直感的な操作で利用できる点がユーザーフレンドリーでとても良いと感じており、初心者への操作方法のレクチャーが簡単でとても助かっています。導入してまだ半年程度ですが、利用するユーザー数・頻度も増えて来ています。特に、課題であった多検体合成後の逆相精製からの濃縮工程においてV-10 Touch+ Gilson LHを試す研究員が増えたように感じています。研究者は使い勝手の悪い装置を嫌う傾向にあるのですが、この装置の使い勝手の良さや、高速濃縮によるスピード感が研究者に十分に受け入れられており、全体の生産性向上に繋がっていると感じています。また、メンテナンスが容易で、ランニングコストの観点からも優れた装置であると感じています。
小倉さん
◆V-10 Touchの運用効率を高めるための活用法
― V-10 Touchの利便性が広まり、使用される方が増えたとのことですね。効果を最大限に引き出すために、工夫して運用されていると伺っています。詳しく教えていただけますか?
小倉さん:マニュアルの整備と、装置そのものへの工夫を行いました。特に、マニュアルにはこだわっており、初心者であっても理解しやすく、見れば簡単に操作できるように工夫しています。装置の方では、モニタリング用カメラの設置と切り替えバルブの導入を行いました。カメラは2ヵ所に設置しており、一つは装置本体側に、カローセルやモニターの様子が映るように、もう一つはリキッドハンドラー全体の様子が映るようにしています。使用者は、各自のデスクからでも自身のPCにて遠隔で装置制御用PCにアクセスし、カメラの映像で装置の動作を確認することができます。また、同様に制御ソフトウェアの操作も遠隔にて実施することができます。切り替えバルブについては、据付時はソルベントマネージャーとリキッドハンドラーの流路を手動で接続する必要がありましたが、切り替えバルブを導入したことで、流路の切り替えを簡単に行えるように工夫しました。いずれも、ユーザーの使いやすさにこだわった工夫です。
― それでは、改善してほしい点やご要望がありましたらお聞かせください。
金田さん:ソルベントマネージャーの濃縮液量設定が200mLで制限されているので、500mLや1Lなどさらに多い量を設定できるようになるといいですね。キラルカラムを行った後など濃度がとても薄いフラクションを集めると液量が200mLを超えることがあるので、対応いただけると助かります。
小倉さん:管理者としては、新規ユーザーの参入障壁を下げるために貴社マニュアルの日本語対応は是非ともお願いしたい点です。
― 貴重なご意見ありがとうございます。本社の方にお伝えしておきます。最後に、今後の予定についてお聞かせください。
小倉さん:V-10 Touchで試していない事としては、いわゆる”まぶしカラム”サンプルの調製があるかなと思っています。シリカゲルが舞わないようになどV-10 Touchで実施する際の工夫は必要ですが、実験上どうしても”まぶしカラム”サンプルの調製が必要な場面もあるため試してみたい検討です。また、弊社ではSmart LabやLab Automationの取り組みも実施していますので、現状は人が装置にセットしているフラクションラックなどのサンプルを、将来的にはロボットが搬送して持ってくるなど、他の機器との連携が出来ると良いなと考えています。そういった意味では、貴社装置のOPC UA等といったソフトウェア的な統合規格への対応なども期待しています。
― 自動化・スマート化の取り組みに期待しています。今後もバイオタージをよろしくお願いいたします。本日はお忙しい中ありがとうございました。
インタビュー実施:2024年8月7日
PDFファイルダウンロード(1.3MB)
導入製品
高速エバポレーションシステム
Biotage® V-10 Touch
URL: https://www.biotage.co.jp/products_top
/evaporation/v10_top/
導入機関
第一三共株式会社
「サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバルヘルスケアカンパニー」をあるべき姿として定め変革を進めている。がん領域に強みを持ち、「世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する」をパーパス (存在意義)として掲げ、その実現を目指している。