岐阜薬科大学合成薬品製造学研究室 伊藤先生

V-10 Touchの導入で連続した
合成ワークフローの自動化を実現

岐阜薬科大学 合成薬品製造学研究室 伊藤先生
岐阜薬科大学 合成薬品製造学研究室 伊藤先生

岐阜薬科大学合成薬品製造学研究室では、反応デバイスの開発やロボットを利用したヒトと環境にやさしいものづくりに取り組まれています。今回は、高速エバポレーション装置V-10 Touchを導入して協働ロボットと連携して合成ワークフローの自動化を実現されたということで、伊藤先生にお話を伺いました。

― このような合成ワークフローの自動化を実現した背景について教えてください。

伊藤先生:光反応の研究をずっと行っていて、その関係でフロー反応にも携わっています。通常、光反応をフラスコで行うと反応容器中を光が透過する間にエネルギーが減衰してしまうという課題があります。そのため光エネルギーが減衰しないような合成装置が必要ですが、これにはガラス製の薄い板やチューブを利用したフローリアクターが適切であることは誰もが認めるところです。問題は、それら反応後のクエンチや抽出、溶媒留去などの後処理をどうするかです。これまでは、反応そのものをフローで行っても、後処理はバッチ方式というのが普通でした。これを、最初の合成から後処理までフローで連続生産できないかと考えておりました。

そのような中で、AMEDのプロジェクトに採択されたこともあり、兼ねてから実現したいと考えていた連続生産システムの開発が大きく前進しました。大学のラボで運用できる予算やスペースは企業よりも制約が多いため、できることは限られますが、合成装置開発の知見を活かし、実現できる方法を模索しました。

色々検討した結果、高速エバポレーション装置V-10 Touchを溶媒置換装置として次の工程への橋渡しとして活用することで、2段階の合成ワークフローの自動化を実現することができました。その成果として、下記論文を発表しました。

発表論文
Development of a fully automated continuous, integrated production system for all reaction processes of ibuprofen
https://pubs.rsc.org/en/Content/ArticleLanding/2023/RE/D3RE00045A

◆V-10 Touchはカメラやセンサーなしでロボットと連携可能

― ロボットはV-10 Touchとどのように連携しているのでしょうか?

伊藤先生:協働ロボットはFranka Emika社製で、日本代理店の株式会社リョーサン (https://www.ryosan.co.jp/) を経て購入しました。この協働ロボットは、カメラやセンサーを使って連動しているわけではありません。座標軸と時間をプログラミングして動かしています。

V-10 Touchはタッチパネル上の簡単なボタン操作で運転可能なのと、運転が完了したらターゲットが所定の位置に必ず戻るので、協働ロボットとの相性が良いです。合成が終わり液液抽出等で回収された液がバイアル(リザーバー)に溜まったら、ロボットがそのバイアルをV-10のバイアルステージまで搬送します。その後タッチパネルを操作し、濃縮や溶媒交換を行います。プログラミングされた時間が経過すると、ステージからバイアルをロボットが取り出し、次の指定の場所にバイアルを搬送します(下記動画参照)。

◆溶媒交換機能が自動化システムで大活躍

― 遠心濃縮も濃縮方法としてありますが、この自動化システムを考えるときに検討しなかったのでしょうか?

岐阜薬科大学伊藤先生ユーザーインタビュー取材中

伊藤先生:3つの問題から遠心タイプは検討しませんでした。まず一つは、場所の問題です。遠心濃縮装置は大きなスペースを要します。現状、これを置くスペースはありません。二つ目は、高沸点溶媒を含め、あらゆる溶媒を速く濃縮できるという点です。三つ目は、溶媒交換機能です。この機能は、複数の反応による連続生産システムを構築する上で欠かせないものです。これらの理由から、V-10 Touchには大変満足しており、不満はないです。強いて言うなら、価格が大学個人の研究室で購入するには高くて大変というぐらいでしょうか(笑)。

― 自動化との相性の良さを解説いただきありがとうございます。バイオタージへのコメントがありましたらお願いします。

伊藤先生:担当の営業の方によくしていただいています。別件で大学に来られた際にも必ず声をかけていただいており、本当にありがたいです。先日もちょうど困っていた時に、「何かお困りごとないですか」と声をかけていただき、助けていただきました。今後とも宜しくお願い致します。

― 今後もバイオタージをよろしくお願いいたします。本日はお忙しい中ありがとうございました。

インタビュー実施:2023年8月29日
PDFファイルダウンロード(1.1MB)

導入製品

高速エバポレーションシステム
Biotage® V-10 Touch

URL: https://www.biotage.co.jp/products_top
/evaporation/v10_top/

UBE株式会社(旧:宇部興産株式会社)医薬事業部

利用機関

岐阜薬科大学

http://www.gifu-pu.ac.jp/